テープ起こし:中村 渚・奥澤 恭子・出雲 順平・山田 実那子
編集:川畑 望美・細川 弘明
これからお名前を呼ぶ人には質問カードをまだお返ししておりません。この方たちの質問や意見は,ホームページで使わせてもらいます。先週は授業のときにお返しできるように間に合ったんですが,今週は編集が1日遅れていて,すみません。(30人の名を読み上げる。) 以上の方々の質問や意見その他,ホームページに採用します。あるものには私のコメントをつけて載せます。それから,これからお名前呼ぶ方は,ホームページには載らないんですが,私のコメント作業がついにこの時間に間に合わなかったので,今日カードをお返しできなくて申し訳ありません。(10人の名を読み上げる。) コメントしたり,答えたりするのに,調べようと思ってなかなか調べがつかなかったことがあったりして,延期になります。すみません。
この授業の公開ホームページを見た人は,手を挙げて下さい。はい,だいぶ先週より増えてきましたね。まだ半分ぐらいですね。まだコンピューターに慣れてないっていう人もいます。ホームページの見方がいまいち分からないっていう人も少しいますので,今のところは「なるべく見てください」と言っておきますけども,6月ぐらいから,見なかったら減点していきますよ。ここ2週間くらいのあいだに,少なくともホームページの開き方はマスターしておいて下さいね。わからない場合,誰に教えてもらったらいいのか。一番は友達,二番は情報館のカウンターで教えてくれるはずです。アドレスがわからない,とび方(ページからページへのリンクのたどり方)がわからない,色々あると思いますけども,早急に身につけてください。
今日はまず最初に,「気になる記事」ということで,ちょっと紹介します。(教材提示装置に記事を映す。)ちょっと字が読みにくいかと思いますけども,簡単に読みます。(※著作権法の制約により,残念ながら記事本文をここに転載することができません。以下の引用で「...」で示す部分は記事の文章の直接引用,その他の部分は細川による説明的な言い換えです。)
これは『毎日新聞』のインターネット版(Mainichi Interactive)でたまたま僕がチェックしたものですけれども,「山口ニュース」(地方記事)ですので関西での活字版『毎日新聞』には載ってないと思います。5月8日の記事です。「スナメリが座礁」って書いてあります。スナメリは,後で写真をお見せしますが,小さな鯨です。「幼獣,保護後に死ぬ 下関彦島塩浜町の海岸で」と書いてあります。5月6日の朝に,下関市内の海岸にスナメリの赤ちゃんが乗りあげているのを釣り人が発見したそうです。急報をうけて下関市立の水族館(「海響館」という水族館だそうです)が保護収容したけれども,残念ながら夜になって死んでしまったそうです。「解剖して死因を調べる」と書いてあります。「体長72センチ,体重4.5キログラム」,赤ちゃんで言ったら結構重たいですね。体にへその緒がまだ付いていたので「生後1週間程度とみられる」とのこと。えーと,博物館の人のコメントが載っていて,「幼獣が」,つまりスナメリの赤ちゃんが,「生きたまま座礁するのは珍しいのではないか」と。「母親とはぐれた可能性が高い」そうです。「スナメリは成獣で約1.9メートルの小型鯨類」,1.9mといえば,ほとんど我々より背が高いんですけどもね,小型のクジラ。「インド洋から太平洋の温暖な沿岸海域などに生息する。山口県沿岸の瀬戸内海や響灘(ひびきなだ)などでも確認されているが,生息数など分かっていないことも多い」という記事ですね。毎日新聞の和田武士記者の書いた記事です。
これがなぜ「気になる記事」なのか。なぜアセスメントの授業でとりあげる必要があるのか,簡単に説明します。
スナメリ見たことない人の為に ...(教材提示装置に写真を映す)。海の上から撮った写真だから,なんかイルカみたいにしか見えません。素人が見るとイルカに非常によく似てます(参照:http:// www.gem.hi-ho.ne.jp/ aquaheart/ aqua10.html)。もちろんプロが見ると,すぐ判るんですけれども,僕みたいな素人が見ると,遠目にはイルカとの区別がつきにくいです。生物分類上は「ネズミイルカ」の仲間で,いわゆるイルカとは,ちょっと種類が違う。大きな分類でいうと,ハクジラ(歯鯨)の仲間にはいるそうです。
いまお見せしているこの写真は,山口県,さっきの記事で赤ちゃんスナメリが浅瀬にのりあげたという事件があったのと同じ山口県の上関(かみのせき)の沖合いを泳いでるところを撮影されたものです。上関がなぜ問題かというと,原子力発電所を新規に作る計画がいま進んでるんですね。おそらく日本で新規立地する最後の原発だろうと言われている場所です。まだ地元は漁協を中心に非常に強く反対してますし,建設工事はおろか,土地の収容もまだ終わっていませんから,出来るかどうか定かではありません。が,ともかく計画は進行してしまっている。
で当然,発電所を作るっていう話ですから,環境アセスメントをしています。原発計画の事業主である中国電力が環境アセスメントをしています。この周辺の海のことを,それから沿岸のことを含めて環境影響評価をしています。その中国電力の最初のアセスメント報告では,スナメリなんていない(?!)ということになっています。だけどこの近くで長年,何十年も漁をしている漁師さん達は,「スナメリなんて毎週のように会う」と。スナメリがいないなんて,調査しても確認できないなんて,全くありえない話。地元の人にとってみては,ごく当たり前の存在だったけれども,アセスメントをやるといなくなっちゃう。いや,いないことにされてしまう。「なんなんだ,これは?」ということですよね。
えーっと,ちょっと地図をお見せします。(上関町周辺の地図とスナメリの分布図を映写する。) 図がはっきり見にくいかもしれませんが,ここに島があります。これが祝島,お祝いの島と書いて祝島(いわいじま)。主に漁業で生活してる村があります。で,こちら,上関町(かみのせきちょう)と書いてあるあたりが本土です。本土と言いますか,本州の本土,ここずーっと地面がつながっていて,車でいくと1時間もかからないで広島市に行きます。もっと近くには山口県の光(ひかり)市,柳井(やない)市などがあります。中国地方の一番西の方,山口県の南沿岸の,瀬戸内海に突き出た半島なんですね。離島である祝島も行政的には「上関町」の一部です。祝島より本土寄りに長い島と書いて長島(ながしま)という島があります。長島と本土は橋でつながっていますから,もう離れ島という感じはしないです。この長島の西の端っこ(※本土と反対側,祝島に面するほう)に原発を作るという計画になっています。それに対して同じ行政区,同じ上関町の中にある祝島の漁業組合を中心として,地元の人が非常に強行に反対しているという状況なんですが,ここに今,(地図上で)島の周りにちょっとこう影が入っている,斜線が入っているところが,漁師さん達がスナメリをよく見かける海域なんですね。つまり,このあたり,実はスナメリだらけですね。とは言っても実際には何頭いるのか,個体群のサイズとか,それからどういう季節移動してるとか,どこで繁殖しているかとか,そういった詳しいことは判っていません。スナメリっていうのは,謎のクジラなんですね。
