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Fashion

企画から原価の管理まで、
幅広い「産地のデザイナー」の仕事
村田裕樹(hatsutokiデザイナー)

「自分が勝負できる領域」を考えた

村田さんがデザイナーの道に進まれたきっかけをお聞きできますか。昔から服が好きだったのでしょうか。

村田 高校時代から原宿で古着を買ったりはしていましたが、人と比べて服が大好きという自覚はありませんでした。野球少年だったから、日焼けして真っ黒なうえに丸坊主だったし、親も驚いたと思います(笑)。本格的に興味を抱いたのは、青山学院大学に通い始めてからです。大学近辺を散策しながら服を見るのが楽しくて、自分でも作ってみたくなったので、3年生のころに「繊維研究会」というサークルに入りました。ちょうどそのとき「自分はどの領域なら社会で勝負できるか」と考えていた時期だったことも関係していますね。高校までの野球部生活で、才能のある人にはかなわないことを肌で感じ、「適性のある領域で努力しないと成功できないな」と。僕は昔から細かい作業やものづくりが好きだったので、まずは手探りで革小物を作りはじめてみたんです。そうしたら意外と周りの反応が良くて、服作りにも取り組むようになりました。祖母が昔、仕立屋をやっていたので、夏休みに通い詰めてシャツの作り方を習ったりしていましたね。このころに初めて自分で作った服をモデルさんに着てもらったんですけど、すごく似合ってたし、嬉しそうにしてくれて。そのときに服作りの楽しさを実感し、デザイナーを志すようになりました。

ファッションを視野に入れはじめたのは、大学に入ってしばらくしてからだったんですね。「繊維研究会」はどんなサークルだったのでしょう。大学在学中はそのほか、何をされていましたか?

村田 「繊維研究会」は、作るだけではなくデザインの意味をひたすら突き詰めていくというサークルだったので、そこで“考える”というベースの部分が培われたと思います。最初はただ作っていただけだったのが、「デザインはただ形を捉えるものではない」という学びを得たり、1つの物事について多角的に議論したりしていました。4年生のころは、東京コレクションに参加しているブランドのアシスタントなどをしていました。そうした活動を通じて、生地の産地を意識するようになりました。ファッションブランド業界の動きと繊維業界の動きにどういう問題があって、どう解決していけばいいのかを考えるようになったんです。就職活動はせず、アルバイトとインターンに力を入れて、卒業後は専門学校に進学しました。また、生地の産地に個人的にアポイントをとって見学させてもらう、という活動も既にしていましたね。産地の組合の名簿をひとつずつ検索しまくったんです。

まずネットで検索、というのが現代っ子らしいですね(笑)。デザイナーを目指すにあたり、たくさんのブランドがあったと思います。なぜ産地で働くことを選ばれたのでしょうか?

村田 インターンをしていた頃、東京の若手ブランドが作る服に対して、「生地が一緒だとどれも同じに見えるな」と感じていたんです。若手ブランドだと、良い生地屋と太いパイプを持っているところなんてそうそうないですし、コスト的に別注も無理です。既製の生地を買って、カッティングやシェイプ、プリントで差を付けることしかできないと専門学校時代に気づいて、自分はまず「生地屋とパイプをつくろう」と思ったんです。そこにプラスして、どんな会社に就職したら将来デザイナーとしておもしろい仕事ができるかを想像したら、「産地にあって、自社ブランドを持っている・または持ちたいと思っている会社」だなと。WebサイトやSNSを活用している会社は、外部に向かって情報を発信していこうという意向があると思い、そうしたところを選んでいました。その過程で、「hatsutoki」の存在を知りました。社員募集はしていなかったのですが、いろいろとリサーチした結果、「僕が活躍できる余地はあるんじゃないか?」と思い、まずはTwitterでコンタクトをとり、社長に会いに行きました。

必要なのは「ビジョンを描く力」

デザイナーにも色々なタイプがありますよね。大企業のブランドでは予算の管理やマーケティングは分業になりますが、小規模なブランドだとそうではないですよね。その分、ブランドとして“小回り”がきくという自由度もあると思います。村田さんは後者ですが、学生がそういった道を目指すとしたら、どういったスキルや能力が必要になるでしょうか。

村田 小規模なブランドのデザイナーとしてやっていくのであれば、クリエイティブであることはもちろんですが “システム”をつくる能力も重要です。システムというのは、ひとつ具体例を挙げると「自分がいなくなっても、ブランドの中にエッセンスや方向性が残り続ける」こと。これは僕が「hatsutoki」の理想像として目指している領域でもあります。そのために必要なのは、広い視野とビジョンを描く力です。例を挙げると、西脇は最近「ファッション都市構想」という計画を掲げていて、僕もアイデアを出しているんですが、ひとつの案をポンと投げるだけじゃダメなんです。「そのアイデアは、構想のなかでどのように機能していくのか」まで言えないと意味がない。これはブランド単位でも同じだと思います。

