精華のテキスタイルコースでは、糸や布に限らず、あらゆる繊維素材での造形をテキスタイルとして考えます。染める、織るといった伝統的な技法の染織作品はもちろん、繊維を使った立体造形やインスタレーションも可能。ここにはアートとデザインを分ける境界線は存在しません。染色という普遍的な技法を用いて、既成概念を破る表現の可能性を追求していきます。
「徹底した基礎技法の理解が自由な表現を支える」という考えのもと、最初の2年間は型染、ろうけつ染、シルクスクリーン、織技法、繊維を使った立体造形など、あらゆる手法の基礎を学びます。伝統的な技法から先進的な技術まで、多様な制作を通じて、さまざまな素材を使いこなす力を身につけます。それは、伝統工芸、デザイン、アートの枠にとらわれない新しい作品を生み出すはずです。
基礎を習得したあとは、学生の自主性を最大限に尊重。3年次以降のカリキュラムは、大半の時間が自由制作に当てられ、一人ひとりが独自の表現をめざして作品の構想と制作に打ち込みます。これをサポートするのは、第一線で活躍する現役作家でもある教員たち。教員が全員参加して行う講評では、さまざまな視点からの意見が飛び交い、学生の創作意欲とアイデアを刺激します。
展覧会やイベント、染織工芸とのコラボレーションなど、学生が発表できる機会が多いのは、西陣織や京友禅といった国際的に有名な染織文化の地・京都ならでは。3年次に行われる伝統工芸の現場を体験するプログラムをきっかけに、伝統的な手法をきわめる道を選ぶ学生もいます。また、日本の技法をふまえ、世界各地にある独自の染織文化をもつ土地に制作の場を求めることも可能です。

「自分の顔をデッサンして、イメージに合うものを草稿にした」雨のなかの自画像。私にとって、テキスタイルとは何よりも色彩の表現です。染料の透明感、その美しさや豊かさにひかれたのが、このコースを選んだ理由。高校では造形専攻でしたが、さまざまな色を組み合わせ、絵画的にも立体的にも表現できるテキスタイルが自分に合っていると思って。
2年次までに型染、ろうけつ染、シルクスクリーン捺染や織りの技法をひととおり学び、3年次からは「自画像」をテーマに制作しています。たとえば、雨にたたずむ自分を描いた作品。雨の日に心に浮かぶ幼い記憶や憂鬱な気持ちを、流れる水のようなグラデーションで表しています。白い絹の布にミシンで無数のプリーツを付け、筋ごとに染め分けていったんですが、酸性染料の濃さを調節しながら、一度塗って、乾かしてからまた塗って……と繰り返すうちに、同じ青色でも全然違う印象に染まっていくんですよ。
あえて白黒で染めた自画像もあります。絡まり合った糸をたくさん縫い付け、夢や記憶のなかに迫りくる「恐怖」を表現しました。私にとって、「色」とは内面を掘り下げ、心象を表すいちばんの素材なんです。
山部亜里 3年生 京都府 京都芸術高等学校出身
本格的織機を備えているテキスタイルコースの織実習室。
染め作業後に使用する洗い場のスペースは非常に効率的。
卒業後の進路は幅広い。たとえば作家といっても、染織作家、クラフト作家など、さまざまな分野が想定される。アパレル業界で活躍する者が多いのも特徴だ。
京都は世界でもっとも染織作家の層が厚いといわれる場所。伝統的な染織工芸から現代アートまで、京都で生まれるさまざまな表現は、国内外に強い発信力をもっています。
しっかりとした基礎技術、素材に関する知識や独創力を活かし、アパレルやインテリアなど繊維を扱う有名ブランドで、デザイナーとして活躍する卒業生も多くいます。
日本の伝統的な染織技術からファイバーワークの立体作品まで広く精通しているため、美術教員やキュレーター、プロデューサーなどの職業に就くこともできます。