※祝島漁協の組合長であり,反原発運動のリーダーでもある山戸貞夫さんに以前うかがったところでは,1999年5月から12月にかけて漁協でおこなった調査で,8ヶ月のあいだに延べ444頭のスナメリを確認(目撃)したという。そのうち半分近くは,原発のために埋め立てが予定されているところの沖合いと排水の放流予定水域に集中しているとのこと。(「延べ」というのは,同じスナメリを2回見た場合でも「2頭」と数える,という意味。)
非常にハッキリしているのは,昔は,昔ったってほんの30年ぐらい前ですよ,1970年代よりも前だったら瀬戸内海のどこにでもいたんです。淡路島の近くにもいたんだそうです。それが現在では山口県や大分県の沖合い,瀬戸内海の一番西の方にだけ残っている。東の方では,つまり大阪湾とか淡路島周辺とか岡山沖とかでは,いなくなってしまった。それは日本の高度成長にともなって,そのあたりの海岸や干潟とか埋め立てて,工業地帯を作っていったと。瀬戸内コンビナートとかですね。それで海が汚染されたり,海洋生態系が影響受けたり,潮の流れが変わったり,いろんなことが要因としてはあるんでしょう。ともかくスナメリにとって住みにくくなったということは明らかで,瀬戸内海の東の方では絶滅状態。ところが西の方では残ってる。実際,祝島周辺のこの海域,私も行ってみたことありますけども,昔の瀬戸内海の非常に豊かな様子が見事に残っている素晴らしい海です。で,スナメリもちゃんと残っているんだね。
実は,これも古い新聞ですけれども,(記事を映写する)古いと言っても3年前ですね,99年の初夏に,やはりスナメリの赤ちゃんが保護されたっていうニュースが,これは『読売新聞』99年6月1日付に載ってます。
それから最後にお見せしますと,これもちょっと古い記事ですけれども,これは99年10月30日付け『毎日新聞』ですが,この山口県のスナメリから,PCB,とても毒性が高く環境ホルモンでもある汚染物質のPCB(※)がスナメリの体内から,基準値の40倍,非常に高い濃度で検出されたというニュースです。これは海に流れこんだ汚染物質を,例えばプランクトンが濃縮したり魚が濃縮したりして,それをスナメリが食べて,生体濃縮が起こってるわけです(※)。クジラとかの仲間は,イルカもそうですけども,ダイオキシン,PCB,放射能といった汚染物質を非常に濃縮させて体内に取り込んでしまっているということが,世界各地の調査でわかってきてますけども,瀬戸内海の山口県の生き残ったスナメリも素晴らしい海とはいえ,こういった工業社会からの環境影響をはっきり受けている。
※PCB(ポリ塩化ビフェニール)→『環境社会学科キーワード集』p.104を見ること。
※「生体濃縮」については,『共感する環境学』p.16〜18の鷲尾先生の解説を参照。
まぁしかし,なんとか生きているわけですね。数を減らしながらも。その最後の海が原発計画でおびやかされていて,しかも環境アセスメントでは,彼らは存在しないことにされてしまっている。もうスナメリは滅んだとされている。さすがに,こんなアセスメントは,いかに嘘であるかっていうことが地元の人にはもちろん分かります。ですから,地元の人も指摘しますし,環境保護団体も指摘します。クジラというと必ず出てくるグリンピースもですね,このアセスメントに対する批判を本格的に展開して,その結果,山口県知事が,このアセスメントを拒否しました。認めなかったんです。中国電力はもういっぺんアセスメントのやり直しをしないといけなくなって──部分的にですけども──クジラとか他の海洋生物についてはやっぱりいます,ということを認めざるをえなかった。そんな経緯(いきさつ)があります。
ですが,それで発電所計画が止まったわけでは未だないんです。ですから進行しつつあるんですが,日本最後の原発ができるかどうかという場所での事件だったので,インターネットにひっかかってきた小さなニュースですけれども,今日の「気になる記事」として紹介しました。で,昔の新聞記事なんかもひっぱりだして,背景を少し説明しました。
では次に,何人かの質問カードにお答えしようと思います。
●山田圭介さんからの質問。「バイオマスを分解して出来たメタンガスやメタノ−ル」,先週これお話しました。バイオマスを分解してこういったものを作るっていうことのも説明しましたけども,「メタンガスやメタノールはなんに利用するのか?」
「いろんな利用の仕方があります」という答えになります。この場合のバイオマスっていうのは,木の場合もありますし,生ごみの場合もありますし,それから農業廃棄物といいますけども,稲藁(わら)とかこの間の菜の花とか,農産物の場合もあります。どれでもいいんですけども,まぁ特に注目されてるのが都市の生ごみなんですね。こういったものから,メタンガスとかメタノールというものをつくりだす。メタノールっていうのはアルコールの一種です。液体と思って下さい。メタンガスは気体ですね。気体で取り出したり,液体状で取り出したり,いずれも成分は近いものですけれども,そういった燃料になるものをゴミの発酵によって生み出すということです。バイオマスはそのまま直接燃料にしてもいいんですけども,燃やさないでこういったものを化学的に取り出すということが出来ます。それを何に使うかっていうのが山田くんの質問。
一番大きいのが自動車燃料。代替燃料(ガソリンではない代わりの燃料)として使うっていうのが非常に有望で,これはすでに技術的に実用化されています。例えばブラジルなんかは,サトウキビからメタノールを抽出して自動車燃料にするっていうのが非常に一般的になっていて,ブラジルではメタノールで走っている自動車──タクシーとかバスとか非常にたくさんあります。去年や今年の話じゃなくて10年以上も前からあります。
次に注目されるのが,発電用の燃料。つまり,発電所はこれまで石油とか石炭とか天然ガスを燃やして,熱を起こして,お湯を沸かして,タービンをまわすという仕組みだったんですが,火力発電ですね。発電用の燃料として使う。仕組みとしては火力発電で,石炭・石油の代わりに使う。今ヨーロッパはこれに非常に注目しています。都市の廃棄物,一般廃棄物ですね。産業廃棄物ではなくて,食べかすとかですね,有機性のそんなに毒物を含んでいない,都市の生ごみからメタノールを取り出して,それで発電する。仕組みとしては,火力発電なんですけど,こういうのを「バイオマス発電」といって,統計の分類上はバイオマス・エネルギーに含めます。これをヨーロッパは,ガーッとのばそうとしています。
三番目に,これは日本なんかで有望なんですけど,京都市なんかも考えているみたいなんですけれども,都市ガスです。都市ガスっていうのは正体はメタンガスですので,バイオマス起源のガスも都市ガスに使える。つまり台所のガスや,風呂を炊くガスに使えるということですね。京都市も,この岩倉の辺りはまだ都市ガスになってないですね。まだプロパンガスですね。プロパンガスっていうのは石油ガス,石油から取り出した成分を液体にしているガスです。どこら辺りからですか? 上賀茂(かみがも)辺りから都市ガス区域ですかね。修学院の辺りはどうですか?(学生答える:「都市ガスです」)。あ,修学院は都市ガスですか。岩倉の辺りは,石油ガスですね。プロパンガスですね。ですから,要するに都市の中心部に行くとですね,都市ガスというのに切り替わっていて,都市ガスの正体は,いま言ったようにメタンガスです。天然ガスという風に言っていますが,正体はメタンガスです。今は海外でてんぽった(?)天然ガスを液体に直してタンカーで運んできて供給しているわけです。つまり,輸入資源なわけ。バイオマスから取り出せば,国産の資源として天然ガスが使える。
