日本の大衆文化を知る
精神科の救急医療に携わるほか、足掛け20年間、思春期の医療に関わってきました。また、21世紀から必然的に僕のテーマになっているのは、精神医学や心理学と、身体技法との関係。身体と精神が大きなテーマです。サブカルチャーを含んだ文化全般を心理分析的にどう見ることができるか、という切り口で批評やコメントを求められるケースが非常に多いですね。
これまでも、小説や映画、マンガなどのストーリーや各キャラクターの位置づけを分析する人はいたかもしれない。けれど僕は、人物がなぜその行動をとるに至ったのか、あるいはなぜその行動をとらなかったのか、ということから逆にストーリー全体を見ていく方法を無意識にも意識的にもよくとりますね。
体癖論は、たいへん広大な体系なのですが、性格や気質、体質や感受性を含む人間個々の違いをいくつかに大別しています。たとえば「あの人こんな性格やと思わへん?」とか「あの人と私、気が合うねん」と言う場合、私たちは極めて感覚的に判断しているんです。でもそこに一定の"共通言語"をもつと、他者と判断基準や認識を共有できる。
先生は多くの本を書かれています。特に「キャラッ8」は骨格や体型から性格を判断するという診断法を知る上で役に立つ一冊。
でもそういった分類法に縛られろ、と言っているのではありません。人の行動を理解するためのひとつの基準になるということです。人間について、自分の経験だけから考えていると、かえって狭い固定観念に縛られやすいんです。ですから仮に10に性格・気質を分類して、
もう少し無意識的な思い込みから自由になろう、ということです。
"共通言語"がなかったら、言葉は通じても内容が通じていないことがよくあるんです。「あの人は怒りっぽい人だ」と誰かが言ったとする。それは、「キレやすい」という意味で怒りっぽいのか、普段から不満を言い続けている不満屋なのか。いろんな怒りっぽさがあるでしょう。同じ言葉を使っているけれど、実はポイントがずれていることがあるんですよ。そこで、いったん体癖論の中で「こういう傾向の人だ」とある程度つかむと、例えば五種的(『体癖論』で用いられる分類の一つ)な怒りっぽさ、七種的な怒りっぽさと個々に分析ができるんです。そうすると相手とのより精確な"共通言語"ができて、言っている内容のすり合わせがしやすいわけです。
研究室で行われている補講の様子。皆さん真面目に話を聴いています。
心理学の基盤はなかなかないんです。だからこの小さな頭で、基盤を作りつつ応用をやるという離れ技を大学でやっている(笑)。一時期、90年代くらいに心理学ブームが大学で起きていろんな大学で心理学科が創設されたように記憶しています。ところが社会に出てからその心理学を活かしている、あるいはその勉強を趣味としてでもやり続けている人は極めて少ない。それはやはり、心理学に「基盤」がないからだと思う。心理学科を出て何ができるかといえば、臨床心理士の資格をとってカウンセラーや臨床心理士になる以外、イメージがわかないでしょう。
でも基盤をしっかり持っていたら応用が利くよね。どんな職業についても、ある程度活かせる素地ができると思う。例えば「上司は気質的にはこう見える。そうするとこんなアプローチをしてみようかな」ということが見えてくる。性格分類に寄りかかって使うのではなく、自分の先入観を一旦客観視することができるための方法論にしてほしいんですよ。
五十嵐 みきMIKI IGARASHI
人文学部 2回生
名越先生の「こころと思想」を受講中です。実習形式で行われる集中授業なので、みんなで毎回真剣に一つの題材について分析、意見を交わしあっています。
いろんな意見・価値観に触れることで、自分の物の見方が変化していくのがわかっておもしろいです。
TV出演や雑誌連載など多忙な先生。この京都精華大学で教授をしている理由は「縁じゃないかな」という先生に、ぜひ縁を活かして会いに行ってください。
名越 康文
教授人を理解する共通言語としての気質論
五十嵐 みき
人文学部 2回生