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「2023年度 京都精華大学・大学院 入学式」を挙行しました。

2023年4月1日(土)、「2023年度 京都精華大学・大学院入学式」を挙行しました。

今回は、新型コロナウィルス感染症拡大防止として、午前と午後の二部制で実施。
第一部は国際文化学部、芸術学部、デザイン学部、人間環境デザインプログラム、芸術研究科、デザイン研究科、人文学研究科の新入生、第二部は、メディア表現学部、マンガ学部、マンガ研究科の新入生を対象に執り行いました。
 
今年度は、学部 959名、大学院 63名、編入学 9名の計1,031名が入学。
澤田昌人学長は「教職員一同、皆さんを迎えることができて、大変嬉しく思っています。大学は教育の場であることはもちろんですが、損得や利害を超えた友情を育む場所です。学生時代は同じ学生同士で意見を交わしたり、それをきっかけにものを考えたりする機会が多いと思います。その際には、この日本で、あるいは世界のあちこちで起きている事柄について調べて、考えることにも取り組んで欲しいと願っています」と新入生に歓迎と激励の言葉を述べました。
その後は各学部長が挨拶を行いました。各学部の学びの意義や、卒業までに取り組んでほしいことを語り、ともに学ぶことを楽しみにしていると温かなメッセージを送りました。
  • 国際文化学部長 山田創平
  • メディア表現学部長 吉川昌孝
  • 芸術学部学部長 北野裕之
  • デザイン学部長 森原規行
  • マンガ学部学部長 姜 竣
  • 人間環境デザインプログラム教務主任 河井敏明
  • 芸術研究科長 小松敏宏
  • デザイン研究科長 谷本尚子
  • マンガ研究科長 小田隆
  • 人文学研究科長 髙橋伸一
新入生代表挨拶は、午前の部を芸術学部造形学科の清水野原さん、午後の部をマンガ学部ストーリーマンガコースの東海林舞さんが務めました。
  • 午前の部・新入生代表 芸術学部造形学科 清水野原さん
  • 午後の部・新入生代表 マンガ学部ストーリーマンガコース 東海林舞さん
芸術学部に入学した、清水野原さんは、「オープンキャンパスで出会った学生や教員、学生たちの作品に触れて、大学生活が具体的にイメージできました。京都精華大学の理念にのっとり、自らの意思で自律的に生きることだけでなく、他者を尊重する大切さを4年間で学びたいと思います」と、本学を進学先として選んだときの思い出と、今後の抱負をお話しされました。
また、マンガ学部に入学した東海林舞さんは、「時代の変化により、日本のマンガの需要がますます高まっていると知りました。アメリカのNPDブックスキャンの調査では成長率トップのカテゴリに選択されています。マンガは日本が世界に誇れる文化であり、それを学べることを楽しみに思います。世界の様々な人を楽しませることができるような表現力を身につけたいです」と、学問に向けた期待と熱意を語ってくれました。
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。これから京都精華大学で出会う友人や教職員と、ともに学びあい、有意義で楽しい学生生活を過ごしてください。

「2023年度 京都精華大学・大学院 入学式」学長挨拶

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。そしてご家族、関係者の皆様、お子様たちのご入学を心よりお喜び申し上げます。京都精華大学学長の澤田と申します。本学の教職員一同、新入生の皆さんを迎えることができて大変嬉しく思っております。今日から皆さんの新しい生活が始まります。
 
大学生活については、これからガイダンスや1年生の授業などで徐々に理解が進み、わかっていくことが増えていくと思います。そこで、ここではガイダンスでは触れることがないであろうことを紹介したいと思います。世界と地元、あるいはグローバルとローカル、世界的な動きと身の回りの出来事、という二つの視点から、お話ししたいと思います。
 
