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6月29日(木)アセンブリーアワー講演会「無意識と対話する(ゲスト:川内倫子氏)」レポート

アセンブリーアワー講演会は、京都精華大学の開学した1968年から行われている公開トークイベントで、これまで54年間続けてきました。分野を問わず、時代に残る活動や世界に感動を与える表現をしている人をゲストに迎えています。
 
 
2023年6月29日(木)は、写真家の川内倫子さん、聞き手に写真家の濱田祐史さんを迎え、「無意識と対話する」をテーマに講演会を実施しました。
川内さんは2002年に『うたたね』『花火』で第27回木村伊兵衛写真賞を受賞し、2009年には米ニューヨークの国際写真センター(ICP)の写真賞である第25回インフィニティ・アワード芸術部門を受賞するなど、国内外で活躍。おもな写真集に『Illuminance』(2011年)、『あめつち』(2013年)、『Halo』(2017年)などがあります。また、2022〜2023年に東京オペラシティ アートギャラリーと滋賀県立美術館にて個展「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」を開催しました。
 

「無意識と対話する(ゲスト:川内倫子氏)」講演会レポート

(壇上左から、ゲスト:川内倫子さん、聞き手:濱田祐史さん)
独特の柔らかな光と淡い色彩で写し出される日常や景色。そのひとつひとつが織り合わさって生まれる、かけがえなさの重みや「生」への畏怖の念……。2002年に「写真界の芥川賞」と称される木村伊兵衛賞を受賞し一気に注目を集めた川内倫子さんの写真は、その後も国際的に高い評価を受け、多くの人の心をとらえ続けています。
 
そんな川内さんを迎えて行われたアセンブリーアワー講演会では、川内さんと親交の深い写真家である濱田祐史さんが聞き手を務めるかたちで進行。2001年に3冊同時発売され話題となった『うたたね』『花火』『花子』から、生まれ故郷である滋賀県でも今年開催された大規模個展『川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり』まで、川内さんの作品づくりの軌跡を辿っていくという贅沢な内容でした。
 
なかでも印象深かったのが、学生時代と初の写真集『うたたね』制作時のお話です。川内さんが最初に写真に興味を持ったのは、グラフィックデザイン学科の学生だったときに受けた写真の授業。とくに現像したフィルムを印画紙にプリントする暗室での作業がきっかけだったと言います。

「現実に見えたものが、自分の目の前で紙に定着していく。実際にこの時間のなかにいたんだということを確認するような作業が、自分のメンタルヘルスにつながるというか……。その過程がすごく好きだったんです。だから、最初はプリントをするために素材を撮りに行っていた感じでした」
 
ここで濱田さんが「学生時代の気分やモチベーションはどうだったんですか?」と尋ねると、川内さんは「もう、つねに低空飛行で、自分が何をつくりたいのかわからなくて、暗中模索していました」と言います。
「いま(会場に)いらっしゃる方も同じしれませんが、『自分にしかつくれない作品をつくる』というのがあまりにもわからなさすぎて……。とくに写真はシャッターを押せば写るので、個性が出しにくいなと思っていました。でも、いろんな先人の写真集や作品を見ていくうちに、クレジットを見なくても『あ、これは荒木経惟さんの写真だ』とか、誰の作品かわかるようになっていった。それで、写真でもこんなに個性が出せるんだと知って。いつか自分も『川内さんの写真だとすぐわかったよ』って言われるようなものを撮ろう、と思うようになりました」
その第一歩が、自分と相性の良いカメラを見つけること。『うたたね』の表紙では、タピオカの粒をスプーンで掬う風景の写真が使用されていますが、これは川内さん自身がスプーンを持ち、ローライフレックスという二眼レフのアンティークカメラで撮ったもの。ローライフレックスは「自分のなかの翻訳者的なパートナーとして相性がよかった」のだそう。
(映し出された『うたたね』の表紙と、写真集制作の経緯を話す川内さん(壇上左))
「(『うたたね』は)自分の半径1メートルぐらいの距離感のなかで見えている世界をモチーフに選んでいる写真集なので、この1枚はわりと象徴的で。『自分って何なんだろう』というのを探すために、身の回りのものから始まったっていう感じなんですね。最初の一冊目がこういったモチーフになっていったのは自然な流れだったのですが、そのときの自分にとってのドキュメンタリーになっていますね。」

さらに今回は、濱田さんのアイデアにより、講演会の参加者のみなさんに入場時に質問カードを配布。後半は集まった質問に回答するという、「来てくださっている方とキャッチボールができる会」(川内さん)となりました。
 
数多くの質問に応答くださった川内さんと濱田さんでしたが、質問のなかには、今回の講演会のテーマと関連して「無意識と対話できたと実感するのはどんなときですか?」というものも。この質問に、川内さんはこう答えました。

「自分が写した写真と対話を重ねていくことで作品ができあがっていくんですが、『なぜ自分はこれを撮ったんだろう』『なぜこの写真を選んだんだろう』『なぜこの写真とこの写真を隣り合わせに選んだんだろう』といった写真とのキャッチボールのなかで、自分が気づいていなかった自分の意識みたいなところにだんだん触れることができるんですよね。だから、その対話がいちばん大事だと思っていて。写っているものから教えてもらえるものがあるんです」
 
「対話を繰り返していくということは、無意識と対話していくということでもあると思う」──。独自の世界観を確立し、人びとの心を揺さぶる作品を発表しつづける川内さんですが、そこには自分だけの表現を手探りで求めた学生時代や、無意識との対話を積み重ねるというひたむきな時間があることがわかりました。いま、自分だけの表現を探している真っ最中である学生たちにとっては、まさに励みと糧となる言葉となったはずです。
 
貴重なお話をお聞かせくださった川内さん、聞き手を務めてくださった濱田さん、このたびはありがとうございました。

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