行動する歴史学「妖怪」編

2015/11/18

行動する歴史学「妖怪」編

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千年の都・京都では、ニンゲンの営みの影でひっそりと、妖怪たちも歴史を刻んできました。歴史スポットに負けないくらい怪談スポットが存在することも、京都の魅力のひとつです。そこで今回は、妖怪研究がライフワークという堤先生と妙満寺にやって来ました。
鎌倉時代から続く妙満寺は、顕本法華宗の総本山という由緒あるお寺ですが、ここにはあの「安珍・清姫伝説」の鐘が納められています。

【おさらい】安珍・清姫伝説ってどんな話?

その昔、安珍というイケメンの僧侶が紀伊国熊野大社まで参拝したときのこと。途中で名主の家に泊めてもらうことにしました。その名主の一人娘だった清姫は、安珍に一目惚れ。猛アタックを試みますが、まじめな僧侶安珍はこれを拒否します。「参拝が終わったら、会いに来る」と約束をするものの、参拝後は別の道を通って帰省。それを知った清姫は錯乱し、大蛇になり安珍を追いかけます。
追いつかれた安珍は道成寺へ逃げ込み、鐘の中に身を隠しました。ここなら平気と思ったのですが、清姫はその鐘に蛇の体を巻きつけて火を吹き、鐘ごと安珍を焼き殺してしまいました。

京都有数の心霊スポット「深泥池」。
ここにも蛇女が棲んでいた。

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京都の心霊スポットと言えば「タクシーの怪談話」で有名な、深泥池(みどろがいけ)。濡れ髪の女性客を拾ったタクシードライバーが、目的地の深泥池で「お客さん着きましたよ」と振り返ると女性は跡形もなく消えていたという話ですね。
実はこの深泥池にも江戸時代、蛇女が棲んでいました。それは「小栗判官」という説経節に登場します。
その昔、毘沙門天の申し子として生まれた小栗という青年がいました。彼が吹く笛の音色があまりに美しかったので、深泥池に棲んでいた大蛇が「会ってみたいわ」と美人な姫に変身し、小栗のもとを訪ねました。何も知らない小栗は一目ぼれ。二人は毎晩のようにデートを重ねます。しかし、深泥池の大蛇にうつつを抜かす小栗のうわさは都に広まり、やがて小栗の父親の耳に。見かねた父親は、小栗を常陸の国に流してしまうのです。ここから物語は二転三転。興味のある方はぜひ読んでみてください。

女性の念に蛇はつきもの?
全国に蛇女が出没する理由

「安珍・清姫伝説」や「小栗判官」の他にも、女の強い念が蛇になるという怪談話は、日本各地で語られています。その背景にあるのは、法華経の説教。古来より仏教では、女性は成仏できないという教えがありましたが、法華経では、女性でも成仏できるとお経の中に書かれています。それを広めるために、こうした寓話が平安時代頃からつくられました。それらが、江戸時代の怪談ブームや歌舞伎ブームで脚色されて、今のような話になったと考えられます。妖怪や怪談には、人々の様々な思惑が隠されているのです。

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道成寺縁起絵巻。大蛇になった清姫が安珍を鐘ごと焼き殺すシーン
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清姫のたたりを恐れ山間に捨てられていた鐘を、法華経により供養
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女性の髪が蛇に?女の怨念が蛇に化ける怪談話は全国にあります
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ちなみに妙満寺の執事 土持さんはとても穏やかな方です

 

子どもたちの悲鳴が聞こえてくる、
恐怖の研究室

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怪談話にまつわる京都の様々な場所をめぐり、実際に見て触れて学ぶのが京都精華大学の授業スタイル。さらに堤先生の研究室では、地域の子供たちに向けて、学生が自分たちで作った怪談を読み聞かせるイベント「百物語の館」を定期的に開催しています。


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堤 邦彦 TSUTSUMI Kunihiko
人文学部 総合人文学科 文学専攻
大学院 人文学研究科
専門分野:日本近世文学 / 説話伝承史



慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了(文学博士)。世の中の役に立たない(と見做されてきた)怪談研究をライフワークとする。『江戸の高僧伝説』、『怪異学の技法』(共著)、『女人蛇体―偏愛の江戸怪談史』、『現代語で読む江戸怪談傑作選』など。2015年より怪談朗読団体・百物語の館の元締として公演活動中。

http://www.kyoto-seika.ac.jp/edu/faculty/tsutsumi-kunihiko/


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