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Music

CDが売れない時代、
レーベルに何ができるのか。
河野章宏(残響レコード代表取締役)

世に出すことの意味、出さないことの意味

レーベルとしての活動が活発になると、河野さん自身もミュージシャンなのに、他人のために割く時間がどんどん増えていきますよね。

河野 使命感のようなものがありますね。「音楽業界に残響レコードがなくなると、面白くなくなる」と言ってくれる人がたくさんいます。「あそこを参考にすればアイデアが得られる」というかたちを、僕らが半歩先を行って提示しているからこそ、存在意義があるというか。
僕らはよくこの精神性を“オルタネイティヴ(代替案)”という言葉で説明します。今の日本の音楽シーンに面白い音楽がないから、俺たちがぶっ壊して変えてやろうぜと思っている人たちは多いし、そういう人たちと仕事をしてきたんです。

“半歩先”と言えば、まだCDレンタルチェーンでインディーズのCDが扱われていなかった2000年代なかばに、TSUTAYAに残響レコードのCDを置いて積極的に展開したことが挙げられます。あれで「残響レコード」を知ったという人も多いだろうと思います。

河野 想像の範囲内に収まらないことが一番大事なんですよ。実は当時、TSUTAYAの担当者は、インディーズの間口を広げていきたいのに、どこも参加してくれないと悩んでいたんです。でも、CDが売れなくなるのを心配して誰もレンタルに参加したがらないということは、僕らが第一人者になれるということだと気づきました。そこで僕は「残響コーナー」として展開してくれるんだったらとオッケーしました。ブランドとして出すところに勝算があると見たんです。


TSUTAYAで限定発売したレーベルコンピレーションアルバム『残響record Compilation』

流通させること自体をひとつのブランディングと考えるということですね。
今では多くの人がYouTubeで音楽を見つけますが、高校生や大学生と、どうすれば新しい音楽を広められるかという話をしても、「YouTubeの関連動画に出るようにする」という答えばかり返ってきます。思考回路がその仕組に取り込まれているんですよね。しかし音楽を届ける仕事をするには、流通において何が起こっているのかを考えなくてはなりません。

河野 「逆を考えてみる」というのがポイントだと思います。例えば、この時代にあえてネットに載せないでプロモーションするという選択肢はないのかと。ネットで検索すれば何でも出てくるからこそ、探しても出てこないことが魅力になったりもします。
実際、うちではCDの発売日にアーティストのオフィシャルサイトをあえて閉じたことがあって。真ん中に枠を付けて、そこにパスワードを入れるとWebサイトにアクセスできるという仕掛けをして、「CDを買わないとオフィシャルページが見られないんじゃないか」と大騒ぎになりました。情報に踊らされていないで、自分たちがコントロールする側になろうという考え方ですね。

インタビュー後記/谷口文和(京都精華大学 ポピュラーカルチャー学部 音楽コース教員)

これからの“レーベル運営”を学ぶ

音楽産業における“レーベル”は、レコードの盤面に貼られたラベルに由来します。20世紀を通じて、レーベル運営の仕事は「レコードを作って売ること」そのものでした。しかし、CDのようなかたちをとらなくてもインターネットで音楽が発信できるようになった現在、Webサイトで複数のアーティストの音楽をリリースする“ネットレーベル”が出現するなど、レーベルのあり方はレコードという物体から切り離されつつあります。
河野さんのお話には、レーベルの役割を考えるための要点が二つありました。一つは、音楽の質を保証してリスナーから信頼を得ること。そのためには、既存の音楽を深く知り、自分たちの立場をそのなかに位置づけなくてはなりません。そしてもう一つは、音楽が流通する仕組を理解し、そこで何ができるかを考えること。無数にある音楽に埋もれることなく、自分たちの音楽をアピールするために、多様な経路をどのように活用していくかが問われています。やみくもに発信するのではなく、むしろ安易に出さないことも、一つの戦略になり得ます。

京都精華大学で「レーベル運営者」を目指す
京都精華大学の音楽コースでは、音楽を作るだけでなく世の中に広めることも含めた総合的な視点から、音楽の“これから”と向き合うことを目指しています。
  • ①スタジオワーク実習でサウンドを追求
    プロの音楽制作に堪える設備を使ったスタジオ耳を鍛えることができます。ミュージシャン志望の学生はもちろん、レーベル運営やプロデューサーの立場を目指す学生も一緒に、サウンドの質を追求するための発想や技術を学びます。
  • ②「音楽を届ける」をテーマにした実習クラス
    クラスメイトや学外のアーティストの作品をリリースしたり、想定されるリスナーに合ったイベントや広報戦略を考えて実行したりするプロジェクトに取り組んでいます。
  • ③音楽ビジネスを目指すための講義・演習科目
    「著作権ビジネス」「マーケティング」といった実務に関わる科目では、学外研修やワークショップ形式の授業を展開。「ウェブデザイン」「映像編集」など、自分の手で音楽を発信するためのスキルも習得できます。


実習のプロジェクトで、あえて古いメディアにこだわってリリースしたカセットテープ

音楽コースのカリキュラム
実習
1年 つくる実習 (すべて必修) 届ける実習 (必修)
楽曲制作 / 録音 / 音楽分析 メディアを使った情報発信
2年 つくる実習 (クラス選択) 届ける実習 (必修)
(A) ソングライティング
(B) スタジオワーク
(C) DTM
音源リリース
ライブ・ワークショップ企画
イベント広報
3年 実習 (2クラスを選択)
ソングライティング / スタジオワーク / トラックメイキング / インタラクティブ表現 / 映像と音楽 / アーティストプロデュース / 音楽と言葉 / 音楽ビジネス
4年 卒業制作
演習

スキルを身につける
ボイス&リズムトレーニング
グラフィックソフト
エディトリアル
映像 / 写真
ウェブデザイン
プレゼンテーション
インタラクション など

専門性を深める
ミキシング
著作権ビジネス
音楽マーケティング
リズムアンサンブル
ライブPA / 批評・編集
グラフィックデザイン
ソーシャルデザイン など

講義

コース専門科目
ポピュラー音楽史
サウンドデザイン概論
民族音楽学
音楽理論・楽曲分析
作品作家研究
音響論 など

学部開講科目
文化産業概論
批評論 / 美学
メディア論
身体表現論
視聴覚表現論
広告文化論 など
※他学部開講科目も履修可能

前半の2年間の実習では、希望進路に関係なく全員が、音楽を“つくる”だけでなく“届ける”ことを学びます。3年次の実習では内容が専門化され、自分の目指す方向や身につけたいスキルに合わせてクラスを選択します。それと並行して、興味の幅を広げたり、やりたい仕事に必要なスキルを身につけたりするための講義・演習科目を履修します。そして4年次の卒業制作では、自分の決めたテーマにもとづいて作品制作やイベント企画、論文執筆などに取り組みます。

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