研究プロジェクト Research Project

現代西アフリカにおけるライシテと宗教性の連続性の文化人類学的研究

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基盤研究(B) 
研究期間:2021−2025度

国際文化学部 清水貴夫

研究の目的

西アフリカ諸国の共和国体制は、フランスに起源をもつライシテ(脱宗教化)の原則により、本来政治と宗教が切り離され、人びとの信教・良心の自由を保障し、特に教育、医療、家族関係(特に婚姻)と言った人びとの生活の基盤となる領域から宗教を排して世俗性を保証する。しかし、イスラームをマジョリティする西アフリカ諸国では、それぞれの国、地域でライシテが謳われているにも関わらず、その様相はフランスや欧米のそれとは大きく異なる。フランス人類学・思想に頻出するフランス流ライシテ概念を批判し、アフリカに適応できる文化宗教現実や中間集団を抽出し、普遍的な福利の効く社会形成、しいては、西アフリカにおけるライシテとはどのようなことかを問うことを本研究の目的とする。

研究の方法

ライシテは政治と宗教の関係性を位置づけた原則ではあるが、フランスに於けるベール論争に見られるように、両者の齟齬は人びとの日常生活の中に現れる。広くフランスにより植民地化された西アフリカにおいては、独立時に「お題目」的にライシテ原則が付与され、その運用は必ずしもフランスや欧米が行ってきたものと同質なものではなかったのではない。ゆえに、本研究では、西中部アフリカの国家と個人を二極化せず、社会集合性や共同性を 濃淡として捉え「ライシテ―宗教性」の連続体を析出・分析し、現代社会の新たなモデルとして提示し、個人と宗教の関係性が再び問われている現在社会の在り様を考察する。そのために2つの方法論をとる。一つは、人びとの日常生活や中間組織(例えばNGO)の実践からライシテの運用をフィールドデータから西アフリカのライシテ状況をせり上げる。もう一つは、植民地時代から現代にいたる行政文書を中心とした文献研究の方法を取る。

研究の展望

本研究で明らかにする西アフリカ的なライシテの諸相は、1960年前後に欧米による植民地支配から脱したアフリカ諸国における国家と宗教の関係性を、人びとの日常実践の中でこそ前景化する。世界的にも、この研究は端緒についたばかりであり、現在ある事例を増やし、分析可能なレベルに押し上げる必要がある。本研究で行う事例研究はこの意味で西アフリカのライシテを考える上での資料を提示することが可能であるし、さらに理論化することができれば、西アフリカの人びとのことをさらに一歩踏み込んで理解することが可能であり、しいては宗教学、宗教社会学、文化人類学、地域研究と言った多くの学問分野に寄与することが可能である。