堤 邦彦先生インタビュー

2015/03/20

堤 邦彦04

Q.なぜ、先生は怪談話に関心を持ち続けているのですか?

A.幽霊は、非常に後ろ向きな一面を持つ人間の想像力の究極だからです。

基本的に、幽霊も妖怪も実在しないと思っています。それでも、幽霊や妖怪が描かれるのは人間が必要とするからなんです。怪談は人間の想像力の究極なんですよ。
 
人間は、楽しいことや、未来を思い描く想像力も持っていますが、イヤな記憶、忘れたいこと、どうしても人前では言えない鬼のような感情をどうしても抱いてしまいます。しかし、大人の世界である社会では後ろ向きなことはしない暗黙の約束があります。「こんなみじめで、イヤな感情を持っています」と人前で公然と言うことはなかなかできません。
 
ところが、人間としてはどこかで後ろ向きなことを言わないとつじつまが合わなくなるんです。そこで、幽霊や妖怪のように非常に後ろ向きな超自然的存在を出して中和をはかろうとします。たとえば、妖怪「垢嘗(あかなめ)」は風呂場を汚くするから出てくるわけでしょう? 幽霊は恨めしいから化けて出てくるんですよね。
 
怪談を通して、誰しも抱えている負の要素を公然と表現できるのは非常に健全なことだと思います。もちろん、「未来は明るい」「必ずできる!」と前向きにやっていくことは大切です。でも、負の要素も肯定してバランスを取らなければいけないという視点で見ると、妖怪や幽霊は研究対象として非常に面白いんです。
 
僕は、妖怪よりも幽霊の方が究極の後ろ向きだから好きですね。そもそも、文学は後ろ向きを肯定するもの。だから、妖怪を研究することも文学研究のひとつになるんです。
  
 
 
 


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