伝統からデジタルまで あらゆる版表現に挑戦

「複製できる芸術作品」をすべて版画ととらえる版画専攻では、浮世絵から写真まで、幅広い表現技法を学ぶことができます。中心となるのは、木版、銅版、リトグラフ、シルクスクリーンの4版種。加えて、写真や映像などのデジタルメディアを研究することも可能です。また、アートとデザインの中間的な表現である版画の特性に注目して、作品をまとめる編集能力を伸ばすこともできます。このほか、充実した施設・設備も版画専攻の魅力。4版種の工房をはじめ、写真スタジオ、暗室、紙漉き工房、ブックアート工房などがあり、自由に創作活動を行うことができます。多彩な技法と出会える環境で、発想力や造形力を伸ばし、自分だけの表現を探求しましょう。

科目PICK UP

  • 多彩な技法を体験して学び、自分に合う表現方法を模索する。

    [造形基礎/2年]
    木版画、銅版画、リトグラフ、シルクスクリーン、写真、デジタル表現の基本を、1年間かけて広く学びます。さまざまな素材と技法に触れながら自分にぴったりの表現方法を探し、同時に、目的に応じて素材や技法を選ぶ力を養います。

  • 版画専攻の伝統、版画集「KINO PRINT」をつくる。

    [卒業研究実習1・2/4年]
    版画の特徴である「エディション」について考えながら作品をつくり、全員の作品をまとめた版画集「KINO PRINT」を制作します。作品を収める箱をデザインし、展示会も実施。教員や大学院生も有志で参加します。専攻設立当時から続く伝統行事です。

4年間の学び

  1. 1年次

    FIRST

    表現者の「幹」をつくる

    芸術学部の共通科目を受講して、観察力や思考力、想像力など表現者としての「幹」を育みます。また、7専攻の基礎を広く学び、これから追求する分野を検討していきます。

  2. 2年次

    SECOND

    基本の技法を身につける

    木版、銅版、リトグラフ、シルクスクリーンの4版種のほか、写真やデジタルの技法などについても基礎から学ぶことができます。多様な技法に触れ、3年次の学びにつなげます。

  3. 3年次

    THIRD

    自分に合う技法を深く学ぶ

    関心がある版画技法や写真表現を工房に分かれて学びます。あわせて、ブックアート、紙造形、デジタル表現、編集方法などへの理解も深め、自分に合う技法を探究していきます。

  4. 4年次

    FOURTH

    自分の表現を追求する

    4年間で培った技術や表現力を駆使して、卒業制作に取り組みます。自分自身の表現やオリジナリティを追求しながら、学生生活最後の作品を完成させます。

4年間で身につく能力

  • 木版や銅板など版を扱う技術力
  • 多様な技術と表現を組み合わせる発想力
  • 問題解決の選択肢を多数生み出す応用力

作品

施設

銅版画、リトグラフ、シルクスクリーンなど、各版種別の工房には多様な印刷設備がそろいます。

PICK UP!

  • 紙すき工房では紙造形アートにも挑戦できます。

  • 写真スタジオに特設された暗室ではフィルムの現像から印画紙の焼き付けまでを行うことができます。

  • リトグラフ工房

教員

非常勤講師

  • 伊庭 靖子 / 美術作家(担当:芸術応用実習5(版画)、芸術社会実践実習2(版画)、表現演習6・8(版画))
  • 岸 雪絵 / 作家(担当:工芸3・4、基礎演習7・8G(版画)、造形演習4(版画)、芸術応用実習3(版画))
  • 熊谷 誠 / 版画家(担当:造形演習2、基礎演習1・2G(版画)、造形演習3・4(版画)、造形研究3・4、表現演習7(版画))
  • 栗棟 美里 / 現代美術家(担当:写真表現1・2、基礎演習5・6G(版画)、芸術基礎実習5・6(版画)、芸術応用実習2(版画))
  • 集治 千晶 / 版画家・美術家(担当:表現演習6(版画)、イラスト基礎演習6F(銅版画A・B))
  • 平井 恭子 / 木版画摺師(佐藤木版画工房)(担当:芸術応用実習4(版画))
  • 武蔵 篤彦 / 版画家(担当:造形演習7(版画)、芸術社会実践実習1・2・3・4(版画)、表現演習5・8(版画))
  • 芳木 麻里絵 / 美術作家(担当:映像メディア表現3・4B、基礎演習3・4G(版画)、芸術応用実習3・5・6(版画)、芸術社会実践実習1(版画)、デザイン演習A・B)

