研究プロジェクト Research Project

16・17世紀説話資料における「怪異説話」の継承と展開

gjh1lq0000007dh4

若手研究
研究期間:2020−2023年度

人文学部 久留島 元

研究の目的

本課題の目的は、中世から近世にかけて展開する「怪異説話」の整理と分析、体系化である。
具体的には、中世から近世の過渡期と見なされて分析が遅れてきた16・17世紀における説話関連資料を対象とする。当該時期の資料としては、絵巻、古浄瑠璃正本、戦国期説話集、笑話集などが想定される。これらを用いて「怪異説話」の分析を行い、古代・中世説話からの継承および相違について考察し、さらに近世における奇談集、怪談集流行などに至るダイナミズムを、具体的な作品分析にもとづき明らかにする。

研究の方法

近世期には、説話集や絵巻以外にも、幅広い資料のなかで多くの説話が引用、または利用されている。平成30年度科研費採択課題「縁起・地誌・俳書をめぐる天狗説話の享受と展開」では、寺社縁起、地誌、俳書を中心に、「天狗説話」という観点から調査、研究を行った。今後もその方針を継続しつつ、より広い「怪異説話」という観点から、国内外の幅広い資料を横断的に用いて研究を行いたい。
 膨大な近世資料と中世説話を結ぶ結節点として、絵巻や芸能資料、戦国期説話集、笑話集といった、16・17世紀の説話資料群が注目される。これまで16・17世紀の説話資料は、内容の雑多さから研究が進んでいなかったが、近世における諸ジャンルに説話を提供したという点においても重要であり、改めてターゲットとした研究を行う。

研究の展望

怪異説話は、一般メディアや社会にも注目度がたかく、波及が予想される分野である。近年も朝里樹『現代怪異事典』(笠間書院)などの書籍が出版されている。
 申請者自身も国際日本文化研究センター大衆文化プロジェクトの一環として、国際日本文化研究センター所蔵絵巻の調査を行い、ウェブ漫画コンテンツ掲載「まんが訳」シリーズ監修に反映した。この成果は大塚英志監修・山本忠宏編『まんが訳酒呑童子絵巻』(ちくま新書)として公刊され、多くのメディアに取り上げられたほか、マンガ大賞2021一次選考に選ばれるなど一般の注目を集めた。
 しかし、これまで近世期における怪談集などの盛行と、古代・中世における説話との結節点については研究が進んでいなかった。そこで改めて16世紀、17世紀の「怪異説話」に注目し、近世、近代へ展開する「怪異説話」がどのように継承されていたかを具体的に分析する必要がある。成果報告として、本課題の成果をふくめた「怪異説話」の展開に関する史的考察をまとめた書籍を構想しており、公刊する計画がある。