このあたりまで(=自動車用の代替燃料,発電用燃料,都市ガス化)はすでに,国によっては,本格的に実用化されているし,技術的にはほとんど問題が無いと。
4つめに,いま技術者の間で一番注目されているのは,燃料電池。「FC」というふうに略号で書かれることが多いんですけど,「fuel cell」ですね。「燃料電池」と言います。燃料電池の話は,説明しだすと時間がかかるので,今日は詳しく説明しません。また,ホームページなどで,補うことにします。燃料電池に関する重要な報道記事とかが出た場合には,またあらためて取り上げるかもしれません。重要な記事が出ることは十分予想されますけど。とりあえず,今日は詳しくは話しません。けど,今覚えといてほしいのはね,こういうのが,あるということ。いわゆる,新技術ですね。これも新エネルギーのひとつ。
それで,燃料電池っていうのは,変な話なんですけど,「電池」じゃありません。実はこれ,誤訳なんですね。けれどもみんな,「燃料電池,燃料電池」って言ってるので,今さら変えるとかえって混乱するということで,言葉としては定着してます。英語の「fuel cell」っていう言葉を訳したんですけれども,電池(battery)じゃありません。ついでに言うと,「太陽電池」っていうのも同じ誤訳。太陽電池って電池ですか?(学生たちの反応を待つ。首をかしげる学生,首をふる学生,ぽかんとする学生などなど ...) 太陽電池も電池じゃありませんね。ここでいう電池っていうのは,電気を溜める。溜めておいた電気をそこから取り出して使うという,電気の貯蔵装置,いわゆる,バッテリーですね。太陽電池とか,燃料電池っていうのは,こういう意味での電池ではなくて,発電する装置なんです。発電システムなんです。つまり,どこかよそで作った電池をそこに入れておくのではなくて,そこから新しい電気が発生する。発電装置です。
という,新しい技術もできている。それも燃料にメタノールを使う。燃料電池っていうのは,要するに,小さな発電所。それを,全部の家に置ける,全部の車に積める,ということ。従来の電気利用のあり方を根本的に変えてしまう可能性があるということで,非常に注目されています。おそらく5年はかからないですね,ここ2〜3年のうちに実用化され,販売競争が始まると思いますね。自動車ですね。
昔は,昔というのは5年位前までかな,電気自動車(EV)というと,バッテリー(蓄電池)式だったんですね。走るためのモーターをまわす電気を,バッテリーから取り出しながら走る。電気を消費しながら走るから,どこかで充電しなければならなかった。どこかで,バッテリーがきれたら,そこで動けなくなってしまうという欠点があったんですけれども,燃料電池(FC)を積むと,これは,発電しながら走りますので,充電する必要はない。ただし,その発電に使う燃料を補給しなければなりませんけど,電池の自動車に比べれば,ずっと長い時間,効率よく使えるということで,今,いわゆる電気自動車は,燃料電池,車の好きな人は「FCEV」というのを聞いたことがあると思いますけれども,燃料電池(FC)式の電気自動車(EV)ということですね。これがいま非常に注目されて,これはもう,ニッサンも,ホンダも,マツダもですね,トヨタも,フォードも,フォルクスワーゲンも,ともかく,世界規模でものすごい開発競争が始まっています。もうすでにマツダなんかは,大阪でしたっけ? 大阪かどこかで試作車を走らせてますね,公道で。もう実験所の外に出て,走行試験にはいってます。つまり,実用化前の最終チェック段階にはいってます。おそらく,2年か3年の内には市場に出てくると思います。
最初はたぶん高いと思いますよ。いくら位ですかね,石山さん(=車に詳しい学生),見当つきますか? 最初の市販の燃料電池車だったらいくら位になりますか? 乗用車の。
石山:試作車で1,200万くらい。
細川:たぶん300万円をきったところ位で,マーケットに出すんじゃないんですかね。もうちょっと高いですかね?
石山:最初は自治体にまわす分が,1,000万ちょっと超えるくらいで ...
細川:いや,それは,バンくらいの大きさのやつでしょ? ひとつ前の開発世代の。もう今は,乗用車サイズまで落とそうということでいってますから。あと何年位かかると思う? その乗用車サイズで市販が始まるのは何年後? 僕は3年とふんでいるんですけど。
石山:バンのやつは来年の10月くらいに出すっていう ...
細川:バンのやつはもう完成していますね。ただそれはまだ,個人で買うレベルのものではないですね。ダイムラー・クライスラーとかは,2005年という風に言ってましたね。乗用車サイズのが。トヨタだっけ? ホンダだっけ? 日本のメーカーがそれより前の年に出すというふうに宣言したので,ダイムラーもそれに合わせて予定を前倒しするというふうに,非常に過酷な競争をやっています。
その場合の,メタノールというのは,有力な燃料の可能性のひとつです。他にも,従来のガソリンを使うこともできますし,水素を直接使うと,技術的には色んな可能性があるんですけれども,まあ,メタノールが注目されていると。
というふうに,バイオマスから取り出した資源はですね,我々の都市の工業化社会の生活のかなり基本的なところにくい込む可能性があるということで,高く評価されている。以上,長くなりましたが,山田さんの質問ですね。
●次は,ハンドルネームで「シン」さんの質問で,すいません,僕,分からなかったんで,正直に分からないと言いますが,「風力発電が考え出されたのはいつですか? 誰ですか? どこの国の人ですか?」
ちゃんと調べたら分かるかと思うんですけれども,ちょいちょいと調べただけじゃ分かりませんでした。ごめんなさい。そう,新しい話じゃないと,わりと古いと思います(→「学生からの声」の「わか」さんのコメントを参照)。
基本的には,皆さんが乗っている自転車のライトと同じことですから。皆さん,足で漕いでですね,小さいクルクルっとした発電機を回して,ライトが点くと。だから,一所懸命ガーッと漕ぐと明るくなって,てれてれ漕ぐと暗くなると。あれを風にやらせるということですから,風がビュンビュン吹くと明るくなるし,風が凪いでしまうと電圧がスーっと下がっていく。そういうふうに言うと,何か不安定で大変じゃないか,と思われるんですが,例えばですね,自転車を100台並べて,ひとつひとつライトを点けるのではなくて,その線を全部つないで,100台が作る電気を一つのシステムとして使うようにすると,常に何人かサボっていても(漕がないでいても)大丈夫なんですね,皆が同時にサボるとダウンしてしまいますけど。交替交替にだいたい誰かがいつも漕いでいるという状態であれば,一定した電圧が確保できる。これが1,000台なら,より安定するし,10,000台なら更に安定していきます。風車というのも,こういう事がいえる。プロペラひとつで考えるよりもシステムとして考えて安定度を高めるという形で,現在注目されています。
