よく観察し、描くことで人間や社会への思索を深める

洋画専攻では、時代に流されない表現者を育てるため、「描くことの本質」を重視しています。対象をじっくり観察したり、絵具やイーゼルなどの道具を自分でつくったりしながら、描くことと真摯に向き合い、独自の視点をみがいていきます。授業では美術史なども学び、芸術表現の変遷や、過去の作家たちの技法やメッセージにも触れます。そこで得た気づきは、学生や教員との対話を通して共有し、自らの作風を確立する助けにします。描くことは、人間の生き方、ひいては世界とは何かを追求することです。ここで身につけた思考力や価値観は、絵を描くことだけでなく、人生を歩む中で直面するさまざまな困難を乗り越える力になるでしょう。

科目PICK UP

  • 手づくりの絵の具で絵画を制作。「描くこと」の根本を知る。

    [造形基礎/2年]
    絵を描く道具であるイーゼルや絵の具の制作に挑戦します。また、「見ること=描くこと」として、人や風景をよく観察し、その真髄をとらえて描く練習を行います。授業を通して、「描くこと」とは何かを考え、ものごとの本質を見る力を養います。

  • 歴史と社会の一員として、「何を描くべきか」を考える。

    [造形表現/3年]
    西洋と日本の美術史や、現代社会の問題について、グループで学習します。そのうえで、美術史の延長線上にある自分、現代社会の一部である自分を意識しながら作品を制作。広い視点をもって「今、何を描くべきか」を考え続ける姿勢を身につけます。

4年間の学び

  1. 1年次

    FIRST

    表現者の「幹」をつくる

    芸術学部の共通科目を受講して、観察力や思考力、想像力など表現者としての「幹」を育みます。また、7専攻の基礎を広く学び、これから追求する分野を検討していきます。

  2. 2年次

    SECOND

    画材や美術史の知識を学ぶ

    土や木で画材をつくり、その成り立ちを学びます。油彩の課題制作を行いながら、絵画やその他の芸術表現、哲学、美術史なども学び、芸術への理解を総合的に深めていきます。

  3. 3年次

    THIRD

    作家研究を表現に生かす

    グループに分かれて近現代の作家研究を行い、表現と社会のつながりを知り、そこで得た学びを自分の表現に落とし込み、複数の連作として作品を制作します。

  4. 4年次

    FOURTH

    自分の表現を追求する

    4年間で培った技術や表現力を駆使して、卒業制作に取り組みます。自分自身の表現やオリジナリティを追求しながら、学生生活最後の作品を完成させます。

4年間で身につく能力

  • 社会やものの本質を見きわめる観察力
  • 物事を深く掘り下げ、多面的にとらえる思考力
  • 自分の思いを他者に伝える表現力

作品

施設

施設

実習室の個別スペース。大きな絵も十分に描ける広さがあります。

PICK UP!

  • 学生たちが運営する「7-23ギャラリー」では、さまざまな展示が目白押し。

教員

非常勤講師

  • 小枝 繁昭 / 画家(担当:芸術応用実習3・4・5・6(洋画)、表現演習1・3・5・7(洋画)、アカデミックスキル3・4(洋画))
  • 佐藤 健博 / 美術作家(担当:基礎演習1・2・3・4・5・6・7・8G(洋画))
  • 中川 佳宣 / 美術家(担当:造形演習1・3・5・7(洋画))
  • 薬師川 千晴 / 美術作家(担当:芸術基礎実習5・6(洋画)、芸術応用実習1・2(洋画)、造形演習2・4・6・8 (洋画)、デッサン1(マンガ02))
  • 安喜 万佐子 / 美術家(絵画)(担当:芸術応用実習3・4・5・6(洋画)、表現演習2・4・6・8(洋画))
  • 横内 賢太郎 / Artist・Director (ASP)(担当:表現演習2・4・6・8(洋画))
  • 吉村 昌子 / 油画(担当:芸術基礎実習5・6(洋画)、芸術応用実習1・2(洋画))

卒業後の進路

 めざせる職業
画家、美術作家、キュレーター、美術教師、グラフィックデザイナー、ゲームデザイナー、学芸員 など

● 主な就職先
美術館・博物館、教育機関、デザイン事務所、ゲームメーカー など

取得できる資格

在学中、指定された科目単位を取得すれば、以下の資格を取得することが可能です。
その他、検定・資格取得のための支援講座も用意されています。
 
高等学校教諭一種免許状(美術・工芸)
● 中学校教諭一種免許状(美術)
● 図書館司書
● 博物館学芸員

VOICE

  • 千田 楓さん在学生

    何気ない日常から、ものを見る力を鍛える。

    大学入学前はやりたいことを決めきれず、2年次からじっくり専攻を選べる京都精華大学の芸術学部に魅力を感じて入学。1年次で日本画、版画など興味がある分野をひと通り経験し、自分に向いているのは洋画専攻だと気づきました。最近は、道を歩いている時などにふと目にとまる「苔」をモチーフに描いています。わたしが洋画専攻でいちばん大きな収穫だったと思っているのは、対象物をしっかり観察し理解する「ものを見る力」を養えたこと。いまでは何気ない日常の風景にある一瞬一瞬を、普段からきちんと観察するようにしています。実習室は区切られておらずオープンな雰囲気で、全く作風の異なる同級生達の作品に刺激を受けることも。授業では苦手意識があった抽象画にも挑戦しました。これまでは写実的表現を中心に制作してきたので、課題にはずいぶん悩まされましたが、なんとか納得できるものを完成させることができました。 作家研究の授業では、先生が指定したアーティストについてグループでリサーチし、多様な価値観や解釈の仕方、表現方法について理解を深められました。次の目標は個展の開催。今後も止まることなく作品を発展させ、成長していきたいです。

  • 小松 敏宏教員

    絵を描くとは何か、原点から学ぶ。

    洋画専攻の特長のひとつは、最初の課題として絵具づくりに挑戦することです。学生たちは、石を砕き、土を炒り、色をつくることから絵画を理解します。私自身は絵画から出発して、建築的スケールの作品を世界各国で制作してきました。作品のテーマは、構築された空間と、そこで暮らす人々、そして近隣にある環境との関係です。20代後半にドイツへ渡り、その後オランダとアメリカ合衆国に在住し、現在は京都を拠点に活動しています。作品と向き合う際に大切にしていることはたくさんあります。綿密な計画、丁寧な手作業、大胆なアイデア、一貫した姿勢、時には最初からやり直す勇気と決断力。そして、この場所でなぜこの作品をつくるのか、なぜこの作品がこの場所に必要なのかを徹底的に考えること。作品の制作と発表に注力しながら、展覧会の企画などにも取り組んでいます。絵を描くために技術が必要なことは言うまでもありませんが、私は「描き方」よりも「ものの見方」を学ぶことが大切だと考えています。学生にはよく見て描くことで自分なりのものの見方、考え方ができるようになってほしいです。都会の喧騒から少し離れた静かな環境の中、京都の美しい自然を感じながら、普遍的で本質的な表現をとことん追求しましょう。