京都精華大学 教育後援会 Kyoto Seika University Parents Association

2018.12.28

  • 活動報告

[懇親事業]「日本の文化と暮らしを灯す 和ろうそくの世界」に関する講演会を開催しました

11月3日に2018年度の懇親事業を開催しました。教育後援会の懇親事業は、会員間の親睦を深めることを目的に、年に1回開催しております。例年、懇親事業では「伝統工芸」をテーマとして開催し、好評をいただいております。今年も伝統工芸の中から、「日本の文化と暮らしを灯す 和ろうそくの世界」に関する講演会を行いました。

講師には和ろうそく職人で近江手造り和ろうそく 大與(だいよ)の四代目大西巧さんをお招きしました。聞き手は、本学人文学部の卒業生であり、現在は本学の伝統産業イノベーションセンター長を務める米原有二さんです。

はじめに照明を落とし、大西さんが用意した大與の和ろうそくに火を灯しました。その灯し火のなか、洋ろうそくとの違いの説明から講演が始まりました。

まず石油製品であるパラフィンから作られる洋ろうそくとは異なり、和ろうそくは主に櫨(はぜ)などの植物から取れる木ロウでできているそうです。限りある化石燃料を原料とする洋ろうそくよりも植物性の和ろうそく方が地球に優しいということです。

また、ろうそくは芯を太くすればロウが垂れにくくなるにも関わらず、洋ろうそくの芯は和ろうそくと比べると細くなっているそうです。それにも理由があり、石油製品でつくられている洋ろうそくのロウは芯に浸透する力が強く、和ろうそくのように太い芯にすると火が強くなり過ぎてしまうためだそうです。

生活の灯りの主流が電気となった今では、大きな取引先はお寺などです。寺社で洋ろうそくを使うと、煙と煤(すす)が多く排出されてしまい金箔が汚れやすく修繕費用が必要になるケースも少なくないそうです。また、燃え切らずに残った和ろうそくは買い取りして再資源化しているため、総合的に判断すると割安でエコではないか、というお話もありました。

次に、和ろうそくを歴史的に見ると、中国から入ってきた蜜ろうに始まり、そこから漆を原材料としていた物が長く続いたそうです。今のような櫨を使った和ろうそくが作られるようになったのは江戸時代頃からで、九州産の良質な櫨が使われるようになり、藩の主要産業へと成長しました。その良質な和ろうそくの製造方法は、当時の藩では門外不出とされるほど人気だったそうです。

伝統工芸とはいえ製造業なので、どうすれば早く作れるかなど、効率化も図っているそうです。温度を変えたり竹製の付け爪を使うなど、試行錯誤を今でも繰り返していると、大西さんご自身が出演されたテレビ番組を見ながら、仕事内容についても詳しく語られました。

米原さんからの繁忙期はいつ頃か、との質問に対しては、浄土真宗では親鸞聖人の命日である11月28日が最も信者の方にとって大切な報恩講(ほうおんこう)という行事の日だそうで、この日には和ろうそくが使われるそうです。大西さんは「まさに今が繁忙期です」と、冗談交じりの笑みを浮かべながら答えると、会場は笑いに包まれました。

中盤には絵画の金箔や、舞妓さんや芸妓さんのお化粧は、電灯の下で見ると色見が激しいが、実はろうそくの下で見た時に、最も美しく見えることを前提で作られていると説明してくださいました。全てが隅々まで見えることが決して良いことではなく、見えない部分を想像したり、利用することにこそ『陰翳礼讃(いんえいらいさん)』という伝統的な日本の美の感覚があるのではないかとも語られました。

大西さんご自身でも、それらを体験できるように、ろうそくの灯りの中で行うお茶会を主催したり積極的に活動する中で、100年続いた老舗として次の100年を見据えて『hitohito 』というブランドも立ち上げるなど、「火」と「人」を繋ぐ『灯り』としての役割を果たしていきたいとのことでした。

また2011年にグッドデザイン賞を受賞した『お米のろうそく』の話になると、「東日本大震災で、自分たちにコントロールできないものが身近に存在することを痛感し、自分たちがコントロールできる灯りや、持続可能なプロダクトについて考えるようになった」と、ろうそくについて見つめ直した時のことを話してくださいました。

そして「学生には1つの物事に、1つの視点ではなくプラス2つぐらい持って欲しい。例えば私が考える『ろうそく』だと、他に『暮らし』や『環境』、『エネルギー問題』などを多角的に見られるようにしていきたいと思っているし、学生以外のみなさんにも、そうしていただきたいなと思っている。」と、学生や参加された方々へのメッセージをいただきました。

講演の最後には、はじめに灯した和ろうそくのロウが垂れていないことを確認し、参加者からの驚きの声の中で講演は終了しました。

ご参加くださったみなさん、ありがとうございました。来年度の懇親事業もみなさんの興味・関心に応えるテーマで企画したいと考えております。ご意見・ご要望がございましたら事務局までお寄せください。( kouenkai@kyoto-seika.ac.jp