2018年度入学式を挙行しました

2018 年 4 月 9 日

京都精華大学 2018年度入学式
ウスビ・サコ学長

4月1日、「2018年度京都精華大学・大学院 入学式」を挙行しました。今年度は777人が入学。ウスビ・サコ学長は式辞で、本学の教育理念である「人間尊重」と「自由自治」に触れながら、新入生に歓迎の言葉を述べました。(学長式辞全文)
また、来賓を代表して、アヤ・チャム・ジャロマリ共和国大使からの祝辞、新入生代表の松村和音さんから入学の辞が述べられました。さらに、新入生全員に詩人・谷川俊太郎氏が翻訳した『世界人権宣言』、同氏と教職員のメッセージを収めた冊子が配布されました。

あわせて開催された「2017年度京都精華大学学長表彰」表彰式では、学長賞としてマンガ学部4年生の杉浦沙貴さんとマンガ学部教員の田中圭一。卒業生功労賞として人文学部卒業生の矢吹康夫さんがそれぞれ表彰されました。
(受賞者紹介)

京都精華大学 2018年度入学式
京都精華大学 2018年度入学式
入学の辞 新入生代表 松村和音さん(マンガ学部)

京都精華大学 2018年度入学式
来賓からの祝辞 アヤ・チャム・ジャロ マリ共和国大使

京都精華大学 2018年度入学式
学長表彰受賞者 左から矢吹康夫さん(人部学部卒業生)、田中圭一(新世代マンガコース教員)、杉浦沙貴さん(京都精華大学京北宇津宝さがし会代表・マンガ学部4年生)

学長式辞

Aw niche Aw Bissilah Aw Bora aw Kasso Aw nana Aw kasso(バンバラ語)
みなさんより数時間前、学長に就任したばかりの、ウスビ・サコです。

ご入学誠におめでとうございます。ご来賓のみなさま、ご列席のみなさまとともに、ご入学を心よりお祝い申し上げます。保護者のみなさまにも心よりお祝いを申しあげます。京都精華大学の共同体は、みなさんの入学を歓迎して、配布されているLOVEの冊子に、みなさんへのメッセージや、世界人権宣言を日本語訳した詩人の谷川俊太郎のみなさんへの詩が記載されているので、是非、読んでください。

本日新入生として、700名以上が、京都精華大学の仲間に加わり、そのうち100名以上が諸外国からこられています。新入生の約20%弱が留学生です。
みなさん、ようこそいらっしゃいませ。

みなさんが入学する京都精華大学は、1968 年に開学し、今年でちょうど創立50 周年を迎えます。設立当時、世界各地で古い知性が否定され、学生たちのプロテストによって、世界中の大学が揺れ動いていました。初代学長である岡本清一は、学長就任にあたり、「教育の基本方針に関する覚書」を提示しました。この覚書には、「人間尊重」「自由自治」を基盤とし、新しい人類史の展開に対して責任を負い、世界に尽力する人材の育成を使命とする京都精華大学では、学生、教員、職員がすべて人格的に平等であり、全員が大学の創造に参加する」とあります。
みなさん、様々な期待と不安を持って大学あるいは大学院に進んだかと思います。大学という場は、そこに身を置くことによって、他者との関わり合いを学び、自由を体現し、「自己」の確立を目指すところです。それを達成するため、専門知識は、もちろんのことながら、教養知を身につけることが非常に重要であります。「表現の総合大学」である京都精華大学はリベラルアーツ教育を基盤としています。リベラルアーツ教育とは、人間の過去と現在を学び、より良い未来を想像するために必要な学問体系であります。
みなさんの大学生活は、「私は何者か?」という問いから始まります。他者との違いを認識し、尊重する姿勢を学び、社会へと出るための自分の価値観を形成するのです。つまり、大学は「人間性」を学ぶ場であります。
ドイツ出身の哲学者、思想家であるハンナ・アーレント(Hannah Arendt)は人間性を次のように述べています。「『人間性』とは、人間同士が『互いに異なった個性をもつ人間である事を認め会う事』。そして全体主義とはその人間性を破壊するもの」だと定義しました。京都精華大学は、アーレントと同様に個々の人間の尊重を前提にし、全体主義を否定する立場をとります。
京都精華大学の理念にある「人間尊重」について、みなさんと考えてみたいと思います。私は遠いところからきております。遠いと言うのは、距離はもちろんのことですが、私の生まれ育った環境との違いのことです。私の出身国であるマリ共和国は1960年にフランスから独立を果たした国であります。小さい頃、フランス語を公用語とした学校に通い、家や地域では母語と民族のことばで日常生活を送ってきました。学校の教育制度はフランスの植民地時代に確立された文明化の政策を引き継いだものですが、地域では様々な民族、宗教の人々と共存して生活をしてきました。こうした環境の中で育った私が、本日、みなさんと協働で大学を運営することになります。私はマリの教育課程を経て、持続的に考えてきたのは、自分の可能性を信じ、人間としての自由と自立を求めることです。自分の可能性を信じれば、生まれ育った環境が異なっても、人間同士の協働は可能なはずです。しかし、人間同士の不調和によって、世界中で様々な問題、アラブの春、シリア騒乱(そうらん)、無差別テロなどが多発しています。今日、世界中で近代システムのモデルとされている国民国家の限界が現れており、価値観や文化の違いによって様々な問題が発生しているのです。これらの影響が及ぶ範囲で、十分な教育が受けられない子どもが増加し、「人格がある人間」と見られない人々も増加しています。つまり、みなさんと話をしているこの瞬間にでも、その人格が否定され「奴隷」として、人間がどこかで売買されています。近代システムが我々の可能性を拡大する一方で、私たち人間としての存在を脅かしているように思います。