それができる人材になるためには、学生時代にどんな経験をしておくといいですか。勉強しておくべきことや、やっておくべきだと思うことを教えてください。

村田 やはり「考える力」を養うことが大事だと思います。学生でもできる訓練としては、例えば「どうして今、ニューバランスが流行っているのか」とさまざまな現象を総体的に捉えながら熟考してみるといいのではないでしょうか。また、他人と議論を重ねることも有効です。僕の場合はサークルなどの活動が身になりましたが、もし周囲に誰もいなくても、そういう“場”を探して自分から飛び込んでいく。今は調べるだけなら簡単にできる時代なので、実際に行動に移すフットワークの軽さは重要です。触れてみて実感する生地のすごさなど、生で見ないとわからないことがたくさんあります。
もうひとつは、月並みですが読書ですね。僕も大学の図書館にこもって、美術関係の本を端から端まで読んでいました。あと、僕は経済学部だったので、その関連書で学んだことは今も役立っていて、先ほど言った「広い視野で見る」ことにも繋がっています。

さきほど“検索”の話が出ましたが、例えば「産地 ブランド」で調べればたくさん出てくる。でも、そのなかで“いいもの”を見つけ出すには知識を持っていなければならず、読書からの吸収は有効ですね。最後に、村田さん自身の今後の展望を聞かせてください。

村田 産地ブランドで成功したケースはまだないので、最初の成功例になれたらいいなと。また、西脇の職人さんは、業界の行く末に悲観的な人が多いので、ポジティブになれるよう、いい動きをつくりだしていきたい。「hatsutoki」を事業として盛り上げ、10年、20年と続けていきたいと思っています。

インタビュー後記/蘆田裕史(京都精華大学 ポピュラーカルチャー学部 ファッションコース教員)

ブランドの運営ができるデザイナーになるには

ブランドと一口に言ってもさまざまなものがあります。パリコレクションや東京コレクションなどに参加しているような、雑誌や新聞で目にするブランドだけがすべてではありません。「hatsutoki」のような、地方に根ざして魅力的な服作りを行っているブランドも数多くあります。現在、産地は人材不足と言われていますが、逆に考えればこれから世に出る若いデザイナーが活躍する場がたくさんあるということです。
村田さんは「服は生地からできている」という誰もが知っていることに着目しています。どんなに料理の腕があったとしても、素材の質が悪ければおいしいご飯にはなりません。それと同様に、服を作るのにもいい素材=生地が必要です。村田さんは、産地で働けば、身近なところでいい生地を作れるというごくシンプルな答えを導き出しました。

京都精華大学で「考える力」をもつデザイナーを目指す。
京都精華大学のファッションコースでは、服のデザインの方法だけでなく、村田さんが言うところの「考える力」を身に着けることを目指しています。
  • ①素材から考えるファッションデザイン
    生地はファッションデザインの出発点。京都精華大学のファッションコースでは生地=素材を学ぶことを重視しています。大学や専門学校の授業では小売店で買った生地を使って制作を行うことがほとんどですが、ここでは生地をメーカーから取り寄せたり、ときにはオリジナルの生地を作ったりすることも。
  • ②時代や社会を分析する力を身に着ける
    今どのような商品を作るべきなのか、これからファッション業界では何が重要になってくるのか。その答えを考えることは、時代と社会を分析することなしにはできません。実習だけでなく多彩な講義科目をもとに分析力を高めます。
  • ③商品を作るところから届けるところまで、そのすべてを学ぶ
    商品は作って終わりではありません。それを雑誌やショップ、あるいは顧客へと届けようとしなければ、誰の目にも触れません。「ファッションビジネス」や「ブランドPR(広報)」など、ファッションを届けるためのスキルも習得できます。


素材について体験的に学ぶために、自分たちで生地を織ったり染めたりする授業もある。

ファッションコースのカリキュラム
実習
1年 つくる実習 (すべて必修) 届ける実習 (必修)
ファッションデザイン
パターンメイキング / 縫製
デザイン論
2年 つくる実習 (必修) 届ける実習 (必修)
ファッションデザイン 雑誌編集・展覧会企画
3年 実習 (2クラスを選択)
モデリング(服飾造形) / コレクション制作
ブランド設計 / 展覧会・ショップ企画
4年 卒業制作
演習

スキルを身につける
グラフィックソフト
エディトリアル
映像 / 写真
ウェブデザイン
プレゼンテーション
インタラクション など

専門性を深める
縫製 / CAD
パターンメイキング応用
ファッションマーケティング
ニットデザイン
ブランドPR / 編集
グラフィックデザイン
ソーシャルデザイン など

講義

コース専門科目
ファッション史
ファッションデザイン概論
日本服飾史
ファッション批評
作品作家研究
素材論 など

学部開講科目
文化産業概論
批評論 / 美学
メディア論
身体表現論
視聴覚表現論
広告文化論 など
※他学部開講科目も履修可能

前半の2年間の実習では、希望進路に関係なく全員が、ファッションを“つくる”だけでなく“届ける”ことを学びます。3年次の実習では内容が専門化され、自分の目指す方向や身につけたいスキルに合わせてクラスを選択します。それと並行して、興味の幅を広げたり、やりたい仕事に必要なスキルを身につけたりするための講義・演習科目を履修します。そして4年次の卒業制作では、自分の決めたテーマにもとづいて作品制作やイベント企画、論文執筆などに取り組みます。

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