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Music

“ネット発”のボーカロイドにも
身体性を持たせなければならない
kz(音楽プロデューサー)

誰が歌うかによって歌の作り方も変わる

2014年には、さまざまなアーティストがボーカルをつとめたアルバム『と』をリリースされましたが、ボーカロイドの曲と、人間が歌うための曲とでは、作る際に違いがあるのでしょうか。

kz 違う部分と、同じでもかまわないという部分の両方が、最近になって出てきました。まず違う点として、ボーカロイドにはそもそも人格が存在しません。人間がボーカルの曲を作る際に一番に考えないといけないのは、その人が歌って違和感がないことです。極端な例ですが、インターネットがモチーフになっている「Tell Your World」を西野カナさんが歌ったら、ものすごく違和感があると思うんです。彼女はすごいアーティストですが、バックボーンが全然違うので、インターネットの歌を歌うアーティストではないと思います。でもボーカロイドには、決まった世界観というものは究極的にはありません。


『と』
© FANTASISTAUTAMARO ALL RIGHTS RESERVED.

では、同じだと考えるのは、どのような点でしょうか。

kz みなさん初音ミクに高い音域で歌わせようとするんですよね。僕自身も初音ミクには高音域が合うと思って曲作りをしていたのですが、人間が歌えること自体が重要だと思い直したんです。符割り(歌詞のメロディへの乗せ方)も、あまりにも速すぎるとか息継ぎがないということにならないよう、自分が歌える範囲でやっています。
例えば、初音ミクの打ち込みで声のシャクりが入っていたとして、気持ちよく歌おうとすればこうなるというラインが保たれていないと、自分で歌わない、カラオケにも行かない人なんだなということが分かります。実際に自分が歌えば、そのラインがおのずと見えてきます。これも結局は身体性だという話です。

ボーカロイドには「こう打ち込めば不自然ではなくなる」というノウハウがいろいろありますが、それとは違う側面ですか。

kz 僕にはそのノウハウが一切ないんですよね。曲としての完成度に集中しているので、打ち込みの作業はとても雑なんですよ。逆に、歌がしっかりできていれば、テクニックの部分をカバーできるのではないかと思います。自分も実際に歌いながら打ち込むと、自然な作品が出来上がるんです。

歌は単なるメロディではなく、人が歌うことで成り立っている、と意識しているわけですね。

kz 歌う人によって、同じメロディでも作り方は変わります。ここはシャクったほうがいいだろう、棒のように歌った方がいいかもしれない、といったことは、実際に歌う人の声を聴かないと分からない。誰が歌うか決まっていない曲を作るとしても、自分のなかで「この人に歌ってほしいな」とボーカルを想定しています。歌う人の身体性を自分が噛み砕いて曲に取り込んでいく、ということですね。

インタビュー後記/谷口文和(京都精華大学 ポピュラーカルチャー学部 音楽コース教員)

ソングライティングから問いなおす、音楽と身体の関係

レコードとして売るために歌が作られるようになって以来、歌は歌手の存在とセットで流行するものとなりました。ボーカロイドを使って歌を作れる現在では、初音ミクなどのキャラクターが新しいタイプの歌手としてもてはやされています。しかし、そうしたボーカロイドであっても身体性を宿らせることが肝心である、とkzさんは考えています。
kzさんのスタンスは、「音楽はさまざまな意味で身体的な活動である」ということに根ざしています。歌や演奏だけでなく、同じ場に集まって一緒に踊ることもまた、音楽を身体で感じる行為です。そのことを意識してはじめて、音楽を求める多くの人たちの姿が見えてきます。ネットや打ち込みだから身体性が必要ないということではなく、むしろそこにどうやって身体性を絡めていくかが問われていると言えます。


ソングライティング実習の課題として制作されたCD

京都精華大学で曲作りを学ぶ
京都精華大学の音楽コースでは、音楽を作るだけでなく世の中に広めることも含めた総合的な視点から、音楽の“これから”と向き合うことを目指しています。
  • ①作詞作曲に留まらないソングライティング実習
    単にメロディやアレンジを作るのではなく、音楽にとって必要な要素を総合的にとらえた曲作りに取り組みます。歌詞の言葉選びや組み立て方にはじまり、音源制作やアートワークまで含めて「自分の音楽」を追求します。
  • ②自分を出していくための“引き出し”を増やす
    何となく作曲や演奏をしているだけでは、多くの人にとって魅力ある音楽は生まれません。音楽以外の興味ある対象を掘り下げ、表現の“引き出し”を増やすことも重要です。そのため、他分野とのコラボレーションなどを通じて「自分を人前に出す」ことに取り組むクラスも開講されます。
  • ③楽曲を研究する講義科目
    魅力ある音楽を生み出すには、既存の音楽を消化し自分のものにすることも必要です。「分析法」や「作品作家研究」の講義では、高く評価されている音楽がどのようにできているのかを、メロディラインやコード進行、サウンドの工夫、歌詞など、さまざまな側面から分析する力を養います。
音楽コースのカリキュラム
実習
1年 つくる実習 (すべて必修) 届ける実習 (必修)
楽曲制作 / 録音 / 音楽分析 メディアを使った情報発信
2年 つくる実習 (クラス選択) 届ける実習 (必修)
(A) ソングライティング
(B) スタジオワーク
(C) DTM
音源リリース
ライブ・ワークショップ企画
イベント広報
3年 実習 (2クラスを選択)
ソングライティング / スタジオワーク / トラックメイキング / インタラクティブ表現 / 映像と音楽 / アーティストプロデュース / 音楽と言葉 / 音楽ビジネス
4年 卒業制作
演習

スキルを身につける
ボイス&リズムトレーニング
グラフィックソフト
エディトリアル
映像 / 写真
ウェブデザイン
プレゼンテーション
インタラクション など

専門性を深める
ミキシング
著作権ビジネス
音楽マーケティング
リズムアンサンブル
ライブPA / 批評・編集
グラフィックデザイン
ソーシャルデザイン など

講義

コース専門科目
ポピュラー音楽史
サウンドデザイン概論
民族音楽学
音楽理論・楽曲分析
作品作家研究
音響論 など

学部開講科目
文化産業概論
批評論 / 美学
メディア論
身体表現論
視聴覚表現論
広告文化論 など
※他学部開講科目も履修可能

前半の2年間の実習では、希望進路に関係なく全員が、音楽を“つくる”だけでなく“届ける”ことを学びます。3年次の実習では内容が専門化され、自分の目指す方向や身につけたいスキルに合わせてクラスを選択します。それと並行して、興味の幅を広げたり、やりたい仕事に必要なスキルを身につけたりするための講義・演習科目を履修します。そして4年次の卒業制作では、自分の決めたテーマにもとづいて作品制作やイベント企画、論文執筆などに取り組みます。

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