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Music

それぞれの場所に根ざした
“クリエイティブな思考”をシェアしたい
山本佳奈子(Offshore主宰)

何ができるのかを、それぞれの場所で考える

山本さんが最近手掛けたイベントに、『パーティー51』という韓国の映画の上映と、韓国の音楽家のライブをセットにしたツアーがあります。『パーティー51』は、ソウルの弘大(ホンデ)という音楽シーンの拠点として有名な地区の音楽家たちが、食堂の立ち退きに反対してそこでライブイベントを開催するというドキュメンタリーです。その場所に根ざした活動という点で、ここまでのお話ともつながります。韓国の社会的な出来事を元にしたこの映画を、日本でどう受け止めればいいでしょうか。

弘大(ホンデ)
ソウル市内にある芸術大学・弘益大学の周辺地区。アートを好む若者が集まる場所として発展し、ギャラリーやライブハウス、クラブなどが数多く並ぶ文化の発信地として知られる。

山本 韓国と日本では社会のシステムも政治も違っていて、要は違う環境で起こっている活動なので、別に日本人がそこまでシリアスにとらえなくていいと思っています。でも、自分でずっと何かを作ってきた人、DIY精神を大事にしてきた人には、勇気を与えてくれる映画です。


『パーティー51』 photo by 51+필름
自分たちの場づくりと人集めに奔走するソウルの音楽家たちを追ったドキュメンタリー作品。

ホンデは韓国のサブカルチャーの面から注目されがちですが、広報でそこをあまり強調しないことで、単に「韓国の音楽が好き」というのとは別の接点を見出だそうとされているように感じました。

山本 韓国のシーンに詳しい日本人はいっぱいいるのに、なんで私に話がきたのかというと、私が2012年に、香港のライブハウスのドキュメンタリー映画『Hidden Agenda』を大阪と東京で上映していたからだと思います。この映画も、家賃や法律の問題でライブハウスが営業できなくなったとき、そこにいた人たちが何を行ったかを描いています。韓国のパク・ダハムという音楽家が私に『パーティー51』の日本での上映を頼んできたのですが、「日本のミュージシャンは政治的なことを避けたがるから、正直誰に頼んだらいいか分からなかった。そんなときに『Hidden Agenda』のことを知って連絡した」と彼に言われて、なるほどと思いました。
韓国、台湾、タイ、それぞれのインディーズ音楽のファンが日本にいますが、なんで地域で区切るのだろうとずっと思っています。以前は、韓国インディーズが好きな人って身内でわいわい言っている感じがして入っていけなかったんですけど、『パーティー51』を観たら、本当に格好いいバンドが韓国にいるなって純粋に思えたんです。そうやって意識が変わる人を増やしていけたらいいですね。

ある地域の音楽に注目するにしても、“その地域らしさ”を求めるより、音楽家がそれぞれのいる場所でできる行動を起こすことを重視しているのですね。最後に、今の日本のライブシーンについてはどのように見ていますか。

山本 ライブハウスのあり方は二極化に向かっているのかもしれません。以前はライブという空間に対して一つのイメージしかなかったのが、今はとても多様になってきていますから。
例えば、大阪にある「ベアーズ」というライブハウスは、ドリンク代なしでハードコアな音楽をずっとやっていますが、「ベアーズはライブ自体が面白い」というブランドがちゃんと確立できています。一方で純粋なライブハウスは減って、普段はレストランで、ライブもやったり……という空間になっているじゃないですか。ライブハウスの数もちょうど良いバランスに落ち着いてきて、提供する側も健康的に面白いことがやれるようになっている気がします。

インタビュー後記/谷口文和(京都精華大学 ポピュラーカルチャー学部 音楽コース教員)

