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Fashion

ファッション業界に欠けている
批評/ジャーナリズムを確立するために
芳之内史也(編集記者)

論理的に考え、本質を見抜く

メディアにかかわる記者・ジャーナリストには、どんなスキル・能力が必要でしょうか。

芳之内 どの仕事でもそうかもしれませんが、“本質を見抜く”ことですね。これは、いかに論理的に物事を考えるか、ということにも繋がってきます。例えば大企業が中国の支社を閉鎖したというニュースがあったとします。普通はその事実のみ報じて終わりですが、その先に何があるのかまで考える。インドでは外国直接投資においての厳しい規制・禁止項目があり、日本企業の進出が容易ではなかったのですが、去年の11月に小売業者の現地調達義務を緩和するなど外国からの資本を呼び込む方向にシフトしてきています。社会情勢を踏まえ周辺知識を知っていると、「中国は成熟しきったから、次インドの方を向いているのでは」と推測でき、しかるべき人物や組織に取材して、深堀りした記事を出すことができる。論理的に考えると、「これって、こういうことでは?」という本質にぶつかるときがあります。これはベテランになっても養っていくべきものだと思います。

本質を見抜くスキルを習得するためには、何を勉強したらいいのでしょう。

芳之内 僕の場合はディベートが役に立ちました。大学3、4年に2年連続で「証券ゼミナール大会」というディベートの全国大会に出たんです。「論文ではこう書かれていますが、違うんじゃないですか」などとツッコまれる。3年生のときは負けてしまいましたが、訓練して、4年では優勝できました。ロジカルに考えた上で人を説得するという能力は、記事執筆にも必要な能力ですし、ビジネスや日常生活にも役に立つから、学生のうちに養っておくといいと思います。ファッションの細かい専門知識は働き始めてからでも身につけられるので、学生時代は人間としての力を高めることのほうが大事かなと。

近年、「ファッションを学んでいるのに、ブランドに詳しくない学生が増えている」と言われているのですが、僕はけっこうそのことを肯定的に見ているんです。特定のブランドに対する思い入れが強すぎると、視野を広く持って客観的にものを見ることができなくなったりすることもありますから。

芳之内 そうですね。進路に悩む高校生は「ファッションを学びたいけど詳しくない」ということにコンプレックスを抱く必要はまったくないと思います。

記者の仕事でいちばん楽しいことはどんなことでしょう?

芳之内 色々な立場の方と知り合えたり、記者以外には入れない場所に取材に行くことはとても刺激になります。広告代理店に足を運んだり、アート関係の会社と関わったり……さまざまな職業の方と仕事をできるのは、メディア関係ならではのことだと思います。 また業界外の人には馴染みにくい堅いファッションニュースでもSNSで記事を拡散されて多くの反響が得られると、「自分の仕事の重み」を感じますね。

インタビュー後記/蘆田裕史(京都精華大学 ポピュラーカルチャー学部 ファッションコース教員)

論理と言葉でファッションを考える

ファッションを仕事にしたいと思ったとき、まっさきに頭に浮かぶのはデザイナーだと思いますが、ファッションに関わる職業はもちろんそれだけではありません。針と糸の代わりにペンと言葉でファッションを人に届ける記者やジャーナリストもそのひとつです。芳之内さんが語るように、ファッションのジャーナリズムはまだまだ未開拓の領域です。すでにジャーナリズムが成立している他のジャンルよりも、取り組み甲斐があるのではないでしょうか。
また、芳之内さんは記者にとって重要な能力のひとつとして論理的な思考力を挙げていますが、これは何も記者やジャーナリストのみに当てはまる話ではなく、デザイナーにとっても大切な力です。ファッションはしばしば「感覚」が重要だと言われますが、感覚だけで何十年も仕事ができるほど世の中は甘くありません。そこで必要になってくるのが論理的な思考力です。論理的に物事を考えられるようになれば、服作りにおいてもビジネスにおいても強力な武器となるでしょう。

京都精華大学で「記者/ジャーナリスト」を目指す
  • ①論理的なものづくり
    京都精華大学のファッションコースでは、記者やジャーナリストになりたい人もまずは服作りの技術を学びます。とはいえ、ただ服の作り方を学ぶわけではありません。なぜこの素材を使わないといけないのか、なぜここにポケットが必要なのか、など常に論理的に考えながら作る方法を学びます。
  • ②分析力と思考力を身に着ける
    「本質を見抜く」ためには、分析力を鍛えなければなりません。なぜ今このような出来事が起こっているのか、この製品は10年後どうなっているのかなど、リサーチを踏まえて自分の頭で考えるトレーニングを実習で行います。
  • ③多様な文章を書ける人に
    論文やレポートのような堅い文章を書く授業、文章で物事を描写する技術を現役の小説家から教わる授業、あるいは自分たちで文章を書いて冊子を作る実践的な編集の授業など、さまざまな文章の書き方を学ぶことができます。


グループごとに冊子を作る編集の授業

ファッションコースのカリキュラム
実習
1年 つくる実習 (すべて必修) 届ける実習 (必修)
ファッションデザイン
パターンメイキング / 縫製
デザイン論
2年 つくる実習 (必修) 届ける実習 (必修)
ファッションデザイン 雑誌編集・展覧会企画
3年 実習 (2クラスを選択)
モデリング(服飾造形) / コレクション制作
ブランド設計 / 展覧会・ショップ企画
4年 卒業制作
演習

スキルを身につける
グラフィックソフト
エディトリアル
映像 / 写真
ウェブデザイン
プレゼンテーション
インタラクション など

専門性を深める
縫製 / CAD
パターンメイキング応用
ファッションマーケティング
ニットデザイン
ブランドPR / 編集
グラフィックデザイン
ソーシャルデザイン など

講義

コース専門科目
ファッション史
ファッションデザイン概論
日本服飾史
ファッション批評
作品作家研究
素材論 など

学部開講科目
文化産業概論
批評論 / 美学
メディア論
身体表現論
視聴覚表現論
広告文化論 など
※他学部開講科目も履修可能

前半の2年間の実習では、希望進路に関係なく全員が、ファッションを“つくる”だけでなく“届ける”ことを学びます。3年次の実習では内容が専門化され、自分の目指す方向や身につけたいスキルに合わせてクラスを選択します。それと並行して、興味の幅を広げたり、やりたい仕事に必要なスキルを身につけたりするための講義・演習科目を履修します。そして4年次の卒業制作では、自分の決めたテーマにもとづいて作品制作やイベント企画、論文執筆などに取り組みます。

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