講演会「いま世界で何が起こっているのか?──シリア、ヨーロッパそして日本──」

2016/06/09

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いま世界で何が起こっているのか? ──シリア、ヨーロッパそして日本──」
日時:2016年1月12日18:00~20:00場所:本館H303

 
2016年1月12日、人文学部は2回目となる特別講演会を開催しました。同講演会の企画趣旨は「世界で起きていることに向き合い、理解しようとする」こと。今回は「シリア問題」をテーマに、ジャーナリスト・玉本英子さんを迎えて行われました。

「この世界がひとつである限り、シリアで起きていることは日本に関係ないとは言えない」と、学部長のウスビ・サコ先生は冒頭に挨拶。「アサド政権」「IS」「シリア難民」などの言葉はニュースを通して身近になりましたが、「その言葉が意味することは依然として遠いままになっている」ことを指摘しました。

講演会では、人文学部の細川弘明先生が聞き手となり、玉本さんがシリア取材で撮影した映像を交えて議論を深めていきました。2時間にわたる講演の内容について、一部を抜粋するかたちでレポートします。
 
 
151226tamamotoプロフィール:
玉本 英子 (たまもと えいこ)
東京都出身。ジャーナリスト(アジアプレス大阪オフィス所属) 。京都精華大学人文学部非常勤講師。戦争や紛争地など戦火のなかの市民を視点に取材活動。イラク、シリア、レバノン、コソボ、トルコ、アフガニスタン、ミャンマーなど、写真、ビデオで取材、発表。テレビのニュースリポートや新聞、雑誌、ラジオ、講演会を通して伝えている。共著に「現代イラクを知るための 60章」(明石書店)など。映画「ザルミーナ・公開処刑されたアフガニスタン女性」を監督(2004)。「イスラムに生きる~公開処刑されたアフガニスタン女性」(NHK総合)、「イスラム国」(IS関連)取材で、報道特集(TBS)、報道ステーション(テレビ朝日)など。
 
< 目次 >
シリア問題は“世界史的な大事件”
溺死した幼児の故郷・コバニで何が起きたのか?
内戦のまちで暮らす人々の生活
破壊されたコミュニティは取り戻せない
「知る」ことからはじめてほしい

 
 
 

◉シリア問題は“世界史的な大事件”

シリアでは、1970年のクーデター以降、アサド政権による独裁状態が続き、人権も守られてきませんでした。民主化を求める反政府運動が発生したのは2011年3月のこと。シリア各地に大規模なデモが広がりましたが政府軍は市民を弾圧。2012年からは武装した反政府勢力との戦闘も激化します。

その後、シリアとイラクをまたがる地域を中心に活動する過激組織「イスラム国(Islamic State、以下「IS」と表記)」が登場、支配地域を拡大しようとしました。これに対してシリア政府軍、武装組織各派がISと、三つどもえの戦闘を繰り広げています。なかでもクルド人で組織されるYPG(人民防衛隊)はもっとも激しくISと戦っています。

このシリアの内戦には多くの外国からの戦闘員が入り込み、また、イラン、ロシア、アメリカなどの国々がそれぞれの思惑から各勢力に資金や武器を支援しました。こうした複雑な構図のなかで戦火はどんどん拡大し、隣国イラクでの混乱もかさなって、人々は逃げ場を失い国外へと避難しているのです。

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UNHCR(United Nations High Commissioner for Refugees、国際連合難民高等弁務官事務所)が2015年に発表した統計(※)によると、国外に逃れたシリア難民は約400万人。国内に留まっている避難者は760万人に達しました。内戦が始まった頃のシリア人口は約2200万人ですので、国民の約半数が国内外で避難生活を送っていることになります。
※UNHCR SYRIA 2015 MID-YEAR REPORT
 
 

細川:イスラエル建国のときに追い出されたパレスチナ人は約500万人。その倍以上の人たちが、自分のまちやふるさとを追われて、仕事を失い、命すら脅かされている。これは桁違いに深刻なことで、世界史的な大事件だと思うのです。しかし、そもそもパレスチナ問題の深刻さが理解されていない日本では、シリアで起きている事態の大きさや深刻さも捉えられていません。

 
 
今では想像もつかないかもしれませんが、「1980年代以前の中東を知る人たちはイラン・イラク戦争が始まる前は、どの国も宗派や宗教の違いに寛容な社会だったと言う」と細川先生。平和な社会が壊れてしまった背景には、「諸外国の介入や圧力による部分が非常に大きいことを認識する必要がある」と強調します。そして、「そこを見ないで『中東はいつも荒れているね』という捉え方をすると、大きな見間違いをすることになる」と話しました。

細川先生は、歴史的な経緯を踏まえずに「イスラム怖い」「ISは無茶苦茶だ」という日本の捉え方はきわめて表面的であると指摘。「このような理解に留まっていることは、いずれこの国自身を危うくしてしまう」と警鐘を鳴らしました。
 
 


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