“場所”にこだわることで見えてくる、情報発信の意義

ウェブサイトなどの情報発信やライブイベントの企画は、今では個人の手でも容易にできるようになりました。しかし、ただ漠然と「自分や自分の好きなものを見てほしい」と願っているだけでは、大量にある同じような情報のなかに埋もれてしまいます。そこから抜け出すには、「どういう人に、何に触れてもらいたいのか」を明確に意識し、自分のスタンスとして打ち出していくことが肝心です。
“場所”にこだわる山本さんのアプローチには、その点で大きなヒントがあります。アジア各地の音楽シーンを、単に「その地域の音楽」とまとめるのではなく、「それぞれの場所で何とかしようとする人々の活動」としてとらえる。この視点によって、その場にいる人々が音楽に感じている価値を、その外側にも届けることができるのです。音楽がさまざまな物事とのあいだに生み出す関係に着目することは、音楽を世に広める仕事だけでなく、ミュージシャン自身の活動にも活かされるはずです。


実習クラスで企画し、叡山電鉄の貸し切り電車で行われたライブイベント。

京都精華大学で“音楽の発信”を学ぶ
京都精華大学の音楽コースでは、音楽を作るだけでなく世の中に広めることも含めた総合的な視点から、音楽の“これから”と向き合うことを目指しています。
  • ①目的とターゲットを意識した情報発信
    音楽文化の社会的状況について調べた上で、批評やイベント広報などテーマをもったウェブサイトや冊子を制作。誰に向けて何を発信するのかを意識しながら、資料調査や文章執筆、情報の編集などに、グループによるゼミ形式で取り組みます。
  • ②音楽の価値を掘り下げるためのイベント企画
    「お寺や電車などライブハウスとは異なる場所でのライブ体験」など、テーマ性のある音楽イベントを企画開催します。そこから音楽とそれを取り巻く物事との関係を学び、「その音楽は誰にとってどのような価値をもつのか」を掘り下げていきます。
  • ③目的意識をもって思考やスキルを身につけるための科目群
    「文化産業論」「広告文化論」などの講義を通じて、音楽の文化的価値を分析する力を習得。ウェブやグラフィックソフトのスキルも、実際のプロジェクト運営で必要性を実感しながら学ぶことができます。
音楽コースのカリキュラム
実習
1年 つくる実習 (すべて必修) 届ける実習 (必修)
楽曲制作 / 録音 / 音楽分析 メディアを使った情報発信
2年 つくる実習 (クラス選択) 届ける実習 (必修)
(A) ソングライティング
(B) スタジオワーク
(C) DTM
音源リリース
ライブ・ワークショップ企画
イベント広報
3年 実習 (2クラスを選択)
ソングライティング / スタジオワーク / トラックメイキング / インタラクティブ表現 / 映像と音楽 / アーティストプロデュース / 音楽と言葉 / 音楽ビジネス
4年 卒業制作
演習

スキルを身につける
ボイス&リズムトレーニング
グラフィックソフト
エディトリアル
映像 / 写真
ウェブデザイン
プレゼンテーション
インタラクション など

専門性を深める
ミキシング
著作権ビジネス
音楽マーケティング
リズムアンサンブル
ライブPA / 批評・編集
グラフィックデザイン
ソーシャルデザイン など

講義

コース専門科目
ポピュラー音楽史
サウンドデザイン概論
民族音楽学
音楽理論・楽曲分析
作品作家研究
音響論 など

学部開講科目
文化産業概論
批評論 / 美学
メディア論
身体表現論
視聴覚表現論
広告文化論 など
※他学部開講科目も履修可能

前半の2年間の実習では、希望進路に関係なく全員が、音楽を“つくる”だけでなく“届ける”ことを学びます。3年次の実習では内容が専門化され、自分の目指す方向や身につけたいスキルに合わせてクラスを選択します。それと並行して、興味の幅を広げたり、やりたい仕事に必要なスキルを身につけたりするための講義・演習科目を履修します。そして4年次の卒業制作では、自分の決めたテーマにもとづいて作品制作やイベント企画、論文執筆などに取り組みます。

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