最初に、この大学と世界との関わりについてです。
この大学は、1968年に短期大学として発足しました。それ以来「人間尊重」「自由自治」という理念を掲げて大学を作ってきました。しかし、最近の社会や世界の状況は、この二つの理念とは反対の方向へ向かっているような印象を与えます。
1年ほど前にウクライナへロシアが侵攻して大規模な戦争が再び始まりました。大きな町の建物が見渡す限り破壊された光景を信じられない思いでご覧になった人も多いでしょう。この殺戮と破壊を始めた指導者は、必ずやその責任を問われなければならないと、私は考えております。しかしながら、これほど大規模なものでなくとも、多くの人々が殺され、家を追われ避難民となる紛争は現在においても少なくありません。私もアフリカ大陸のほんの一部を時々訪れたことがありますが、学生時代に内戦前夜の首都で夜な夜な銃声を聞いたことは一生忘れないでしょう。その後家族を持ったのち、訪れた国で運悪く内戦が始まって、妻子を抱えて逃げ回った経験もトラウマになっています。シリア内戦、イエメン内戦、ダルフール紛争と、皆さんのほとんどが知らないところでも、大規模な人間の不幸が起こっているのが現代です。このような事態を前にした時、皆さんは絶望的な気持ちになるかもしれません。しかし、「人間尊重」「自由自治」という思想は、何百年、何千年におよぶ戦乱と混乱の人類史を通して生み出された思想です。「人間尊重」「自由自治」という思想は平和が当たり前の時代に生み出されたのではなく、むしろ不安な時代、人間の尊厳が危うい時代に生み出されたのです。これらの思想は、この現代でこそ、その真の価値が追求され再評価されるべきであろうと思います。
 
学生時代は、同じ学生同士で意見を交わしたり、それをきっかけにものを考えたりする機会が多いと思います。その際に、この日本で、あるいは世界のあちこちで起きている事柄について調べて、考えることにも取り組んで欲しいと思います。動画のなかの人間に対しても、皆さんの感受性を最大限に活かして、2次元の動画のなかの人々の恐怖、悲嘆、絶望、怒りを感じ取り、人間や人間社会のあるべき姿について考えを深めていってほしいと思います。

地元、足元の大切さについていくつかお話ししましょう。皆さんの中には入学前にSNSで友達を募集したり、自己紹介をしたりしておられる方がおられますね。世界の動きも大切ですが、皆さんにとっては大学でどのような仲間と知り合うのか、ということがとても重要な関心ごとになっていることがよくわかります。大学は教育の場であることはもちろんですが、損得や利害を超えた友情を育む場所でもあります。近々大学における課外活動、つまりサークル活動が、コロナ以前の状態に戻り始めると思います。興味のある活動があれば、それらにも積極的に参加されることをお勧めします。趣味を追求することができるのはもちろん、学部、学年を超えた交流をすることができます。大学時代に一生続く友人を得ることも少なくありません。
 
この大学の自然環境の魅力を最後に紹介しておきます。この大学のキャンパスでは様々な花が咲きます。もう散ってしまいましたが桜はもちろんのこと、コブシ、あせび、サルスベリ、ヤマツツジ、キンモクセイなど、また秋には様々な紅葉が楽しめます。名前がわからない花があっても、今ではスマートフォンのカメラで撮影すると教えてくれるアプリもありますね。冬には少し雪が積もり水墨画のような美しい景色が広がります。周囲の山というか丘には細い道が走っていて、散策できる場所もあります。まず写生の対象として、ツルやニワトリのいるケージの前を登っていくとシカが飼われている広い囲いがあります。道の左右の地面に、いろいろなケモノの足跡を見つけることもあるでしょう。私たちの大学生活が自然のなかのちっぽけな土地で営まれていて、その周囲に広大な森が広がっていて、その中では様々な生き物がいて生命の始まりとその終わりが繰り返されていることを実感されると思います。植物や動物、あるいは森と精神が通い合うような感覚を持つ人もいるかもしれません。身の回りの環境、植物や動物を知ること、愛着を持つことは、皆さんが地球の環境を愛することの第一歩です。地球環境問題は温暖化による異常気象の問題だけではありません。それは世界各地の人びとにとって愛着のある動植物が損なわれる、ということだと実感としてわかるようになると思います。
 
皆さんには、学生、教職員、そして自然環境を含め、このキャンパスをフルに活用し、皆さんにしかできない探究を進めていかれることを期待して、私の挨拶を終えたいと思います。
ご清聴ありがとうございました。
京都精華大学学長
澤田 昌人

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