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Fashion

服で感動してもらうために
顧客目線の服作り
中山路子(MUVEILデザイナー)

ファッションの仕事というと、まず思い浮かぶのが「デザイナー」という仕事です。デザイン画を描いて、生地を選んで……なんてイメージがありますが、実際はどんなふうに仕事をしているのでしょうか?2007年に、遊び心とシンプルさを兼ね備えたブランド「MUVEIL(ミュベール)」を立ち上げ、デザイナーとして活躍される中山路子さんに、洋服作りのプロセスや、ファッションデザイナーに必要な「思い」についてなど、お話をうかがいました。

取材=蘆田裕史(京都精華大学 ポピュラーカルチャー学部 ファッションコース 教員)

中山路子 なかやま・みちこ
デザイナー。東京都出身。2000年に服飾系の専門学校を卒業。デザイナーのアシスタント等を経て、2002年から冨田靖隆とともにブランド「MOSSLIGHT(モスライト)」を立ち上げる。2007年春夏に「MOSSLIGHT」を解散し、同年秋冬に「MUVEIL」を発足。同ブランドのデザイナーとして活躍するほか、京都精華大学にて講師もつとめる。
GALLERY MUVEIL

MUVEIL 2016 SS Collection “Geeky inteligence woman going safari”

ファッションとは、人の気持ちを変えられるもの

ファッションデザイナーは、多くの学生が憧れている仕事です。しかし、実際に何をしているのか、実はよくわかっていないというケースもあります。そこで、中山さんがファッションデザイナーとして何を大切にして、どんなふうに働いているのかをうかがいたいと思います。
中山さんはそもそもどういうきっかけで、ファッション業界の道に進んだのですか?

中山 高校3年生のときに、「お洋服ひとつで、こんなに良い気分になれるんだ!」と思った瞬間があったことがきっかけです。こんなに人の気持ちを変えられるんだ、ということにドキドキを覚えて、セレクトショップ巡りやブランドチェックに夢中になって。洋雑誌でファッションのポートレートを見て「実際に着なくても、想像だけで高揚感を与えてくれるものなんだな」って気づいたり、音楽や映画の世界観から影響を受けたお洋服があったり、なんて幅広くて素晴らしいんだろうと、どんどんお洋服の世界に吸い込まれていきました。
その時点では「デザイナー」「パタンナー」など業種までは決めていなくて、どんなことでもいいから、お洋服にかかわる仕事がしたい、という思いで服飾系の専門学校に入りました。卒業後に縁あって大手アパレルのデザイナーのアシスタントとして雇っていただいて、そこで働きながら勉強して、友人と趣味で「MOSSLIGHT」というブランドを立ち上げて、靴のリメイクなどをしていました。そのブランドを2007年に解散して、半年後にひとりで「MUVEIL」をつくりました。企業で仕事をしながら、休日には自分で作って……という日々を過ごし、「MUVEIL」で一本でやっていけるという自信がついてから独立しました。今年で8年目になります。

最初のお仕事はデザイナーのアシスタントということですが、学校で勉強するなかで、目標が「デザイナー」に絞られていったのでしょうか。

中山 専門学校の授業内容がパターンとデザインの半々だったので、就職活動もデザイナーかパタンナーで受けることにしたんです。実際にデザイナーになってみて、こちらのほうが私にはおもしろいと気づいたんですけど、それは結果論であって、「適性があるかどうか」を考えたり、迷ったりはしませんでした。「これしかない!」と、ただただ打ち込んできただけで。

「世界観」を伝えることも重要な仕事

デザイナーとして、普段はどんなお仕事をされているのでしょうか。また、「MUVEIL」というブランドでは何を大事にされていますか?

中山 お洋服をつくるだけじゃなく、ブランドとしての“世界観”を打ち出すことも大事な仕事です。洋服作りがベースにはなりますが、プレスの方と組んで「MUVEIL」の雰囲気を正しく伝えるためのメディア展開を考えたり、セールスの方とどのセレクトショップがマッチするかを相談したり、工場の方にブランドのコンセプトを説明したりと、細かい業務がたくさんあり、コミュニケーションをとりながら決めていきます。

実際のプロセスを話すと、まずはテーマを思い描いて、具体的なものにするためにリサーチをします。そして、イメージマップに落とし込みます、それをチームと共有して、どの工程をどのスタッフにお願いするか、刺繍やプリントのイメージを相談しながら進めていきます。「次はどんな世界観にしようかな」と考えているときが、いちばん楽しいですね。他のブランドだと、社会情勢などの角度からリサーチすることもあると思うのですが、「MUVEL」は“感じて”もらうことを意識しているので、イメージを重要視します。

また、私とスタッフの情熱が化学反応を起こして良いものに仕上がっていくことも、ファッションデザイナーとしての喜びのひとつです。一人でパターンから何から最後まで作り上げるファッションデザイナーもいますが、うちの場合は一人でできることは限られています。チームで動かないと、ひとつの“世界”を完結することができないんです。


MUVEILの世界観を伝えるイメージブック

さまざまな人を束ねながらひとつのものを作り上げるというのは、映画監督のような立場に近いですね。「MUVEIL」を通じて、またはファッションデザインを通じて、中山さんが伝えたいイメージはどんなものでしょう。

中山 冒頭でもお話しした、私がお洋服に対して抱いた“感動”を、多くの方に感じてもらいたいと考えています。ブランドによってコンセプトはさまざまですが、「MUVEIL」の場合は、クスッと笑える要素とか、ドリーミーな雰囲気を大切に、ピュアな気持ちで着ていただけるようなデザインになったらいいな、と思います。一冊の本をつくるようにシーズンごとにテーマを設けて、世界観をパッキングして送り出せたらいいなと。


MUVEIL 2016 SS Collection “Geeky inteligence woman going safari”

近年はファストファッションが主流になって、業界に対して「服が売れなくなった」など危機感やネガティブな印象を抱いている人も多いですが、中山さんはどう見ていらっしゃいますか。

中山 ファストファッションが悪いとはまったく思いません。どこにでもある便利なものは、安いほうがいいですよね(笑)。我々のようなファッションブランド側としては、より個性が大事になる時代がやってきたのかなと。共存は不可能じゃないと思います。うまく住み分けができればいいんじゃないでしょうか。

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