古い技術だと言いましたけれども,注目され始めたのは,そう古いことではない。今みたいに本格的に国や自治体が注目する,あるいは企業が注目する,あるいは環境保護団体が注目する,というのは,石油ショック以降です。1970年代中頃と,70年代後半にあたりますね。石油ショックの後。つまり,石油以外のエネルギー源を本当に真剣に探し出さなくてはいけない。そういう時期になって,昔からあった技術なんだけれども,それが脚光を浴びて,システム的にも,技術的にも練り上げられてきた,という事だと思います。
●後野顕史君からの質問で,「一次エネルギーとは何ですか?」
これは大勢の人が聞いてきました。すいません,先週ちゃんと説明しなかった私が悪いんです。「一次エネルギー」っていうのがある以上,「二次エネルギー」っていうのもあります。一次エネルギーを二次エネルギーに変えて我々は使っているんです。一次エネルギーはどこから来るかというと,自然界から来ます。自然エネルギーだけではなくて,石油も石炭も天然ガスも,みんな元はといえば自然界にあったもの。掘ったりですね,削ったりして持ってくるわけですから,自然界からですね,何らかの形で人間が捕まえてきて,それを,人間が使えるようなエネルギーの形に変える元になるもの。ですから,一次エネルギーなんていうややこしい言い方をしなくてもですね,簡単な言い方をすれば「エネルギー源」ということ。エネルギーの源(みなもと)。例えば風というのは,一次エネルギーですよね,それから石油,この場合は原油です。黒いどろっとした。原油は一次エネルギーですね。石炭,これも一次エネルギーです。太陽の光,お日様,太陽光,太陽光線ですね,これも一次エネルギーです。川に流れている水,これも一次エネルギーです。
これら全部エネルギーの源なんだけれども,人間はそれを,そのまま使えないんですね。使える形に加工しないといけない。例えば,石炭を燃やして,そこから熱を取り出して,熱を使う。あるいは,それをさらに,発電機に利用して,電気を作って利用するとか,ですから,人間が使ってるのは二次エネルギーなんですよね。熱であったり,電気であったり,水車みたいな動き(運動エネルギー)に変えて使うという場合もあります。エネルギーの形を変えて使うと。だけれども,元が無ければ何もできませんから,エネルギー問題を考えるときは,ここに一段階入っているという事を忘れないことが大事なんです。
原子力もそうです。ウランを掘って使う。ウランというのは一次エネルギー源ですけれども。我々はそれを電気という形に変換して使うわけですね。途中で何段階も様々なプロセスを経て,電気という形に変えて使う。雷というのは,たとえば稲妻,あれは自然界の一次エネルギーとしての電気。電気そのものがバチバチッとはじけるわけですけれども,残念ながら人間がそれをうまくキャッチしてそのまま使うという技術は今のところありません。考えている学者はいるんですけれども,上手くいってない。やはり,電気エネルギーを使うには,他の一次エネルギーを電気に変換しなければならない。確保しやすいエネルギー源を様々な技術で形を変えて,転換してやっていくわけ。
ですから,ここで問題が生じるのは,この変換がうまくいくかどうか,なんですね。うまくっていうのは,効率よくいくかどうか,っていう事が一つ。ここでですね,有害物質が出るかどうか,わざわざ変換する事によって,有害物質が出るかどうかという,有害性の問題。この2つを,常にエネルギー問題っていうのは,考えなければならない。この話も,始めてしまうと延々とかかりますから,とりあえず「一次エネルギー」の意味ということで,これだけ押さえて(=把握して)おいてください。
●新保 千佳さん,角 絵梨香さん,他2〜3人の人から同じ質問がありました。「石油は生物の死骸,あるいは,石炭っていうのは,木からできたと思うんですが,バイオマスではないんですか?」これ,新保さんの質問です。角さんの質問はストレートに「石油はバイオマスではないんですか?」というふうに聞いてます。
結論から言うと,石油も石炭もバイオマスではありません。バイオマスには含めないのが普通です。なぜか。
石炭の場合は古代の植物が炭化して,石炭になったということはほぼ,おそらく間違いない。異説もありますが,だいたい間違いないと思います。そういう意味で言うと,生物起源ですね。生物起源の有機物ですね。石油の場合はまだ謎なんですね。なぜ,石油ってのが地球上にあって,どういう風な仕組みでできたのかっていうのは,分からない。古代の動物の脂だっていう説もあるし──これは定説ではないですよ──意外と皆さんが小学校のなんかで習うのはこのバージョンですかね。そうではなくて,もともと地球の中心部にあった物質だという説もあります。それから,もっと地表の近くで微生物の働きで,化学反応でできたんだという説もありますし,あるいは,これらの組み合わせだという人もいます。研究者によって説は様々で,まだ謎です。しかし,仮に生物が関わっていたとしても,バイオマスには入れないいんですね。石炭とか,石油とか,天然ガス(※)なんかは。なぜかと言うと,地上で循環していないから。バイオマスっていうのは基本的にはもともと,地上にあった生物,植物だったり,動物だったり,場合によっては菌類だったりしますけれども,地表で手に入れたものを,人間が使って,最後には,また地表の有機物に戻っていく。地表で循環するもの。これに対して,石油とか石炭のように,こう,掘り出して,新たに取り出してしまうものというのは,循環の足し算・引き算を狂わしてしまうということで,バイオマスに入れないでおくと。
(※天然ガス=主成分はメタンガス=は,地下あるいは海底から採掘するものはバイオマス資源とはみなさないが,同じメタンガスでも糞尿・生ゴミ・農作物残滓などを醗酵させて取り出したメタンガスはバイオマス・エネルギー。)
●プレイボーズさんから,「自然エネルギーが日本で普及するのに,どのくらいの費用と時間がかかりますか」という質問です。
正直に答えると「分かりません」なんですけれどもね,未来のことですから。ただ,ここでも参考になるのはヨーロッパなんですね。お配りしたプリント(資料2)を見てください。「再生可能エネルギー見通し」と書いてあります。再生可能エネルギーとは,日本で普通に言う「自然エネルギー」のことです。
資料の左横に,風力とか水力とか太陽電池とか──これ太陽光発電のことですね──バイオマス,廃棄物,火力,地力,地熱,いろいろあります。それぞれについて柱(※棒グラフの意味)が2本ずつ右に伸びています。一番上の色の薄いほうの方の棒は,そこに「BEST PRACTICE」と書いてありますけれども,これから一所懸命ふやしていって実現可能な分量のこと。それに対して少し濃い色で下に並んでいる棒があらわす量は「PRESENT POLICIES」──これは「現在の政策」という意味ですが,現段階で実際にどれだけ行われているかということです。ここで「BEST PRACTICE」として挙げられているのは,2010年くらいの見通し。それから「PRESENT POLICIES」のほうは,資料では1998年と書いてありますが,統計数字は1995年か1994年のものだと思われます。ですから15年位の間でどれだけ増えるか。もちろん増やす政策を取った場合ですよ。増やす政策を積極的にとった場合,実現可能・達成可能な量ということです。これも見通しですから "狸の皮算用" ですけれども,まぁ夢物語ではないということです。技術的・経済的には十分達成可能なはず。あとは政策で実現するかどうか? そういう見通しです。
