自然を見つめ、心の目を育て 伝統の技法で本質を描き出す

日本画を描くということは、目の前に広がる風景や動植物の本質を観察してとらえ、その姿を伝統的な日本画の技法で表現するということです。緑にあふれ、動物が暮らし、四季の移ろいを感じることができる本学のキャンパスは、日本画を学ぶのにぴったりの環境だといえるでしょう。日本画専攻では、植物の栽培や動物の飼育を体験する機会も設け、日本画を描くために欠かせない感性や、生命の尊さを感じる力を養います。また、対象と向き合い、その内側にあるものを感じ取って描く練習を繰り返すことで、本質をとらえる力も鍛えます。教員のきめ細かい指導のもと、必要な技術・理論を習得し、最終的には各々が独自の作家性を獲得することをめざします。

科目PICK UP

  • 動植物を育てながら、自然の中に美しさを見出す感性を磨く。

    [造形基礎/2年]
    生命を敬い、自然から学ぶ姿勢をもつことが日本画制作の基本です。その感性を磨くため、草花を種から栽培し、うずらを卵から育てる機会などを設けています。また、絵の具を定着させる膠液や、貝殻からつくる胡粉など、日本画材についても学びます。

  • 理論的・実践的に、日本画の描写力や構成力を身につける。

    [造形実習/3年]
    陰影法や遠近法などの手法を学び、実際に風景画を描きながら、日本画の技術を習得します。同時に、「何のために描くのか」を思案する作業を重ね、自分だけの作品をつくる力を培います。このほか、コラージュで構成力を鍛える機会なども設けています。

4年間の学び

  1. 1年次

    FIRST

    表現者の「幹」をつくる

    芸術学部の共通科目を受講して、観察力や思考力、想像力など表現者としての「幹」を育みます。また、7専攻の基礎を広く学び、これから追求する分野を検討していきます。

  2. 2年次

    SECOND

    基礎描写力を身につける

    植物の写生をしながら、画材の使い方をマスターし、スケッチ、下図、草稿、本紙という日本画の制作工程を習得。また、動物のクロッキーや日本画の模写も行います。

  3. 3年次

    THIRD

    観察力と造形描写力を養う

    動植物と向き合い、繰り返し描くことで、観察力と描写力をみがきます。動きのある線で動物や人物を描くほか、作品の制作意図を考察・整理し、自分のテーマを固めていきます。

  4. 4年次

    FOURTH

    自分の表現を追求する

    4年間で培った技術や表現力を駆使して、卒業制作に取り組みます。自分自身の表現やオリジナリティを追求しながら、学生生活最後の作品を完成させます。

4年間で身につく能力

  • 自然豊かな制作環境で育む発想力
  • 日本画特有の素材を扱う力
  • 対象物のなかに潜む本質を表現する力

作品

施設

映画の撮影にも使用されたことがある趣ある校舎

PICK UP!

  • 大きな下絵と本紙を置くにも困らない広さが用意された実習室。

  • 写生のためにシカが飼育されている「鹿野苑」。

教員

非常勤講師

  • 石田 育代 / 日本画家(担当:造形演習2・4・6・8(日本画)、芸術応用実習3・4・5・6(日本画))
  • 鵜飼 雅樹 / 日本画家(担当:芸術社会実践実習1・3(日本画)、表現演習5・7(日本画))
  • 岡部 隆志 / 日本画家(担当:造形演習1・3・5・7 (日本画))
  • 成瀬 今日子 / 日本画家(担当:芸術応用実習3・4・5・6(日本画)、芸術社会実践実習2・4(日本画)、表現演習6・8(日本画))
  • 堀川 愛依 / 日本画家(担当:基礎演習1・2・3・4・5・6・7・8G(日本画))
  • 水田 陽子 / 日本画家(担当:芸術応用実習3・4・5・6(日本画))

卒業後の進路

 めざせる職業
日本画家、文化財修復士、工芸作家、美術教師、グラフィックデザイナー、ゲームデザイナー、学芸員 など

● 主な就職先
伝統美術工房、 美術館・博物館、ゲームメーカー、デザイン事務所、 教育機関 など

取得できる資格

在学中、指定された科目単位を取得すれば、以下の資格を取得することが可能です。
その他、検定・資格取得のための支援講座も用意されています。

● 高等学校教諭一種免許状(美術・工芸)
● 中学校教諭一種免許状(美術)
● 図書館司書
● 博物館学芸員
 

VOICE

  • 高橋 翔平さん在学生

    描くことで自然の生命力を伝えたい。

    日本画の道を志したきっかけは、高校時代に美術の先生から見せてもらった日本画集でした。独特の色合いに感動して、自分もこんな色を出してみたいと思ったんです。多くの大学を見学するなかで、京都精華大学の豊かな自然と自由に使える広い制作スペース、固定観念にとらわれない先輩の作風に刺激を受け、進学を決めました。この専攻に入って良かったと思うのは、尊敬できる先生に出会えたこと。日本画家として活躍される先生の講評は毎回、構図や色遣いなど新しい発見を与えてくれます。入学当初は日本画材の扱いが難しくて、慣れるまでにずいぶん時間がかかりました。でも、日々の課題制作や公募展への出展などを経て、時間をかけて少しずつ思い通りの色を出せるように。対話を重ねて作品を制作する4年間で、絵を描くことがどんどん好きになり、画家をめざしたい気持ちが強くなりました。僕はいま、身近な植物をモチーフにして、自然のなかに息づく生命の力強さを描いています。観た人に自然を慈しむ気持ちが芽生えるような、心を動かす作品を制作していきたいです。卒業後は作家活動を軸に、家業である大工の技術で入手しやすい日本画パネルを制作し、後輩たちの応援もできればと考えています。
  • 雲丹亀 利彦教員

    自然と向き合いながら表現力と観察力を培う。

    日本画とは、自然を観察することで得た感動を色や形にかえて、宝石の粒子と膠の溶液で和紙に描き出すことです。私自身のテーマは、心の風景を日本画で表現すること。対象とするモチーフにメッセージを込め、日本画独特の表現技法を挑戦的に展開しながら、作品を制作しています。日本画の基本は、動植物をよく観察し、その本質的な造形をとらえて写生することです。豊かな自然に囲まれ、京都の四季折々の風土に触れられる京都精華大学は、日本画を学ぶのに最適の場所だといえるでしょう。また、キャンパスの近隣には社寺や美術館がたくさんあります。本物を鑑賞して見る目を養う機会や、制作者の意図に触れて学ぶ機会にも恵まれた環境だと思います。
    入学したら、向上心と挑戦する意欲をもって、なにごとにも積極的に取り組んでください。行動するほどあなたの感性は刺激され、潜在能力は伸びていきます。そうすることで、新しい自分を発見することができるかもしれません。日本画の制作を通して得られる力はたくさんあります。対象物を深く観察する力や、基本的な表現力、そして、それらを応用して作品に展開する力など。真摯に制作と向き合う日々を過ごせば、日本画はもちろん、さまざまな分野で通用する力が身につくでしょう。