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Music

コミュニケーションによって広がり続ける
ゲーム音楽の表現の可能性
鈴木光人(作曲家)

かつてゲーム音楽はゲーム機でシンプルな電子音を鳴らすだけでしたが、今ではライブラリーに収録された音源を使ったり、自分で録音した音もそこに混ぜたりと、やろうと思えば何でもできてしまいます。しかし一方で制作のスケジュールがあって、折り合いをつけることも重要ではないかと思います。

鈴木 ゲーム全体の制作スケジュールを見ると、BGMの依頼はかなり後ろの方になります。2年くらいかけて作っているゲームでも、最後の半年くらいでやっと音がつけられる状況になるんです。となると、一曲に時間をかけることはどうしてもできなくなる。
とはいえ、納得のいく楽曲を作りたい。そこでスケジュール調整が非常に大切になります。外のスタジオに行って生の音を録るのは、すごく時間がかかる。それが必要であれば、他の部分で計算しなければいけない。半日でできる曲があったら、そこで浮いた時間を次の曲の制作にプラスしたりします。

ゲーム音楽はインタラクティブ・ミュージックへ向かう

そんななかでも制作上こだわっていることはありますか。

鈴木 決まったフォーマットから漏れて、これまでの自分の引き出しになかったようなものが偶然にできてしまうときが一番興奮します。ですから、そういうものが出てきやすいように、よく人とセッションをしたりして、“自分の外”にある要素を取り入れようと考えているんです。
ハードウェア・シンセサイザー(コンピュータ上のソフトではない実機)が好きな理由には、実はそういう部分もあります。バンドの一員みたいな感じで、予想しない音が出てくるのが面白いんですよね。仕事場につねにおいてあって、それを鳴らして録音した音を後で編集して使ったりするんですけど、聴き直してみると、いつ作ったのか、どの機材を使ったのかすらわからない音が出てきたりするんですよ。作ったのは自分なのに、他人の音を使っているような感覚になるのは、僕にとってはすごくラッキーです。


仕事場に置かれたシンセサイザー「ローランドJUNO-106」

ゲームは今後も進化していくと思われますが、それによってゲーム音楽に対する考え方も変わってくるのではないでしょうか。

鈴木 世界的に見て、ゲーム音楽の表現として流行ってきているのが「インタラクティブ・ミュージック」と呼ばれるものです。打てば響くように、プレイヤーの操作に対して反応が返ってくるようなものが今熱くて、音楽もそこに対応していくと考えています。

インタラクティブ・ミュージック
あらかじめ完成されておらず、何らかの操作に反応して変化し、聴き手との間で相互作用を生み出していく音楽。

そのゲームをプレイすることは、それこそ鈴木さんの原体験である「シンセをいじって遊ぶ」ような感覚に近づいていくのでしょうか。

鈴木 そういうゲームができればいいですね。楽器メーカーのかたと話したり、一緒にいろいろやってみたりという機会も増えています。楽器の開発者にとっても面白いみたいです。
先日もセミナーがあって、トークの後にライブをしたのですが、座って聴いているだけではつまらないだろうから、お客さんに近くに集まってもらったんです。曲になっていない音のパーツやいろいろなハードウェアが用意してあって、お客さんに「ちょっとやってみて」と小さいシンセを渡して操作してもらったりしました。そうすると、こっちはこっちで別のことをやっていても、妙な一体感を得られたんです。「どうやって参加するか」だと思うんですよね、音楽もゲームも。

インタビュー後記/谷口文和(京都精華大学 ポピュラーカルチャー学部 音楽コース教員)

これからの“ゲーム音楽”を作るために

「ファミリーコンピュータ」などのゲーム機がヒットした80年代以降、すでにプロとして活動していた音楽家がゲームの世界に参入し、ゲーム音楽の質を飛躍的に高めてきました。現在では関係が逆転し、ゲーム音楽にあこがれて音楽を始める人も増えてきました。それでも、ゲームのあり方とともに変わり続けるゲーム音楽は、つねにその外側からの感性を必要としています。
シンセサイザーで電子音の面白さに目覚め、テクノなどダンス・ミュージックを制作してきた鈴木さんならではの発想は、ゲーム音楽にも活かされています。多様な音楽のスタイルを“機能性”という面から理解すること。他の音楽家とのセッションや機材の操作など、“自分の外”から刺激を受けて新たな表現を見出すこと。今あるゲームに限らないさまざまな経験から得たアイデアが、次の時代のゲーム音楽にも繋がっていくことでしょう。


クラブをイメージした雰囲気の実習室でダンスミュージックを制作

京都精華大学で“次のゲーム音楽”を考える
京都精華大学の音楽コースでは、音楽を作るだけでなく世の中に広めることも含めた総合的な視点から、音楽の“これから”と向き合うことを目指しています。
  • ①電子音をベースにした音楽制作実習
    全員が自分のコンピュータを持ち、打ち込みや電子音による音色作りといった「DTM(デスクトップ・ミュージック)」のスキルを基礎から学びます。さらに上級生向けの「トラックメイキング」のクラスでは、ハードウェア・シンセサイザーも取り入れながら「気持ちよく踊れる音」にこだわった電子音楽作りに取り組みます。
  • ②「インタラクティブ表現」によって音楽の新しいかたちを目指す
    光の強さや人の動きを感知するセンサーを使うことで、音をコントロールする方法から自分でデザインして、即興的なパフォーマンスや映像と連動する音楽表現を追求します。
  • ③多様な音楽を理解するための講義科目
    さまざまな音の構造や文化的価値観をもつ世界各地の音楽を解説する講義を通じて、幅広いスタイルの音楽を創作するヒントを得ることができます。他にも、音響合成の原理やDJによる“音楽の編集”など、現代の多様化した音楽のあり方を根本から学びます。
音楽コースのカリキュラム
実習
1年 つくる実習 (すべて必修) 届ける実習 (必修)
楽曲制作 / 録音 / 音楽分析 メディアを使った情報発信
2年 つくる実習 (クラス選択) 届ける実習 (必修)
(A) ソングライティング
(B) スタジオワーク
(C) DTM
音源リリース
ライブ・ワークショップ企画
イベント広報
3年 実習 (2クラスを選択)
ソングライティング / スタジオワーク / トラックメイキング / インタラクティブ表現 / 映像と音楽 / アーティストプロデュース / 音楽と言葉 / 音楽ビジネス
4年 卒業制作
演習

スキルを身につける
ボイス&リズムトレーニング
グラフィックソフト
エディトリアル
映像 / 写真
ウェブデザイン
プレゼンテーション
インタラクション など

専門性を深める
ミキシング
著作権ビジネス
音楽マーケティング
リズムアンサンブル
ライブPA / 批評・編集
グラフィックデザイン
ソーシャルデザイン など

講義

コース専門科目
ポピュラー音楽史
サウンドデザイン概論
民族音楽学
音楽理論・楽曲分析
作品作家研究
音響論 など

学部開講科目
文化産業概論
批評論 / 美学
メディア論
身体表現論
視聴覚表現論
広告文化論 など
※他学部開講科目も履修可能

前半の2年間の実習では、希望進路に関係なく全員が、音楽を“つくる”だけでなく“届ける”ことを学びます。3年次の実習では内容が専門化され、自分の目指す方向や身につけたいスキルに合わせてクラスを選択します。それと並行して、興味の幅を広げたり、やりたい仕事に必要なスキルを身につけたりするための講義・演習科目を履修します。そして4年次の卒業制作では、自分の決めたテーマにもとづいて作品制作やイベント企画、論文執筆などに取り組みます。

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