京都精華大学が考える「人間尊重」は、この大学の中だけに留まるものではありません。岡本清一初代学長の「教育の基本方針に関する覚書」にも「人間を尊重し、人間を大切にすることを、大学の教育の基本理念とする。この理念は日本国憲法および教育基本法を貫き、世界人権宣言の背骨をなすものである。」と書いてあります。京都精華大学は世界人権宣言を尊重するということです。
本日、みなさんに配布されている「世界人権宣言」の冊子に描かれている内容の作成にも関わったエレノア・ルーズベルトのことばから次のような抜粋を紹介します。「人権はどこから始まるのでしょう。小さな場所からです。 家の近くのとても小さくて世界地図では見えない場所からです。でもそうしたところが私たちの住んでいる世界なのです。私たちが住んでいる地域、通っている学校、働いている工場や農場や会社。これらのところが、男女・子どもを問わず、すべての人が正義や機会、 人としての尊厳を平等に差別なく求める場所なのです。もしこうした権利が、このような小さな場所で意味を持たないのなら、 人権が意味を持つところなんてどこにもありません。小さな場所で人びとが関心を持って実行しないなら、 もっと大きな場所で人権が保障されるようにはならないでしょう。」
みなさん、個人個人の小さな行動と姿勢が世界のすべての人々の人権確立に繋がるかもしれません。

続いて、京都精華大学の理念にある「自由自治」の「自由」について話をしたいと思います。
どの時代にも「自由」の問題があり、京都精華大学はそれに向き合い続けてきました。「自由」は与えられるものではありません。自身の行動、姿勢と価値観で獲得するものです。みなさん一人ひとりが自分の生き方に哲学を持っていくことが「自由」への道を開いてくれるかぎになります。
みなさんは、これから始まる大学生活において、自分の考え方を確立していくことによって楽しい大学生活を送ることができるのです。その過程で理想を持つことも重要ですが、ビジョンを持って大学生活を送って欲しいのです。また、自分の生活や時代に対して、ビジョンを持つことが、みなさんの責任でもあります。しかし、大学生活の中、物事を進める際、批判的思考(クリティカル・シンキング/critical thinking)を持って判断をして欲しい。文学研究者のエドワード・サイードは、「この世界に希望をもつためには批判し続けることこそが必要だ」また、「状況がどんなに困難に見えても、必ず別の道はある」とも述べております。
みなさん、大学生活の中で、すべてがうまくいくはずはありません。キャンパスライフ、授業の課題や論文執筆などで困難にあった時、先が見えなくなった時、必ず別の道があると信じて、行動をしてください。決して、自分に負けてはいけません。私は27年間、日本で生活をしている中、紆余曲折はありましたが、困難にあった時、常にその原因を問いただしてきました。また、自分の常識と当たり前にまで疑問を持つ場合もありました。解決の道筋が見えない時、周りの仲間や人々に聞いて、助言ももらいました。キャンパスの中で一人ではないこと、また他の人と協働すれば、自分に可能性に気づくかもしれません。