その見通しの中身を見ますと,まず,風力とか太陽光は,自然エネルギーと言うといつも風力とか太陽電池が注目されて,ヨーロッパはかなり進んでいるんですが,それでもやっぱり全体から見ると,かなり少ないんですね。で,風力なんかは,例えば3倍以上に伸ばすような見通しになっていますが,3倍以上に増えても,まだ全体からすれば少ない。それに対して,バイオマスのところを見てもらうと,バイオマスは現在でも結構な量があって,これから,2倍半ぐらい,3倍近くに伸ばしていくと。全体量としてもかなり多くなる。こういうことです。ですから,15年間でこれくらいの飛躍が(ヨーロッパで)達成可能であるとすれば,日本でも可能なはず。バイオマスの資源自体はヨーロッパよりもむしろ(日本のほうが)森林も豊かですし,農業,農作物資源も豊富ですので,日本でできないわけではない。ただ,政策が違いますから上手く伸びないかもしれないですけれども。これで見ますと,10年,15年というスパンで考えると,相当なことができておかしくはない。問題はそういう政策をとるかどうかなんだ,ということです。
ちなみに,この棒グラフの下にある数字,「0」「20」「40」という目盛りがありますね。その単位がローマ字で「MTOES」と書いてあります。「メガトン・オイル・エキバレント」と読むんですけれど,「石油換算のメガトン」,つまり,石油何メガトン分に相当するエネルギーがつくれるか,ということです。メガはキロの1000倍ですから百万ですね。ですから「1MTOE」というのは「石油で同じエネルギーを作ろうと思ったら,石油が百万トン要りますよ」という,そういう石油換算量の目盛りです。
●最後の質問です。井上太佑君から,「もし若狭湾の原発が何らかの形で,爆発していたら被害はどれくらいになるのか?」 類似した質問で,塩澤順哉君から「福井にある原発が破れたら」,破れるというのはどういう状態かわかりませんが,「京都・大阪も危険だと聞いたことがありますが,どこに作っても危険ではないのでしょうか?」
これも,この話をきっちりしだすとやっぱり一学期か一年くらいかかっちゃいますから,ごく簡単に言います。
福井県の敦賀市に「もんじゅ」っていう名前の原子炉があります。今は,(95年12月の)事故で止まったままです。この原子炉は「高速増殖炉」(FBR)という特殊なタイプの原子炉で,その原型炉(やや大型の実験炉)です(→『環境社会学科キーワード集』で「こうそくぞうしょくろ」と「もんじゅ」をひいて見て!)。これを「危険だから一切運転するな」という住民の裁判が現在おこなわれています。今年のうちに判決がでると思いますけど。この裁判は誰が起こしたかというと,おおぜいの住民が起こしているんですが,1番遠い人でいうと和歌山県在住の人が原告になっています。もちろん敦賀市とか福井県内の住民も多いですが,京都市内からも何人か原告が出ています。で,どういう判決が出るかとわかりませんが,裁判所は最初は「原告適格」(げんこくてきかく)を認めずに門前払いしたんですが,原告が控訴した結果,ついに「原告適格」を認めたんですね。「原告適格」ってのは,どういう事かというと,京都の住民でも和歌山の住民でもそういう裁判を起こす合理的な理由がある,と裁判所が認めたという事です。これは必ずしも裁判所が住民に有利な判決を下すというわけではないですよ。けれども裁判を起こす権利は認める,裏を返せばどういうことかと言うと,もし原告が主張するような事件(この場合「もんじゅ」の事故)が起これば,和歌山の人も被害を受ける恐れがある。だから和歌山に住んでる人であっても,福井県の原発について裁判を起こして争う権利があるんだよ,ということです。「原告適格」というのは,法律的にみて,原告になる資格を備えているかどうか(裁判をおこす正当性があるかどうか)ということです。つまり,福井県敦賀市にある原子炉「もんじゅ」がもし事故をおこせば,京都も大阪も和歌山にも危害が及びうる,ということが認められたということ。
ちなみに,静岡県にある浜岡原子力発電所についても,新しい裁判がおきまして,実は私も原告の一人なんです。静岡近辺では,かなり近い未来に大規模な地震,いわゆる「東海大地震」が必ずおこると予想されてる。そのとき浜岡原発が動いていると破局的な事態(いわゆる「原発震災」)になるので,「東海地震が起きるまでは浜岡原発を止めておけ」ということを求める裁判です。つい最近,提訴したばかりです。これも,いまのところ何人か忘れましたが,何百人かが原告になって(※),京都に住んでいる私も原告に加わっているんです。それは京都市に住んでる人間でも起こせる,京都だから静岡の事故には関係がないという事にはならない。おそらく「原告適格」では門前払いされないと思います。そういう意味で言うと,原発の事故のスケールというのは,いかな保守的な日本の裁判所でも,それくらいは認めている。もっとラジカルな市民運動の人なんかは,もっと怖いことを言うわけです。もちろんどの程度の事故がおきるかで話は違ってきますけど,いわゆるチェルノブイリ級の事故が起きた場合,例えば福井で起きれば,西でいえば広島くらいまではもう駄目かもしれません。風向きによりますけど。
浜岡原発とめよう裁判の会 http://hp16.e-notice.ne.jp/~peace/
【関連リンク:第5回授業のコメントです】
われわれは日本の事ばかり考えてますけれども,韓国の原発(※)が大きな事故を起こしたら,日本の西3分の1くらいはダメですよ。放射能汚染でひどいことになります。農業なんてできなくなる。ですから,かなりスケールの大きな話になってくる。
※4月25日,静岡地裁に提訴した時点で,1016名が原告となった。今後,さらに増える見込み。原告の請求は,正確にいうと,浜岡1号炉・2号炉(現在停止中)については運転再開をせず,そのまま廃炉にすること,3号炉・4号炉については,東海地震が発生するまでのあいだ運転を見合わせること。(その後,5月24日に運転再開した2号炉が,翌25日,放射能をふくんだ冷却水の漏洩事故をおこして停止したことはニュースでご存知の通り。)
※韓国の原発のことにふれたが,今回の授業のあと,6月7日になって韓国のNGOから受けた知らせによると,韓国東海岸のウルチン(蔚珍)原発4号炉で,4月5日に蒸気発生器の細管破断事故(美浜原発2号炉の1991年の事故と同じ深刻な事態)がおきていた。当初,韓国当局はこの事故を「単なる冷却水漏れ」と意図的に小さくみせかけて公表していたが,5月25日付けの国際原子力機関(IAEA)への報告で,国際原子力事故評価尺度(INES)で「スケール1」にあたる事故だったと述べていたことがばれた! 例によって「外部への放射能漏れはない」という常套句が繰り返されているが,加圧水型原子炉の1次系細管がギロチン破断して(つまり2次系に放射能が流れ込んで)それが外部にまったく漏れないということは,構造上,考えにくい。
