伝統的な染と織から 布と糸の新しい表現まで

布に色をつける「染め」と、糸をつむぐ「織り」の技法によって生み出されるテキスタイル。独特の美しい色彩と、素材によって異なる風合いが魅力です。テキスタイル専攻では、日本有数の充実した設備を使って、シルクスクリーン、ろうけつ染め、型染め、つづれ織り、フェルト、縫いなどの幅広い技術を習得することができます。また、京都という立地を生かして、友禅や西陣織などの伝統技法を学ぶ機会も設けています。暮らしに欠かせない「布」におけるテキスタイル表現はもちろん、芸術作品としてのテキスタイル表現を追求できる点も特長。豊富な知識と高い技術に独自の発想を組み合わせて、新しい表現を創造する作家をめざすこともできます。

科目PICK UP

  • 4つのテーマで作品を制作。テキスタイルの可能性を探る。

    [造形実習/3年]
    染め、織り、フェルト、シルクスクリーン、縫いなど、さまざまな技法を専門分野にもつ教員のもと、作品を制作します。1年間を4期に分け、「コミュニケーション」、「テクスチャー」、「環境」、「社会とのかかわり」の順でテーマを設置。ディスカッションなどを通してテーマを掘り下げ、各自でコンセプトを固め、それぞれが選んだ技法で作品を仕上げていきます。後半の「環境」ではテキスタイルがもたらす環境への影響を、「社会とのかかわり」では作品が社会でどう機能するかを考えながら制作に取り組みます。テーマごとに技法を変えることも可能。テキスタイルの可能性を探りながら、独自の表現を生かした作品づくりをめざします。

4年間の学び

  1. 1年次

    FIRST

    表現者の「幹」をつくる

    芸術学部の共通科目を受講して、観察力や思考力、想像力など表現者としての「幹」を育みます。また、7専攻の基礎を広く学び、これから追求する分野を検討していきます。

  2. 2年次

    SECOND

    基本の技法を身につける

    シルクスクリーンや型染めなど、多様な技法の基礎技術と歴史について横断的に理解を深め、また「染色」「織り」「縫い」の技法ゼミに分かれて学びます。

  3. 3年次

    THIRD

    テーマを染めや織りで表現

    「コミュニケーション」「環境」など、あたえられたテーマを各自で解釈して作品に展開し、思考力と発想力を鍛え、テキスタイル表現の可能性を探ります。

  4. 4年次

    FOURTH

    自分の表現を追求する

    4年間で培った技術や表現力を駆使して、卒業制作に取り組みます。自分自身の表現やオリジナリティを追求しながら、学生生活最後の作品を完成させます。

4年間で身につく能力

  • 空間を生かした立体作品をつくる発想力
  • 織り、縫いなど繊維を扱う力
  • 型染め、友禅など日本の伝統的な染織技法

作品

施設

本格的な織り機を備えている織り実習室。

PICK UP!

  • 染め作業後に使用する洗い場は非常に効率的な設計に。

  • 染めの工程で、布に色を定着させる大型蒸し器。

  • 型染めの実習室。大型の平面作品のほか、浴衣や着物の反物も広げて制作することができます。

教員

非常勤講師

  • 大住 由季 / 染織家(担当:基礎演習3・4G(テキスタイル)、造形演習5(テキスタイル)、表現演習7(テキスタイル)、芸術応用実習1・6(テキスタイル)、芸術社会実践実習1・2(テキスタイル))
  • 繁田 真樹子 / 染色作家(担当:基礎演習7・8G(テキスタイル)、芸術応用実習4 (テキスタイル))
  • 白井 聡子 / 型染め作家(担当:造形演習1・2(テキスタイル)、芸術応用実習4(テキスタイル)、基礎演習5・6G(テキスタイル)、表現演習7・8(テキスタイル))
  • 竹内 優美 / テキスタイル作家(担当:基礎演習1・2G(テキスタイル)、造形実習3・4(テキスタイル)、芸術応用実習5・6(テキスタイル))
  • 巽 美由紀 / 織作家(担当:芸術応用実習1(テキスタイル)、造形演習5(テキスタイル))
  • 堤 加奈恵 / 繊維造形作家(担当:芸術応用実習1・6(テキスタイル)、造形演習6(テキスタイル)、表現演習8(テキスタイル))
  • 細田 あずみ / 染色作家(担当:芸術基礎実習5(テキスタイル)、芸術応用実習2(テキスタイル)、芸術社会実践実習3・4(テキスタイル)、表現演習5・6(テキスタイル))
  • 本田 昌史 / テキスタイルアーティスト(担当:芸術基礎実習6 (テキスタイル)、芸術応用実習3 (テキスタイル)、プロダクトデザイン応用演習29B(プリント)、制作演習6(プリント))
  • 毎田 仁嗣 / 加賀友禅作家(担当:造形演習7・8(テキスタイル))

