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先生にインタビューで聞く人文学部の学び
細川 弘明 インタビューテーマ 「モノ追跡」で世の中が見えてくる 教授/先住民族の環境知識、土地権回復運動、国立公園共同管理などを研究。主な研究地域はオーストラリア。東南アジア、中南米での調査経験もあり。

先生の専門を教えて下さい。

本来の専門はオーストラリアの先住民族です。アボリジニの言葉、暮らし、歴史に興味があり、ゆっくり研究できたら良いなと思っているのですが、オーストラリアでは日本企業による鉱山開発・観光開発がアボリジニの土地で進められていることが多い。だから、土地権紛争についての調査も始めました。いまはこの環境・開発問題に巻き込まれたような状態で、こちらが研究の中心になっています。

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日本では先住民族に「癒し」的な発想で関心を持つ人が多くて、社会問題に目を向けないことが多い。そのズレが日本の問題だと思います。先住民族がいれば必ず土地問題が起こるというのは世界の常識。でも日本では「えっ?」という反応になる。それは日本の教育の問題です。みんながそれを考えだしたら、アイヌから奪った土地を返すべきかどうかという話になるじゃない?だからある種のタブーになっているんです。けれど、避けられた問題はいずれ自分に何らかの形で跳ね返ってくると僕は思うんですよ。そのことを自分で考えたり、情報の裏や背景を読んだりする力を付けることが、学生にとって重要なことだと思う。

先生から見たセイカの学生ってどんな感じですか?

僕はセイカの学生が結構好きです。粗削りだけれど非常に良いものを持っている人が多い。これまでいくつかの大学で教えてきたけど、ここの学生が一番おもしろい。「こんな人にそんなことができる訳がない」と思っていたことができてしまうとか、「大化け」する人が多い。これはすごく魅力的。でも、化けるためにはある程度ヒントや刺激が必要だから、それを出していくのが僕らの仕事だと思ってます。

なるほど。では授業やゼミでは学生にどういうことを教えていますか?

僕は特に南北問題、経済、社会や環境など「つながり」を意識してもらうことを重視してやっています。ゼミでは「一つのモノを決めてそこからのつながりを徹底的に調べてごらん」というやり方をしています。「モノ追跡」というんですが、それをやると世の中全体に関わる"流れ"に触れることになる。どこにどのような問題点があるか見えてきやすいんですよ。
あるゼミ生が取り組んだのは「ネギ」でした。ちょうどその頃は、中国産と日本産のネギがせめぎ合っている状態でした。彼女は中国までは行けなかったけど、日本の産地や市場や農協を巡り歩いていった。農業や食料自給率、輸入などをテーマにすると、みんな抽象的なことから考えてしまうけど、僕のやり方は「具体的なモノを辿れ」。だから「農業」という大きなくくりではなく「ネギ」でも「イモ」でも良いから、モノそのものを徹底的に辿ることを勧めています。ひとつのモノを知るために、現場に行ったり関係者から話を聞いたりすることで、全部が見えてくる。
ネギを研究していた彼女も、リサーチが進んでくると「ネギがわかったら、今の日本の農業の問題が全部わかるんです!」と言うようになりました。それは彼女自身が彼女なりに答えを見つけていくプロセスを踏んでいるから、そう言えるようになったんです。彼女の場合、勢いがついて卒業後、農業を始めることになったんだけどね(笑)。
僕のゼミでは、食べ物についてテーマにすることを勧めています。いま特にサカナに注目中! 食べ物の問題は、どんな職業に就こうがどこに住もうが、自分についてまわること。だから、人任せにせず自分で考えて判断する力を持っていると、考えの違う人と出会った場合にちゃんと話ができる。それを持っていないと大きな声の人に呑みこまれてしまう。それは怖いことでしょう?

hosokawa_02細川先生はNPOアジア太平洋資料センター(PARC)の代表を務めています。PARCの姉妹団体パルシックが扱うフェアトレードのウバ紅茶。有機栽培の茶葉だけあって、ものすごく美味しかったです。(www.parcic.org)

EDITOR

五十嵐 みき

五十嵐 みきMIKI IGARASHI

人文学部 2回生

私は前期、先生の「南北問題」を受講していました。この講義は、環境未来コースの授業なのですが、なぜ「南北問題」が環境の授業なのか、最初はとても疑問でした。しかし授業が進むにつれて、南北問題には農業、食糧の問題が大きく関わっていることを知りました。単に先進国と発展途上国の格差問題、と抽象的に思っていた南北問題を具体的に捉えることができ「私がこの問題を解決するためにはどうしたら良いか?」と考えられるようになりました。とりあえずコンビニでフェアトレードコーヒーを買っていこうと思います。

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