卒業後の進路

 めざせる職業
美術作家、フォトグラファー、グラフィックデザイナー、美術教師、印刷技術者、学芸員 など
 
 主な就職先
印刷・出版関連、写真スタジオ、デザイン事務所、映像制作会社、教育機関、美術館・博物館 など

取得できる資格

在学中、指定された科目単位を取得すれば、以下の資格を取得することが可能です。
その他、検定・資格取得のための支援講座も用意されています。
 
● 高等学校教諭一種免許状(美術・工芸)
● 中学校教諭一種免許状(美術)
● 図書館司書
● 博物館学芸員

VOICE

  • 貴志 磨衣那さん在学生

    作品を通して人の感情に寄り添っていきたい。

    「刷る」ことで完成する版画のおもしろさは、偶然性が大きいところ。版をつくったりインクを混ぜ合わせたりする工程や道具の使い方、刷るときの力の入れ具合などにより、制作するたびに微妙な風合いが変わります。思い通りにならないことも多く大変ですが、意図していた以上の表現ができあがる瞬間は、とても感慨深いです。版画専攻の魅力は、多くの刺激が受けられる環境と、制作に没頭できる充実した設備です。先生との距離も近く、よく相談に乗ってもらっています。版画には多様な表現技法があり、私が専門としているシルクスクリーンの他にも木版や銅版、写真など、人によって作風がまったく異なります。合同講評では学生同士で率直に意見を交わし合い、新たな視点を得て制作に活かすことができます。卒業後はシルクスクリーンを使ってグッズをプリントする企業に勤める予定です。お客様のつくりたいものを自分の技術でサポートする仕事と並行しながら、作家活動も続けていきたいです。私のテーマは、誰もが持っているにもかかわらず、普段表には出しにくい「ネガティブな感情」。自分のなかにもあるその感情と向き合い、作品に変えることで、誰かの心にも寄り添えたらいいなと思っています。
  • 北野 裕之教員

    版画ならではの独特な技法を、 成長の糧に。

    版画は技術とともに歩みながら、人間の予想を超える「美」をつくりだしてきました。「版」を通すことにより、手で直接描いたのでは表現できない、独特で魅力的な線・色面・イメージを生み出します。木版、銅版、リトグラフ、シルクスクリーンをはじめ、写真、ブックアートなど、その多様で幅広いプリント表現は多くの人を魅了します。私自身が研究や制作に取り組む際は、関心をもつ対象を自分のやり方で追求していくこと、楽しむことを大切にしています。写真や版画には、他にはない独特の技法や制作プロセスがあります。それらは、自分ならではの表現を探すとき、大きなヒントや可能性を与えてくれるものです。だからこそ、版種別の工房やスタジオがあることは、版画専攻の大きな強みなんです。専門の施設と設備を使ってそれぞれの技法を体験し、惹かれる分野を発見し、そこから自分の世界を掘り下げていきましょう。この専攻は、写真や版画に関心がある人はもちろん、アートとデザインのどちらも取り組みたい人、絵本やイラストレーションなどの表現方法に興味がある人にもぴったりだと思います。4年間を通して、ものをつくる力、イメージする力、構成力などを身につけましょう。
  • 池垣 タダヒコ教員

    素材と技法を組み合わせ、表現スタイルを持った作家へ 。

    「表現」とは何でしょう? まずは「表現」の対義語から考えてみましょうか。「表現」は英語で言うと「express」、その対義語は「impress」。つまり「表現」の対義語は「印象」なんです。「印象」をそのまま分解すると「インドの象」。たとえば、日本で初めてインドの象を見た人はびっくりしたでしょうね。その人は象を絵に描いて、まだ見たことがない人に見せてあげました。新しいものを見て、描いて、共有する。それが「表現」です。「表現」は「印象」がないと生まれません。だから僕は学生のみなさんに、人が見たことがないものを見てほしい。好奇心と感受性を持って、どんどん知らないところへ出かけていって感動してほしい。そしてそこで見たものを表現してください。版画には形・色彩・素材といった、造形三要素が揃っています。技法も多彩で、いろんな選択肢があります。それらをどんどん体験して自分にとってのベストな表現方法を見つけてください。そしてここで、自分なりの表現スタイルを確立していってほしい。ミュシャ、ウォーホル、北斎……そのあなた版を見つけましょう。僕はこの工房で、「表現」をずっと続けられる作家を育てたいと思っています。