研究プロジェクト Research Project

台湾大学図書館所蔵『日本書紀』諸本の調査と研究

SN3D0018

基盤研究C 日本文学関連
研究期間:2019−2020年度

人文学部准教授 是澤 範三

研究の目的

2020年には『日本書紀』(720年成立)が編纂1300年を迎えるが、その百年前の明治期には歴史的な展覧会が開催された。これは「『日本書紀』編纂1200年紀年」として開催されたものであり、当時その存在を確認しうる『日本書紀』およびその注釈を含む関連書籍の写本と刊本で重要なもの約110点を展示するという、日本書紀研究史上、最大の展示会であった。この展示会は「日本書紀撰修千二百年記念展観会」として大正8年に京都帝國大學で、翌大正9年に國學院大学で開催された。その中の桃木武平所蔵の写本7点は、現在国立台湾大学図書館(以下、台大図書館と略記)が所蔵しており、日本書紀の写本・刊本を大量の日本古典籍を今に伝えている(「台湾大学所蔵日本古典籍調査」研究代表者 松原孝俊)。『日本書紀』の写本うち2本は中村啓信『校本日本書紀』(角川書店)の校訂に採用され、さらに注目すべきと考える写本の候補が数本ある。いずれも巻1、2の神代巻である。現在、重要な日本書紀古写本の影印が相次いで刊行され、研究する環境が整いつつある中で、現存するものを取りこぼす形で行うのは九仞の功を一簣に虧く恐れがある。また一方で新しい資料の出現は、行き詰まる資料研究の限界に新たな道を開くことが期待されるのである。

研究の方法

①台大図書館と交渉し、『日本書紀』の写本・版本群(注釈書を含む)約30本を中心に調査し、その中でも資料的価値の高いものについて翻刻し、2012年に刊行した台湾大学典蔵全文刊本2『国立台湾大学図書館典蔵 日本書紀 影印:校勘本一 圓威本』(是澤範三、山口真紀主編、洪淑芬訳)につづく影印版を刊行する。
②来たるべき2020年の『日本書紀』編纂1300年記念にむけて、国立台湾大学図書館が所蔵する『日本書紀』写本群の日本への里帰り展示、および台湾大学図書館内での『日本書紀』および関連資料の展示会を企画し、これを日本と台湾の交流事業として推進する。これにより、台湾の日本史および日本文学研究者による日本書紀研究を誘発し、日本人研究者とコラボレートする形で研究を推進するためのネットワークを構築する。

研究の展望

本研究の遂行により、台湾大学図書館が所蔵する『日本書紀』の写本および版本の資料的価値が顕彰されることになる。同図書館所蔵の古典籍としては最古となる嘉吉二年書写の圓威本など室町時代以降の写本については中世日本紀の思想的影響を受けた写本のありようが期待でき、近世以降の版本については上田秋成や国学者の書き入れから当時の日本書紀受容を知ることができるであろう。その意味で、台湾大学図書館所蔵の日本書紀は、中世から近世にかけての日本書紀の受容史を、思想史との関係から分析することが期待される。