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Fashion

「なぜ?」からはじまるデザイン
今までにないものを創造するために
五十嵐勝大(proefプロデューサー)

「まだ誰も作ったことのない商品」を企画することは、ファッションデザイナーの醍醐味の一つと言えます。大阪を拠点とする「proef(プロエフ)」は、模様が入ったストッキングなどを展開し、タトゥーストッキングブームの火付け役となったプロダクトデザインブランド。プロデューサーの五十嵐勝大さんに、ファッションに興味を持ったきっかけや、ブランドを立ち上げることになった経緯、プロデューサーとして心がけていることを聞きました。
京都精華大学で講師も務める五十嵐さんが考える、「学生時代にしておくべきこと」とは?

取材=蘆田裕史(京都精華大学 ポピュラーカルチャー学部 ファッションコース 教員)

五十嵐勝大 いがらし・かつひろ
プロデューサー。新潟県出身。高校卒業後、イギリスに留学。ノッティングガムの大学で建築を学んだのちファッションに目覚め、ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズ・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインや、ベルギー・アントワープ王立芸術アカデミーでファッションを学ぶ。帰国後、専門学校を経て、2010年からデザイナー・斉藤愛美と共同でプロダクトデザインブランド「proef」を設立。
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LINESシリーズ「ARCH」

“次のブーム”に目をつける

「proef」は最初のプロダクトとしてストッキングにストライプや水玉などの模様をいれた商品を発表しましたが、それを発案したきっかけは何だったのでしょうか。

五十嵐 僕は昔から人間観察が好きで、街中で男女問わずその人の服装を眺めているんです。当時はトレンカが流行っていて、暑い時期でもみんな履いていたんですが、「暑い夏にはもっと透け感のあるものの方がいいんじゃないか?」と思っていて。そんなとき、現在は「proef」のデザイナーである斉藤が、当時通っていた学校の課題として制作した、肌色のストッキングに模様をつけたレッグウェアのデザインを送ってくれたんです。見た瞬間に「これだ!」と。ファッションの流行的にも、ちょうどトレンカが下火になってきて、でも次にブームが起こりそうなレッグウェアがないという時期だったので、タイミングも味方になりました。

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ブランド設立のきっかけとなったプリントストッキング:FLOCKYシリーズ。「グラフィックが崩れることがない」という特徴を持つ、フロッキープリントのストッキング。proefを象徴するプロダクトアイテム。

五十嵐さんは高校卒業後、イギリスとベルギーの大学で建築とファッションを専攻されたんですよね。海外ではどのようなことを学ばれたのでしょうか?

五十嵐 子どものころから「これは何でだろう?」などと、物事の理由や原因を考えることが好きでした。高校までは漠然と疑問を抱くばかりで、理論的に答えを導き出す方法を知らなかったのですが、海外の大学は「これをいいと思うのはなぜ?」といった自分の意見を求められる対話式の授業が多くて。そこで自分の「なぜ」に対して、感性的な理由を含めながらも理論的に考え、具体的な形にする力を養っていきました。

その後帰国して、文化服装学院に通いながらブランドをつくられたんですよね。日本の学校を卒業して海外の大学に進学する人はめずらしくありませんが、なぜ海外から日本の学校に進むことにしたのでしょうか?

五十嵐 ノッティンガムの大学で建築を学んでいた時期に、ファッション関係の本をよく読んでいたのですが、そこで出てきたフセイン・チャラヤンに興味を持ったんです。その後、セントラル・セント・マーチンズに移ってファッションを学び始めたんですが、服作りの技術がないから思うようなシルエットの物がつくれない……という挫折を経験して。帰国後は技術を学ぶため専門学校へ、という流れです。ただ、何とか課題は出しつつも読書に明け暮れるという不真面目な学生でした(笑)。今後どうしようかと悩んでいたときに斎藤からレッグウェアの案が送られてきて、「これに賭けよう」と。最初は機械を買うお金もギリギリという状況でしたが、3年生の後期には軌道に乗りました。当時は無地のストッキングがあまり売れなかった時代なのですが、その需要をつくり出すことができて、業界にも良い影響をもたらせたと思っています。
このストッキングは、自分が予測していたとおりに新しいアイテムとして社会に認められ、流行し、新たな市場が生まれ、コピー商品が出るほどになりました。それまで知られていなかったニッチなものが自分のプロデュースによって流行するという、商品を育てていく感覚におもしろさを感じます。

フセイン・チャラヤン(Hussein Chalayan)
キプロス出身のファッションデザイナー。ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズ・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザイン卒業。1994年に自身のブランドを設立。家具から変形する服や自動でフォルムが変わる服など、コンセプチュアルな作風を特徴とする。

買う人の想像力/創造力を信じる

ファッション関係の職業として、“デザイナー”という仕事はイメージしやすいのですが、“プロデューサー”は具体的な仕事を想像しにくいと思います。五十嵐さんは「proef」において、どんな役割を担ってらっしゃるのですか。

五十嵐 「ブランドの指針や、道筋を考えること」が主な仕事です。あとは、ブランド戦略や商品企画も担当しています。ブランドとして大事にしていることのひとつは、「人の想像力/創造力を信じる」こと。「このように着用してください」とイメージを押し付けず、またターゲット層を絞らずに商品を展開しています。実際、モード系からカジュアル系、アニメ系までジャンルは幅広く、年齢も10~50代までとさまざまな方に着用いただいています。
「コントロールしないコントロール」という戦略を掲げ、僕はその方針が揺らがないよう重石のような役割を果たしています。身につけてくださる方の“想像力”と“創造力”を大事にしたい。例えばマグネットのアクセサリーは、服やバッグなど、いろんなところに付けられますよね。また、「このイヤリングはブローチにしたらかわいいかもしれない」と使い方を自分でみつけてくださる方もいる。その想像力によって、一つひとつのアイテムの可能性が広がると思うんです。だから送り出す側として、制限はしたくない。

そういった理念を立てた上で、レッグウェアやアクセサリーを展開していらっしゃるんですね。そのほかにも靴のプロジェクトを進められていると伺いました。

五十嵐 はい。2年半ほど前から進めていて、そのプロジェクトにはブランドの理念が色濃く反映されています。靴はこれまで、一般の方が趣味で作れるようなものではなかったですよね。そこで「proef」では、自分で組み立てられる仕組みを考えたんです。そうすることで、ものに対する愛着や、靴と共有する時間をどのくらい提供できるか、というのがテーマです。

ブランドのプロデューサーになるためには、どんなスキルが必要なのでしょうか。

五十嵐 まずは、どんな物事に対しても「客観的に考えて判断し、責任を持つこと」ことです。自分が好きかどうかではなく、良いか悪いかをジャッジする必要があります。「ここは優れているから伸ばして、一方でここは弱いから強化しよう」など、理論的に判断できることが大事なんです。僕はファッションに限らずアートなど色々なジャンルのものに触れて、判断する“眼”を鍛えました。

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