さて,お配りした資料を確認して下さい。全部は今日使いませんが,1番と書いてあるのは(前回の授業内容についての)補足資料です(資料1)。あがっている数字はスウェ−デンの統計。ヨーロッパのなかでもバイオマス研究開発と実践が進んでいるスウェ−デンのエネルギーの内訳です。一番上の数字は,1994年の数字ですが,バイオ燃料というのが原子力よりも多いんですね。やっぱり一番多いのは石油なんですが。
1次エネルギーの量,書いてある単位の「TWh」とは「テラワット時」です。「h」は時間ですね,hour の「h」で,テラワット時というのが単位です。「ワット時」というのは,例えば1ワット分の電気を1時間使い続けたら(そのエネルギー消費を)「1ワット時」といいます。積分するんですけども。テラというのはギガの千倍,ギガはメガの千倍,メガはキロの千倍です。私たちの日常生活では普通,電気というとキロワット(kW)で考えますけれども,それを千倍,千倍,千倍した(=10億倍)非常に大きな単位で,スウェーデン全国のエネルギー消費量を見てもらっているんですけど。この資料を見てもらうと,バイオ燃料というのがスウェーデンでは現在,いろんな分野で,特に産業用と家庭用で,たいへん大きな役割を果たしてることがわかります。
それから,そのプリントの同じ面の下の方を見てもらうと,ホームページのアドレスがいくつか書いてあります。「木質バイオマスについて詳しいことを知りたい」,特に「ペレットというのはどういうものか知りたい」という質問がたくさんありました。これらのホームページを開いてもらうと,ペレットの写真なんかも載っています。ペレットっていうのは形,サイズとしては,みなさんお馴染みのものでいえば乾電池ですね。単3電池くらいをイメージしてもらったらいい。それが木でできている。あるいはゴミの塊でできている。ゴミとか木屑とかのバイオマス資源を,ギューと固めて乾燥させて,棒状の塊にしたものがペレットです。(これらのホームページを覗くと)そういったものについて詳しいことがわかります。関心のある人は,各自見てくださいね。それから,バイオマスに関していろんなホームページにリンクするページも,ついでに挙げておきました。それから,ごみ固形化燃料いわゆる「RDF」について,推進する立場,批判する立場,それぞれのホームページをひとつずつあげておきました。この他にもたくさんありますけれども,とりあえず一つずつ載っけておきましたので,また関心のある人は自分でどんどん勉強していってください。(→URLは,このページの末尾にまとめて表示)
先週使った言葉で「RDF」とか「RPF」とか「BDF」とかいろいろあって,「RPS」とかですね,いろいろあってかなり混乱したという質問もありました。これについては,授業公開ホームページに説明を載せておきますので,またそちらを見てください。(→5月8日の「授業を読む」の最後のほうに追記した。)
それからプリント3番,4番は今日使うものです。3番が新聞記事になってますね。つい先週の新聞記事です(資料3)。それから4番は私が何年か前に書いた記事です(資料4)。これが今日の本題といいますか,新しく紹介することです。それから,5番,6番のプリント。これが,バイオマスについての(日本国内での)最近の動きですね。これもたくさん質問がありました。先週の授業でバイオマスの原理を説明したんですが,「実際にどれくらい出来てるんですか?」あるいは「これからどんな試みが具体的にあるんですか?」という質問がたくさん寄せられましたので,論より証拠といいますか,ごく最近,たまたま入ってきたニュースを並べただけでも,こんなに記事があります(資料5と6)。あんまりバイオマス関係のニュースが沢山あるので,この資料,たった1時間でできちゃいます。こんな調子でどんどん,次々と新しく進んでいる。非常にバイオマスは成長著しい分野です。ひとつひとつ説明すると時間かかるので,見てもらった上で,また質問いただければ,解説なり,補足をしていきます。
それから,番号の無いプリントがあります(資料7)。表裏(両面印刷)になってます。これは神戸のほうで生ごみを使ってバイオガスを作って,メタンガス(CH4)ですね,メタンガスを作って,それで燃料電池(を稼動して)発電しようという計画が始まっているんですけど,それについての紹介記事です。メタンガスから水素をとりだして(これを「改質する」なんて小難しい言葉で書いてありますが),燃料電池の燃料にするんですね。この記事は『Natural Energy』という,日本自然エネルギー株式会社(http://www.natural-e.co.jp/info.html)という電力会社系のベンチャー会社のニューズレター(メルマガ)に載ったものです。(※前にお話ししたように,natural energyというのは和製英語で,正しい英語では renewable energy と言います。)
というふうに,今日お配りしたプリントは4枚のうち3枚は先週までのバイオマスについての補足になっています。今日これから本題の,プリントでいうと3番とその裏の4番に載っている話に入ります。
まず資料3番を見ていただきますと,これはビルマの場合と似てるんですけど,ODAですね,日本のお金で途上国で開発をする。タイは途上国の中では経済的に進んでいるほうですけれども,途上国で開発事業をする。この場合は石炭火力発電所の建設です。石炭を燃やして電気を作る石炭火力発電所。そこには,大きく分けて2つ問題があります。
ひとつは地元が非常に反対している。地元住民がかなり激しく,声だけではなく体を張って激しい抵抗をしている結構有名なケースです。それを計画を進めるサイドの日本が強引に進めてきた,という問題がひとつあります。
もう1つはアセスメント(環境影響評価)の問題で,発電所は海辺に立地するんですが,海洋生態系に関する影響,特にここらへんは,鯨(の生息域)とサンゴ礁があって,それに対する影響を非常に過小評価している。発電にともなう高温の排水(温廃水)の海に与える影響,遠浅の海岸での建設工事や石炭の搬入にともなう桟橋の建設が及ぼす影響が,きちんと評価されていない。つまり,アセスメントの問題がある。ということで,私も以前から注目しているケースで,現地にも行ってきたんです,3年ほど前に。
その後,現地からの情報も毎週のように連絡をもらって,進展を注視してんたんですが,お配りした記事(資料3)にあるように,このほどようやっと,タイ政府は計画を凍結すると発表しました。まだ「中止する」とは言ってませんが「凍結する」と。2年間は少なくとも何もしない,2年たってからまた考える,という非常に政治的な判断ですけど,凍結すると。それまでタイ政府も「日本の協力で推進する」と言ってたわけですから,大きく態度を変えたんですよね。
この決定に日本側は非常にショックを受けまして,バンコクにいる日本大使なんかが走っていって,凍結という判断を変えるように懸命に交渉しているところだと思いますけど。しかし,われわれ,住民側から情報を得たり,現地でNGOの調査報告を見たりした者としては,むしろ「やっと止まったか」というのが正直なところです。
いろいろ背景を説明しながら,現地の状況を見てもらうために,スライドを映します。これから見ていただくのは,私が99年12月に現地を見てきたときの写真ですので,かれこれ2年半ほど前になってしまうんですが,現地の光景は基本的には変わっていないと思います。

