ウスビ・サコ先生 インタビュー

2014/09/18

 
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Q.今の研究テーマとの出会いは?

A.「環境問題ってなんかエゴだなと思ったんです」

 
 京都大学大学院では、大阪府の環境共生のあり方を検討する、国の建築評価機関への参加を通して論文を執筆。私の修士論文「環境共生建築技術・手法の公共建築への導入に関する研究」は、大阪府の環境共生の参考書として使われることにもなりました。ところが、研究すればするほどに、私の心のなかには「?」が浮かぶようになってきたのです。
 
 環境問題には、技術で解決できることと、私たちの努力で解決できることがあります。たとえば、エレベータをやめて階段を使えば、環境負荷を減らすことができますよね。ところが、環境問題に意識的な人たちでさえ、意外と自分の努力で解決しようとはしません。
 
 企業や行政による環境問題への取り組みは、ある種のイメージ効果として使われているだけじゃないのか? そんな疑問を抱え始めた頃、1995年1月17日に阪神・淡路大震災が発生。倒壊した住宅の立て直しなどのプロジェクトに参加するなかでも、理想と現実のギャップにぶつかりました。
 
 行政は倒壊した住宅と土地を買い取って、理想的な耐震構造を持つ超高層住宅を建築するのが良いと考えます。でも、住民から話を聴くと彼らが望んでいるのは、震災前と同じ場所で、同じご近所さんと一緒に生活することなんです。建物も大事ですが、人と人がつながるコミュニティも非常に重要だし、住民に学ぶことも多いのではないかと気がついたんですね。
 
 震災の一年後、祖国のマリで“実践力もある環境共生研究家”として講演を行う機会がありました。すると、マリの人々にさんざん馬鹿にされたんです。「窓を開けて電気を使うなと言うけれど、ここには電気もなければ、水さえ十分には引かれていない」「お前はマリの何を知っているのか?」と笑われて恥ずかしい思いをすることになりました。
 
 先進国は環境基準を設けて「使い過ぎはやめましょう」と言うけれど、エネルギーを使い過ぎているのは先進国。なのに、世界中にたくさんあるエネルギーを手にしてもいない地域に、その基準を押し付けようとするんですね。そういう事実を見ていくと「環境問題ってなんだかエゴだな」と思ったんですね。
  
 そこで、思い切って研究テーマを変更。コミュニティと空間の関係に目を向ける「空間人類学」に取り組むようになったのです。
 
 
 

 
 


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