研究プロジェクト Research Project

アート・クラブ(1945‐1964)の世界展開と抽象芸術の組織論

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基盤研究(C) 
研究期間:2021−2024年度

国際文化学部 鯖江 秀樹

研究の目的

第二次大戦直後の1945年10月、ローマで「アート・クラブ(Art Club)」と称する芸術組織が設立されました。この組織が1964年までに関与した展示・出版企画は、ヨーロッパやアメリカはもちろん、アフリカ、中東、南米など、20か国以上で実現し、冷戦時代にあって、国家外交的、個人的交流とは別の次元で、芸術の国際的連帯を促進しました。日本でも具体美術運動や岡本太郎が深く関わったようですが、アート・クラブにまつわるそうした一連の事実自体が、戦後美術史に埋没したままです。本研究は、実態が定かでないこの組織が戦後芸術に果たした貢献を精査し、しかるべき形で評価することを最終目的とします。

研究の方法

上記の研究目的を果たすために、本研究はまず、アート・クラブの活動全容をアーカイヴ資料から発掘し、既知の芸術運動とのかかわりを検討します。さらに、イタリア、日本、ベルギーを例に取り、各国支部を介した芸術家相互の連関を明らかにします。戦後美術、とくに抽象芸術の世界展開の実像を再考し、そこから、戦後美術作品の質を見極めようとします。そもそも、「アート・クラブ」が歴史に埋没したもっとも大きな理由は、その凡庸な名にあるでしょう。「美術部」とも訳せてしまうがゆえに、インターネット検索は機能不全に陥ります。だからこそ、本研究では、(たとえば日本に限っても)『美術手帖』や『芸術新潮』などはもちろん、『みずゑ』や『三彩』といった関連する美術雑誌を実際に手に取って、調査するという地道な作業が欠かせません。

研究の展望

先述のように、アート・クラブは世界各地での活動記録があるため、わずか4年での網羅的な全容解明は困難です。ゆえに本研究では、イタリア、ベルギー、日本を主要な研究対象として、補足的にイギリス、アメリカの状況を調査することとします。たとえば、1945年から(アート・クラブ本部が解散した)64年までに刊行された美術・文化雑誌や書簡などの資料調査は必須となります。ローマ現代美術館(MACRO)の視覚芸術研文書センター(CRDAV)、ベルギー王立美術館近現代アーカイヴ、アメリカのメニル・コレクションアーカイヴが主な調査地となり、日本国内では主要な美術雑誌バックナンバーを調査します。共同研究であるため、(A)アート・クラブの実態調査:三国での活動実績を1945年以後の定期刊行物で把握、(B)組織研究:支部間の意思疎通や作家交流を芸術家の文書(とりわけ書簡)で調査、(C)作品研究:クラブの圏域に存した作家の作品分析から(B)の影響の有無の検証という、3つの検討項目を設け、チーム間での意思疎通を図りながら調査にあたります。