これが現地の海岸なんですけれども,このときお天気があまり良くなっかたので,海の色が鉛色ですけれども,見事な白い砂浜がですね,長く続いて,サンゴ礁は,ここには写っていませんけれども,沖合いにサンゴ礁があって鯨(※)とかイルカもいる。魚も非常に豊かなんですね。地元の人は農業もしてるんですけど,多くは漁業をですね,魚を沿岸でとって,あんまり遠くまで行かないで,この近くの魚を取って十分暮らしていける。
※このあたりにいる鯨は,ニタリクジラ。
それから,実はここは結構,観光客が来ます。タイ国内の観光客が来る保養地でもある。鯨を見に来たり,この砂浜で泳いだり,のんびりしたりするっていうリゾートでもあるんですね。発電所自体(の予定地)は写真の上の岬の手前ですね,伐採されているのが見えるんですけど,ヤシの木がずーっと続いているのが途切れたところが写ってると思うんですけども,そこが予定地で,すでに伐採されて更地になっています。本来の計画ではもういまごろ発電所ができている筈だったんですが,遅れに遅れて…。

これは近くの漁村の港の様子です。入り江になっていて,いわゆるマングローブの林の中に小さい漁船が100艘かそれくらいあるという漁村の光景です。

写っているお兄さんは,エネルギー問題に取り組むバンコクのNGO(※)の人で,僕ら案内をお願いしたんですけども,手にとっているのはシャコ。シャコって,関西じゃ何て言うんですかね? 有明海や瀬戸内海でよく取れる。エビとは違いますよ(註:甲殻類なのでエビの仲間ではある)。「シャコ」とか「シャッパ」とか言うやつですね(http:// www.pref.saga.jp/ suisan/ gyosei/ fish057.html)。
※Alternative Energy Project for Sustainability (AEPS) という団体。

これは,エビですね。バナナ(Banana shrimp)かな? これ養殖じゃなくて,海で取ってくる天然エビです。こんな大きな天然エビが取れる,非常に豊かな海なんですね。

このシャコもエビも非常に大きいです。このあたりの海の生産力が非常に高い,豊かな海だと言うことがわかります。

これは現地で住民の反対運動の中心になっている人のひとりで,チャルーンさんという方。我々はインタビューしてですね,いろんな事を聞くと。もちろん一方で,計画を進める会社のほうからもですね,情報を得ますけれども,まずは地元の声を聞く。事業者が環境アセスメント(調査)をするとき,こういう彼ら地元の人にインタビューすることを怠るんですね。というか,わざとしないんですけれども。ゆえに,非常に現実と異なったアセスメントの結果が出てくると。そういう問題があります。
スライド(この画像はウェブでは非公開)
これは,この近くでパイナップルをたくさん植えてるんですね。海の魚,エビとかはですね,もちろん売る分もあるんですが,大体自分たちで食べる分に捕まえるのに対して,このパイナップルはですね,マーケットに,市場に出して,現金収入を得ると。

これは(↑),その予定地で伐採が進んでしまっているところ。更地になって,更地と言っても下に草が生えていますが,(スライド9枚目に移る) 元々はこういう風に(↓)ヤシの林だったのを,伐採して(発電所の)用地が確保されているですね。

これも実は,日本の公共事業の悪い面と非常に似た事態が起きているんです。つまり,この計画ですね,発電所を造るという計画が公(おおやけ)にされる前に,ここにこんな大きな発電所ができるということが一般に知られる前にですね,タイ中央政界の大物政治家がこの土地を買い占めているんです。いわゆる,“インサイダー取引”ってやつですけれども,内部情報をもった人が先に土地をもって,「土地転がし」って日本では言いますけれども,それをしているわけです。それで,計画が始まると,この土地を(発電所の事業者が)計画のために買い上げるわけですね,非常にいい値段で買ってくれる。つまり「安く買って高く売る」という土地転がしをやってる。ですから,やっぱりこれは日本だけではないんですけれども,こういう大きな開発事業,特に公共事業の場所は,それを悪用しようと思えばいくらでも色んなことが出来てしまう,ということがここでも良くわかります。

これは,反対運動をしている人の村の家ですが,なかなか豊かなんですね,現地はね。我々が住んでいるより大きな家に住んでるよ。ここによく住民が集まって,決起集会をしたりします。

これは(↑),さっきと同じ砂浜のところで,聞き取りをしてるところですけれども,これは(↓)こういう小屋がヤシの葉っぱで,トタンも使ってますけれど,臨時の出作り小屋を砂浜に組んで地元の人が何かしてるんですね。

何をしてるのかなと思って行って見ると,エビを網で取ります。さっきの砂浜で網を投げて,あるいは小船で出て行って小さな網で小さなエビを取って,さっきの写真で見せたような大きなエビじゃなくて,小さいエビです。日本でいったら芝海老みたいな。エビをたくさん取って,すりつぶして,塩漬けにしている。いわゆる,エビ・ペースト。タイ料理好きな人は,はまってると思うんですけれど,あのエビ・ペーストを作っているところです(↓)。

これは,自分たちだけで使うんじゃなくて,市場に出して売る。漁民以外の人たちも,こういった浜での出作りで,現金収入源を確保する。砂浜というのは現金収入に直結する資源を得る場でもある。しかし,発電所予定地に隣接した浜は,広い範囲で閉鎖されてしまうことになります。

これは,住人が作っている地図で,下のほうの赤い所が発電所の予定地です。その左右(=南北)に住民が使ってるビーチがあるんですけれども,もう少し北の方に行くと,この緑で色がつけてあるあたりは,国立公園ですね。カオ・サムロイヨー国立公園という保全地域なんですけれども,この国立公園がどういう影響を受けるか,特に石炭火力発電所ですから,当然出る煙によって有毒ガスが出ます。亜硫酸ガスとか出ますので,遠く離れた地域まで影響があります。それが,例えば国立公園にどういう影響を及ぼすのか。酸性雨で森が死ぬのではないかあ。当然,調べなくちゃいけないんですが,これもアセスメントからすっぽり落ちているということがあります。

これは,地元の反対派の村長さんが作った手作りの地図なんですが,地図って言うか発泡スチロールで作った立体地図ですけれど,右の方に黒く海岸から内陸にかけてウネウネとのびている,あれは石炭を燃やした後の灰の捨て場に予定されている場所を示したんですね。今はまだ始まっていませんが,始まったら石炭灰が捨てられます。横に一本小川が通っているんですね。川沿いに,地形的に言うと谷沿いに燃え殻を置いていくと。灰の中のさまざまな有害物質が,川に流入して,農地にいったり,海に流れていったり,様々な問題が起こるって予想されるんですが,これについてもちゃんとしたアセスメントっていうのは出来ていない。

