研究プロジェクト Research Project

大津絵と近世芸能についての歴史研究

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基盤研究C 美術史関連
研究期間:2019−2021年度

特別研究員  鈴木 堅弘

研究の目的

本研究は、江戸時代に逢坂山周辺で描かれた大津絵を考察の対象とし、〈図像学〉と〈芸能史学〉をつなぐ観点から大津絵文化が発生した理由を、芸能民が集う「場の歴史」すなわち「トポスの視座」から捉えることを目的とします。また大津絵の画題を、念仏芸能・民俗芸能・舞台芸能の三支点から読み解くことで、近世期の民衆絵画が「芸能文化の基層」によって育まれた史実を立証するものです。
他方、これまでの大津絵研究は、おもに「民藝」の範疇にて行われてきました。しかし、その視座は無名絵師による手土産の認識を越えるものではなく、「起源の真相」や「画題の成り立ち」を解明するまでには至っていません。そこで近年、民藝とは別の観点から、大津絵を「日本の民衆絵画の重要な起点」として捉えなおす試みが、フランスを中心に国際研究の場でなされています。本研究もその流れを受けて、大津絵を土産品の認識に留めるのではなく、芸能者や戯画を描いた日本の浮世絵文化の源流にあたる絵画として位置づけることを目指します。

研究の方法

本研究は、「日本国内」および「アメリカの博物館・美術館・個人コレクション」に遺存する大津絵の現地調査を実施し、それらの作品を閲覧・記録・撮影することで、これまでに確認されていない新たな大津絵の発見を試みます。このことで、大津絵の画題数の全貌を正確に認識し、かつ国内外に遺る大津絵の流通経路を把握します。
くわえて、三井寺および近松寺(大津市)に遺る関蝉丸神社に関する芸能関連の歴史資料を調査・翻刻することにより、江戸前期から中期にかけての逢坂山周辺の「場」が有する芸能文化の歴史位相を明らかにします。
また本研究にて、日本・フランス・スペインの研究者による国際共同研究会を立ち上げました。同研究会は、毎年度に2回ほど、京都精華大学およびEFEO‐KYOTO(フランス国立極東学院:京都支部)にて、共同研究会のメンバーによる「アメリカでの資料調査報告」や「最新の研究成果の発表」を実施します。

研究の展望

本研究における〈大津絵の起源と画題〉を芸能文化から探る視座は、先行研究にて欠落していた部分であり、「大津絵の文化史」を構築する上で重要な位置を占めるものです。また日本美術史の研究において、〈図像の意味〉や〈表現の成り立ち〉を同時代の風俗祭祀や民俗信仰から読み解く考究はほとんど試みられておらず、本研究の独自性は、これまで絵画研究として注目されてこなかった大津絵を対象とすると共に、図像学の方法に芸能史の観点を加えることです。  ▼画像は大津絵の《塔》です。