卒業後の進路

 めざせる職業
テキスタイルデザイナー、インテリアデザイナー、プロダクトデザイナー、染織作家・職人、美術教師、学芸員 など
 
 主な就職先
アパレルメーカー、繊維メーカー、呉服店、教育機関、美術館・博物館 など

取得できる資格

在学中、指定された科目単位を取得すれば、以下の資格を取得することが可能です。
その他、検定・資格取得のための支援講座も用意されています。

● 高等学校教諭一種免許状(美術・工芸)
● 中学校教諭一種免許状(美術)
● 図書館司書
● 博物館学芸員

VOICE

  • 岩井 まどかさん在学生

    未経験から憧れの染色技法に挑戦。

    染めの世界に魅力を感じたのは高校生のとき。地元・三重県の伝統工芸、伊勢型紙に触れたことがきっかけです。その高度で繊細な手仕事に惹かれ、未経験でも伝統的な型染め技法を本格的に学べる京都精華大学に進学を決めました。型染めは切り絵のように緻密で、ひとつひとつの工程に正確さが求められる技法。時間がかかる分、完成した瞬間の感動は格別です。先生方が基礎から丁寧に指導してくださるので、初めてでも安心して学べる環境でした。友禅をはじめとした染色文化など、歴史のある京都で学べることもこの大学の魅力。特に伝統産業の工房で学べる「京都の伝統産業実習」が印象に残っています。この授業では、「漆」の工房を訪問し、2週間の実習を行いました。普段布を扱っている私にとって、木を扱う漆塗りは初めての体験。慣れない素材や工程に苦労しましたが、型染めのデザインを漆塗りに転用し、制作に取り組みました。さまざまなことに挑戦できる環境が、作品の幅を広げてくれたと感じています。4年間の集大成となる卒業制作では、地元、鳥羽の情景を染め上げたいと思っています。卒業後は京都で、和小物を扱う会社に就職します。働きながら、テキスタイルの作品もつくり続けたいと思っています。
  • 鳥羽 美花教員

    テキスタイルの緻密な作品づくりは「短い一生」。

    京都は、古くから高度な染色技術を培ってきた街です。テキスタイル専攻はその技術を守り伝えていく場所でもあり、授業では伝統的な技法と、本物を使った作品づくりにこだわっています。糊づくりにはもち米、糊板には樅木(モミノキ)を使用するなど、昔のやり方を踏襲しているのは、先人の知恵と技術を体感するため。作品をただつくるだけではなく、道具や材料それぞれの歴史や背景を理解することも大切にしています。テキスタイル制作の特徴は、素材や発色の奥深さと、その制作プロセスの緻密さです。ひとつひとつの素材や工程をおろそかにせず大切に積み上げることで、自分の出したかった色・つくりたかった作品と驚きを持って出会うことができます。私はそれを「短い一生」のようだと思うのですが、そのときの喜びは何物にも代えられません。もともと人は、布を織ることで服をつくりました。さらにそれを「美しくしたい」と考え、柄をつけたり色を染めたりし始めました。美しさや豊かさを求めるのは人間の根源的な欲求であり、生きる上で欠かせないものだと思います。自分と向き合い、無垢な心で感動し、真摯に目の前の制作に集中すれば、おのずと誰かの生きる力になるような作品が生まれるのではないでしょうか。