これは,彼ら漁民の村に行くと,このように真ん中に集会場っていうか,四阿(あずまや)があって,我々のようにヨソ者は先ずそこに行っていろいろ話を聞く,という状況です。真ん中で黒いTシャツを着て話してくれている女性は,地元の反対派のリーダーの1人で,活発に住民をまとめる運動をしています。ジンタナさんといいます。彼女に話を聞いているところですね。
スライド(この画像はウェブでは非公開)
左に写ってるおじさんは地元でリゾートホテルを経営している方で,漁民とは違う立場の人なんですが,彼もせっかくいいリゾートになっている所がつぶれてしまうということで,反対派にまわっている。漁民とは違う理由で反対にまわっている。それで我々が行って,あっちこっち現地をまわりながら話を聞いているとこです。写っているのは,右側がバンコクのNGOの人で,真ん中は僕が連れて行った学生です。
スライド(この画像はウェブでは非公開)
これは,ちょうど新聞記者が取材に来たのと居合わせました。飯屋さんで昼ごはんを食べながらインタビューをしているところ。

これは,漁民の村の人たちが,我々が取材に来たということで結集してきて「反対だ!」と,揃ってこぶしを挙げているところ。「発電所計画に反対だ!」という意思表示をしてるとこなんですが,記念写真みたいになってます。みんな緑の服を着ているのは,なかなかこういう状況きついと思うんですが,反対の人はこうやって緑をまとうんです。あるいは,家に緑の旗をかかげる。それに対して,推進派もいるんです,住民の中にも。電力会社とコネがあるとか,すでにお金を貰ってしまったとか,いろんないきさつがあって推進派もいて,その人たちは黄色を使う。そうすると村が真っ二つに割れていくわけですね。黄色か緑か,真ん中は無いという状況。どちらにも属していないと「どっちの色を挙げるんだ」と追及される。これは地域社会に対して非常な(そして「非情な」)ストレスを与える。
これは,日本でも,ダムでも発電所でも,いろんな公共事業で,必ずといっていいほど起きている事態です。やはり,住民をいかに分裂させるかっていうのが,その事業を進める側の一つの仕事みたいになってしまっている。ですから,黄色の家の人には,いろいろ事業の融資をしたり,仕事を世話したりやっている。本来ならばまとまりのあるコミュニティーだったのが,外から来た事業計画のせいで,だんだん亀裂が走っていって,場合によっては,親族の中で二つの色に分かれて,ののしり合い,憎しみ合い,場合によっては,それが物理的な衝突につながるということになってしまう。いわゆる「骨肉の争い」というのが始まってしまう,というのがあります。
ちなみに,私の研究室にも,現地でもらってきたこの緑の旗がさげてあります。そういう状況です。
3番のプリントをもう1度見てください。日本の側から見ると,日本の側というのは,ここに進出しようとしている企業の側と,一般の日本人といいますか,市民の側,我々の立場とおのずと違ってくるのですが,先ず企業の側から見るとですね,こんなに大きな規模の火力発電所っていうのは,もう日本国内ではとても造れません。しかし,企業はこれまで日本の中で発電所をバンバン造って,それが火力であれ,原子力であれ,何であれどんどん造って,それで儲けてもきたし,技術を蓄積させてもきたわけです。ところが,そういったことが日本国内ではできなくなってきた。いい悪いを問わず,現実にできなくなってきている。昔の発電所の修理をしたりということはあるかもしれませんけれど,新規にどかーんと,こんな大きな規模ものを造るということは考えられない。しかし,技術と経験はある。それから,そういう大きなプロジェクトが来ないと,会社として経済,経営的に立ちゆかない。
というので,前にも話したように,業者の都合が先にあって,「何とかどっかで発電所を造ってくれないか」というかたちで,こう海外を物色するわけです。そこで,タイも話を持ち込んで,うまくタイ政府は一旦はのったわけです。もしできれば,アジアで最大,世界でも有数の規模の石炭火力発電所です。この計画にはトーメンとか,東芝とか,中部電力とか,いろんな日本の商社やメーカ−が絡んでいます。(→より詳しくは,《授業へのコメントを読む》を参照。)
ところが,そういう風に考えたのは日本だけじゃないんですよ。アジアのこれから伸びる国に施設を造って経営的に生き延びようとする戦略は,先進国の企業に共通していますから,日本だけじゃなくてヨーロッパの企業もそうです。アメリカの企業もそうです。ですから,最初はいろんな国がこの発電所計画に参加していたんです。ドイツ,フィンランドの電力会社,アメリカ,もうひとつヨーロッパからもう一社,参加していたんです。ところが,現地の住民が猛烈に反対している。環境アセスメントに問題がある。なんやかんやで計画が遅れるという事態になって,次々と撤退していくんですね。アメリカ,ドイツ,フィンランドはすでにこの事業計画から撤退した(出資をひきあげた)んです。日本は最初は,ちょっと参加(出資)して,その分け前をもらえればいいと思ってた。出資比率でいうと,十何パーセントくらいだけ出すというのが最初の話だったのが,みんな抜けちゃうもんだから,結果的に,モタモタしてるうちに,日本が最大の出資者になってしまった。いわば,手をひくタイミングを完全に失ってしまって,そうなってしまうと日本の会社は意地を張るんですね。で,「なんとしても建てる!」というふうに強行路線に転じてしまう。
ところが,モタモタしているうちにタイ政府が「お金がないよ」と言い出したんです。最初は「タイは経済がガァーっと伸びてきて,電気もこれからたくさん使うに違いないから,造ってください」ってことで成り立っていた契約だったんですけれど,そのタイの経済が(アジア通貨危機で)へこんで,電気の需要も伸びない。こんな発電所つくったって,その電気使うところが無いわけですね。ということで,タイ政府は今回「凍結」という判断をしたんですけれども,それが経済的にもエネルギー政策的にも健全な判断だろう,と私は思います。私が思うだけじゃなくて,いろんなNGOや,また,経済界のいろんな評価を見たらですね,「当然予測された判断である」と評価されているんですが。この後に及んで,また日本政府は「何とかこれを続けてくれないか」というふうに交渉していると。「タイ側がお金を出せないとなったらば,日本から税金を使ってやりますよ」と。ODAになっちゃうんですね。
最初はODAじゃないんですよ。そもそも最初は,民間企業の契約(日本を含めた複数の国の民間企業が出資する合弁事業がタイ電力公社と契約した事業)として始まった話なんですが,資金が無いというので日本の公的資金からお金を出そうという事になりかけているんです。もちろん計画は凍結されましたから,すぐには動きませんけれども,国際協力銀行(JBIC,ジェービック)という日本の公的基金を使って支援するという筋書きが見え隠れしています。JBICというのは,海外の開発事業の支援をする金融機関。銀行って言っても,これ普通の銀行じゃなくて,開発援助や海外事業投資の専門機関です。原資(お金の出元)は日本政府の財政投融資ってやつですから,事実上,政府機関と考えていいと思いますけれど,「そこを通じて出資をしてあげるから,何とか計画を続けてくれ」と,日本側から話を持ちかける形になってしまっている。
まとめに入ります。これを見てわかるのは,日本の国内でやっていた失敗を,海外でさらに大きな規模で繰り返そうとしている,ということ。その失敗とは,例えばアセスメントのやり方の問題であったり,地元との意思疎通の悪さだったり,それから事業の裏でおこる諸々の汚職をふせぐ仕組みがないままにやってしまう。公共事業のいろんな問題がそのまんま海外に輸出されて,しかもそこにODAが絡んでしまう。そういうケースとして是非これは注目しておいてほしい事例です。