理事長挨拶 Message from the Chairperson, Board of Trustees

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ご挨拶

こんにちは、理事長の吉村和真と申します。早速ですが、本法人を代表する立場として、私の目標を述べます。

それは、建学の理念である「自由自治」「人間尊重」に基づき、国内外の学生たちにとっての「自由の学び舎」として、この京都精華大学を持続・発展させることです。

初代学長・岡本清一は、その著書『自由の問題』(岩波新書、1959年)において、「自由はある、しかし完全な自由はない」という考え方では、何か解決したかのような気になっているだけで、実は思考が前に進まないと記しています。また、「自由と放縦とを履きちがえてはならない」といった学校での訓示の類には、小学生でも反発を覚えてしまうとも。そのうえで、過去の言説や当時の世界情勢をふまえ、「人間はどうすればより自由でありうるか」を問い続けるための視点や方法を提示しています。65年以上前の論考ですが、今でも古びないどころか、むしろ今こそ必要な知見が詰まっていると私は思います。

私はマンガ研究を専門とする教員でもありますので、マンガの話題に絡めてみましょう。

本学のマンガ学部には、政治や宗教上の理由によって自国では制限されている、同性愛やアイドルを描いたり研究したりするために来日した留学生もいます。一方、近年ではアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)やルッキズム(外見至上主義)が批判の的となっていますが、主役と脇役、善玉と悪玉など、一目でその役割や性格を伝えるうえで、マンガの登場人物の読み描きにはステレオタイプや偏見がついてまわります。もちろん、だからダメだと言いたいわけではありません。「信教の自由」や「表現の自由」など、マンガにも自由の問題が存在していることを指摘したいのです。

とはいえ、実際に学生たちと自由について話し合い、追求していくには、教職員が日々、協働して知恵を絞り、汗をかく必要があります。その営みは、表現で世界を変えようとする学生たちのためであると同時に、身近な地域から国際的に広がる社会のためであり、大学自体の成長のためでもあります。本学が掲げる「表現の大学」「リベラルアーツの大学」「京都と世界をつなぐ大学」というビジョンには、そんな思いも込められています。

「自由の学び舎」とは、どこかの理想郷のことではありません。学生と教職員をはじめ、すべての構成員が人間として尊重され、一個の有機的社会を形成し、自由と自治の精神が波打つ教育現場のことです。

私たち京都精華大学は、それをめざし続けます。
 

在学生のみなさんへ

数ある大学の中から、この京都精華大学を見つけ、選んでくれてありがとうございます。

突然質問ですが、入学前よりも自由とは何かが見えてきたでしょうか。あるいは、普段の大学生活で自由を感じる時間や場所はありますか。少しでも思い当たることがあれば、大変うれしく思います。
 
でもきっと、今後の人生において、あなたや周囲の自由が制限されたり脅かされたりする場面も出てくるでしょう。そんな時には、大学で学んだ「頭」と動かした「手」が役に立つはずです。 ですので、所属学部や専門分野の別を問わず、在学中はもちろん卒業してからも、どうか思いきり学んで、表現してください。

みなさんが自由を追い求め、表現で世界を変えようとする姿を、私たち教職員はいつでも応援しています。なぜなら「学問・芸術によって、人類社会に尽くそうとする自立した人間の形成」こそが、京都精華大学の使命だからです。

京都精華大学に関心をお持ちのあなたへ

このページにたどり着いてくれて、ありがとうございます。

「表現で世界を変える」をモットーとするこの大学に入るには、芸術やデザイン、マンガなど、突出した才能や特殊な技術が必要だと思われているかもしれません。でも、ことばを大切にする人文学部や情報をあつかうメディア表現学部のように、普段の生活で用いる身近な表現への探求心や向上心を持っていれば、扉は開かれます。
 
本学では「表現」を「自分の思想や考えをかたちにして他者に投げかけることによって、自己と他者に変革をもたらし未来を創造する行為」と定義しています。手前味噌ですが、一見すると難しいようでなかなか奥深い一文だと思いませんか。

もどかしさや息苦しさを感じ、今の日常生活や世界情勢に一石を投じたいと思っているようでしたら、この京都精華大学で一緒に「表現」してみませんか。私たちはそんなあなたを待っています。

吉村 和真 YOSHIMURA Kazuma

所属
・マンガ学部 共通教員
・国際マンガ研究センター
理事長任期 2024年12⽉25⽇から2027年度定時評議委員会終結時まで

1971年生、福岡県出身。熊本大学文学部史学科文化史コースを卒業、熊本大学大学院文学研究科史学専攻修了、立命館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。
2006年マンガ学部専任教員に採用、マンガ学部教務主任、京都精華大学国際マンガ研究センター長、マンガ学部長を歴任。
2014年12月から常務理事、評議員。2020年12月から専務理事をつとめ、2024年12月25日に理事長に就任。