21世紀になって、急激に人工知能の研究が進み、ロボットは単純作業を実行するだけでなく、学習することさえできる時代になっています。人間が思考するものを人工知能に代行させ、人間が物事を選択するにあたってIOTに代行させ、人間が行う仕事の大部分でさえ、ロボットに代行させる方向です。ここまできたら、我々人間に何が残るのか、と考えさせられることになります。みなさんが専門とする各分野は数年もたてば、それに対する社会的要求が変わるかもしれません。
しかし、ロボットに代行できないのは、各地域に根付いてきた様々な文化と芸術があります。京都精華大学は京都という地域にある大学で、そして岩倉という地に位置しています。みなさん、大学生のうちに、京都の文化と芸術を学び、地域と連携する様々なプログラムに参加してください。これも、みなさんの世代としてのミッションであります。

日本では、少子化と高齢化が進み、様々なところでその影響は見られますが、世界には人口が増え続けている地域も見られます。日本が持っているポテンシャル、つまり京都精華大学が持っている教育理念とコンテンツを、広く世界各地域の自立と発展に貢献し、世界規模の人間形成に寄与する大学であって欲しい。そのアクターを務めるのは、ここにいるみなさんです。京都精華大学の学生として、世の変化に、柔軟に適応し、知的なたくましさを身につけて欲しい。また、多様化し国際化する京都精華大学のキャンパスが、みなさんと世界の第一歩の交流拠点になります。学生の間、キャンパスの様々な国際交流施設を有効に活用し、自分のグローバルビジョンを見つけてください。

京都精華大学はさらに、2016 年にダイバ-シティ推進を宣言しました。みなさんがこの京都精華大学で、自分の居場所を開拓し、構成員の一員として有意義な学生生活を送っていただきたいと思っています。違いとともに成長する「Growth with our differences」

京都精華大学では、他者との違い、文化の違い、宗教の違い、民族の違い、人種の違い、性的思考を含む様々な違いを越え、自分の可能性に気づき、生き方の哲学・価値観を確立して欲しいものです。自分の価値観で物事を選択できるようになれば、それがきっと、個々人の自由に出会える日になるでしょう。

教職員はみなさんと向き合い、一人ひとりが自分の価値観・考え方を確立し、自立した人間形成を支援します。
最後になりますが、Amadou Hampate Bahの言葉を贈ります。
「あなたは自分の全ての選択を後悔しないでください。常に学びの姿勢と向上心を持ち続けてください。あなたがやるべきことは、すべて学校でできません。学校は卒業証書を授与するための段取りをしてくれますが、人間形成はあなたの日常生活で学びなさい。」
以上、私の式辞とさせていただきます。
ご入学ありがとうございます。AWNICHE

2018年4月1日
京都精華大学長 ウスビ・サコ

2017年度 京都精華大学学長表彰 受賞者紹介

[学長賞]
京都精華大学京北宇津宝さがし会[学生有志によるグループ 代表・杉浦沙貴]
高齢化・過疎化が進行している宇津地域において、2013年度より地域住民のニーズに対応した子ども向けワークショップや夏祭りの企画・実施、移住促進ツールの作成等を地元の自治会と協働して行うことで、地域の活性化に持続的に貢献した功績により。

[学長賞]
田中 圭一[マンガ学部准教授]
自身のうつ病脱出体験をベースにうつ病からの脱出に成功した人たちをレポートしたドキュメンタリーコミック『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』がベストセラーとなるなど社会的な注目も集め本学の名誉を高めることに貢献した功績により。

[卒業生功労賞]
矢吹 康夫[人文学部 (旧)人文学科 卒業]
アルビノ当事者である研究者として、疾患や外傷によって異なる外見をもつ人々のライフストーリーと当事者運動の取り組みを集大成した著作『私がアルビノについて調べ考えて書いた本―当事者から始める社会学』の出版に対し、ダイバーシティ推進宣言を掲げ、多種多様な差異に基づく差別や不利益のない環境づくりに重点的に取り組む本学として、人権侵害のない社会の構築に向けて主体的な活動と研究を重ねる姿勢に強く共感したため。

ページトップへ