細川弘明先生インタビュー

2014/11/12

 
細川弘明02

Q.30年後、日本はどんな社会になると思いますか?

A.「学校では日本語使用禁止」になっても不思議だとは思いません。

 
「ガザで人が死ぬことと、あなたのお金がどうつながっているか1分間で説明してごらん」と言うと、学生は絶句するでしょうね。でも、ガザで戦争が起きている背景には、米国や日本がイスラエルを支援しているという現実があります。私たちの税金の10%は軍事費になっていますし、さらに日本が米国債を大量に購入することで米国の軍事費を賄っているという現実があるのですから、ガザで子どもたちが殺されることと私たちのお金のあいだには確かなつながりがあります。
 
今の日本では生活のなかに世界中のモノが流れこんでいます。どこから来たのか、誰が作ったのか? 言えないものがたくさんありますよね。冷静に考えると、それはすごく変な社会だし、危うい社会です。
 
南米で僕が入っていた村は、基本的に自給自足で、貧しい農村だからそれはそれで大変なんだけれども、生活のすみずみまで「自分のもの」という感覚があるんです。「あの人が織った布だから絶対に質がいい」とか、「あの人の畑の豆だからおいしい」というふうに、すごく納得して暮らしていました。
 
ところが、日本がこんな風に世界中のものを買って消費しはじめたのは過去30年くらいのこと。まだ確立したとはいえない状態だし、たぶん今の学生が卒業して僕くらいの年齢になる頃には、このシステムは壊れると思います。海外から食料が輸入できなくなり、石油がなくなり、原発事故だってまた起きるかもしれない。10年、20年すれば全く違う世の中になるかもしれません。
 
たとえば、学校で日本語を禁じられることだってあるかもしれない。それは、僕の感覚では全然不思議じゃないんです。それが良いという意味ではないけど、世界中で普通に起きていることだから。でも、学生は想像もしないし、イメージすらできないんですよね。
 
「ひょっとしたらそうかもしれない」という感覚を身につけることはすごく大事なことです。そして、ものごとを徹底的にリサーチして具体的に知ることは、見えなくなっている世界のつながりを明らかにする有効な手段です。僕のゼミを経験した学生たちは、戦争や大食糧難で日本社会が混乱に陥るようなときでもへこたれず、たくましく動けるんじゃないかなと思います。
 
 
 
 
細川弘明プロフィール
プロフィール
細川弘明(Hosokawa Komei)
京都大学大学院文学研究科博士後期課程中退。オーストラリア国立大学(ANU)太平洋地域研究所にて博士号(PhD)取得。京都大学人文科学研究所助手、東京外国語大学専任講師、佐賀大学農学部助教授、国立民族学博物館客員助教授などをへて、2001年より本学教授。先住民族の環境知識、土地権回復運動、国立公園共同管理などを研究。アジア太平洋資料センター(PARC)共同代表。高木仁三郎市民科学基金(高木基金)理事。グリーンピース・ジャパン理事。原子力市民委員会(CCNE)事務局長。オーストラリア国立先住民族研究院 (AIATSIS)正会員。
著書に『Yolngumatha ethnographic lexicon』(2003年)、『開発事業をめぐる文化的対立と調停』(09年)、『Yawuru language of West Kimberley』(11 年)、など。共著に『もっと知りたいオーストラリア』(1990年)、『オーストラリア・アボリジニ 狩猟採集民の現在』(91年)、『多文化主義・多言語主義の現在』(97年)、『MOX(プルトニウム燃料)総合評価』(98年)、『環境の豊かさを求めて ── 理念と運動』(99年)、『講座環境社会学5』(2001年)、『差別と環境問題の社会学』(03年)、『水と暮らしの環境文化』(03年)、『環境教育学』(12年)、『原発ゼロ社会への道 ─ 新しい公論形成のための中間報告』(13年)、『World Nuclear Industry Status Report 2013』(13年)、『原発ゼロ社会への道 ── 市民がつくる脱原子力政策大綱』(14年)、『これならできる原発ゼロ!』(14年)など。そのほか論文・著作多数(http://j.mp/docs2688)。
 
 
 
 


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