ウスビ・サコ学長講演レポート(京都大学未来フォーラム)「多様化する現代コミュニティと建築空間-明日の地域社会のあり方を考える」

2018 年 7 月 23 日

2018年6月15日、京都大学未来フォーラムにおいてウスビ・サコ学長の講演がありました。この未来フォーラムは京都大学を卒業後、様々な分野で活躍している人を講師に迎える講演会です。平成16年から開催されていて今回が71回目となります。

500名の予約枠が事前に埋まり小、中学生から高齢者まで幅広い参加者が集まりました。自己紹介の際の「私は色んなことに興味があります。色んなことに興味があることに意味があると考えています。皆さんも色んなところにアンテナを張って、色んな人との交流を持って欲しいです。失敗も多いけど得るものが多いのが豊かな人生だと思っています」というメッセージに冒頭から強くひきつけられました。

マリでは地域の子供は地域で面倒を見るというコミュニティの感覚が非常に強いそうです。また、挨拶をとても大切にする文化があり、朝は目を見てしっかりと「おはようございます」と挨拶した上で、「良く眠れましたか?」「体の調子はどうですか?」等3つくらいの声かけをするのが普通だそうです。「早起きしないと学校に遅刻してしまうんですよ」と人懐っこい笑顔でユーモアを織り交ぜた語りかけにしばしば大きな笑いが起きていました。
驚いたのはマリの教育の話。成績が芳しくないと小学校1年から留年し、3回留年すると退学させられるそうです。日本と比べるとかなり厳しいですね。卒業後の国家試験を受かると中学校へ進学出来、高校を優秀な成績で卒業すると、海外へ留学できます。学校では「物事に疑問をもちなさい」、家では「物事に疑問を持つな」と教えられ、混乱した高校時代のサコ学長。
マリの学校の多くはJICA(国際協力機構)が建ててくれました。耐震設計でコストはマリの4倍の立派なものですが肝心の教科書がない。そんな問題点も当時は有ったようです。
「高校の時にフランス語を勉強したロシア人の物理の先生がいて何を話しているのか全く分からなかった。でも何とか成績を取らなければいけない。これが多様性を意識した最初の経験かもしれません」会場は再び大きな拍手と笑いに包まれました。

高校卒業後専門は「建築」で中国へ留学。その後、1991年から日本へ。半年間、日本語学校で日本語を学ばれました。阪急電車に乗ったときに「~やんか」という関西弁が頻繁に使われていて、学んでいる日本語との違いを感じ、唖然としたそうです。
下宿先でパーティーを開いて多くの人と付き合うことで、自分が何者かが理解できた。コミュニケーションを非常に大切にしたことに加えて、大家さんが気の良い人で今でも感謝しているとのことでした。

建築については、マリでは釜戸の数がファミリーの数であり、家族が増える都度、部屋を増やしていくことや、調理をするからその場所が台所になるのであって、台所があるからそこで料理をするわけではないと、生活や行為と空間や場所の関係を説明されました。
日本では団地、集合住宅の建替えによって家族形態の変化が進んでいます。軍艦島を訪ね、人が去ってしまった建築に意味はあるのか。人を考えない建築とは何か。空間とは何かということを問い直したと述べられていました。

京都は空き家も新築も増えており、東山では空き家が24%にも上ります。サコ学長が携わられているプロジェクト「本町エスコーラー」では空き家の再生に取り組まれています。野菜を作ったり、パーティーを開いたりしながらコミュニティの再生の途上ですが近所から「うるさい!」「(遮音)壁を建てろ!」等の苦情も有ったそうです。地域の活動へ参加しながら対話を深められている一方で、コミュニティは形成→崩壊→再生を繰り返すものだとの考えを示されました。

質疑応答で印象に残ったサコ学長は、若者達に真面目に生きる意味を伝えるには?に対して、「いつの時代も、どこでも世代間でギャップは生まれるものです。私達と若者のギャップは、若者は私達を見て育ったので若者だけが悪いとは言い切れない。高圧的に接するだけだと、若者は近寄らない。大人が殻を破って若者と向き合うことが大切です」

また、自分の子供に流されるのではなく、本物の協調性を育ませるには?に対して、「実は日本人には協調性がありません。合わせるだけ、空気を読むだけに終わっているのではないでしょうか。ぶつかることで協調性が生まれますが、日本人はその前で止ってしまう。遠慮しあわないことが真の協調性を生むのではと考えます」

一方でおおらかな視点で若者を受け止め、もう一方では、主体性が無く、あるのは空気を読む力だと鋭く切り込むサコ学長の見解は、若者への熱いエールだと受け止めました。

今までにない新しい視点で、学長の業務に取り組まれ、新しい京都精華大学を構築されることを期待しています。

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