研究プロジェクト Research Project

南太平洋島嶼国における伝統的住居の建設をめぐる在来知と発展的継承

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研究活動スタート支援
研究期間:2020−2022年度

人文学部 藤枝 絢子

研究の目的

南太平洋島嶼国の村落の伝統的住居は、建築物に直接関連する知識や技術だけでなく、コミュニティの日常の中で蓄積されてきた知恵や工夫、技能などを含めた「伝統的住居の建設をめぐる在来知」によって建設される。しかし、村落を取り巻く状況は変化し、伝統的住居は減少の一途を辿っており、建設をめぐる在来知は消滅危機にある。現代の状況に即した新たな継承機会の創出が必要とされるなか、本研究では、フィジーとバヌアツを対象とし、技術訓練学校を事例とし、伝統的住居の建設をめぐる在来知の性質と教育機関の特性から、新たな継承の場としての可能性を検証することを目的とする。

研究の方法

本研究では、フィジーとバヌアツの村落における伝統的住居を建設にまつわる知識や知恵、技術を在来知として抽出し、整理・構造化するとともに、その継承の機会や単位、方法を明らかにする。次に、当該地域における大工養成コースを有する技術訓練学校(フィジー・適正技術開発センター(先住民省管轄)、バヌアツ技術訓練学校(教育訓練省管轄))における教師や生徒の属性、カリキュラム、学習と教授の特性を明らかにする。これらをふまえて、技術訓練学校における建築をめぐる在来知の継承可能範囲を検証するとともに、教育機関に代表される在来知の新たな継承の場の創出にみられる課題と可能性を考察する。

研究の展望

現在、村落では伝統的住居は減少の一途を辿っており、その建設をめぐる在来知は消滅の危機にある。村落内での伝統的住居の建設機会の創出には限界があり、マニュアルの作成や技術訓練学校におけるカリキュラム開発への要望が聞かれるなか、伝統的住居の建設を形骸化させず、建設をめぐる広範な在来知を可能な限り継承するためのアプローチを検討する必要性を認識してきた。これまで、建設過程の記録を通じて、明示化できる知識(適性植物種や建設工程など)を確認するとともに、技術訓練学校では周辺の村落での実習など、形式化された知識の教授・習得に限らないカリキュラムを提供することを把握してきた。これらを鑑みると両者の間にも親和性があり、本研究では、「地域固有性が高く形式化されてこなかった在来知」と「形式化された知識の教授・習得が主となる教育機関」を前提としつつも、それぞれの性質を精査することで新たな継承の場としての可能性を示すことが期待できる。