1975年から滋賀県高島郡朽木村の暮らしと生活文化の調査をすすめてきた。
村は県の北西部にあり、福井県、京都府との県境にある人口2600人の静かな山村である。
安曇川とその支流、針畑川、北川、麻生川の谷間に集落が点在する。
 一つの村にとって、またそこに暮らす家族やひとりひとりにとって、
敗戦後の高度経済成長により、何百年をかけて蓄積されてきた地域文化が途絶え、
それにかわって何を得たのか。
研究会の活動は、記録映画や出版によって、
かつての山村での暮らしから現代を照射しようとの動機からの試みであった。
永く山村で使われてきた生活用具に焦点をあてることによって、
暮らしの知恵を再評価することであった。
 1軒の納屋に残されているさまざまな生活の用具。農作業や山林での道具、
ワラや蔓など身近かな自然素材で作られた手工品、麻の栽培から織りにいたる道具、
その他、食品加工から共同体としての講や信仰など、家族の生活の蓄積が、
朽木村針畑川流域の各集落で続いた証である。
自然環境から生まれた「知恵」のかたまりであるこれらの道具を通して、
村の人びとの声に耳を傾け、生活史の聞き取りとしてすすめてきた。

 ●針畑生活資料研究会の活動●

1979年 京都精華大学美術学部(現芸術学部)丸谷研究室を中心に設立
1981年

「草鞋づくり」朽木村針畑の生活記録1(8mm color 全5巻 86分)
 ・ゴンゾワラジ篇 25分
 ・チチワラジ篇 14分
 ・ユキワラジ篇 18分
 ・アシナカ篇 15分
 ・アシナカワラジ篇 14分

 女性が主に履くゴンゾワラジを中心に、ワラ工品の記録をすすめる。口、手、足と全身を使っての製作工程は、その技術と手業の早さに圧倒される。家族の成長にあわせて、みごとに作り手の体の中に人間尺が生きている。家族の絆が、手のスケールから伝わり、製作の構造とデザインに作り手の優しさが残る。
 
1984年

「テゴをつくる」朽木村針畑の生活記録2(16mm B/W 28分)

 稲藁はムラの生活にはかかせない大切な生活素材であった。稲を作るよりも藁をつくるといわれるほど、生活文化の基層をなしていた。針畑川沿いの小さな一枚の田で、手作業で田仕事をしている老夫婦。苗代から稲刈りまで、1年の稲の成長を追いかける。生産物としてのワラを使って「テゴ」をつくる。テゴは現在も野良仕事で腰につけて使用されている。主に落ち穂拾いのために。
 
1989年

「ベベ」朽木村針畑の生活記録3(16mm color 40分)

 イヌガヤの実を採集し、各家で、集落によっては共同で、燈火用油「べべ」を搾っていた。電灯が引かれる昭和24年ころまでのことである。欅製の搾油器であるベべウスをモチーフに、敗戦後40年の間の、べべ山の変貌、村の共同体、家族の構成の移り変わりをみようとした。これらの道具を通して、村の生活と里山との分断の状況を描く。かつて、ベベの実を採集し、自家製以外はマチヘ売りに行く。師走に入ると、片道25kmの山道を朝の3時に起きて、峠を越えマチへ売りに行く。これらの労働は、女性たちの仕事としてまかされていた。1985年から1989年までの記録。
 
2000年

「ハルとのの」朽木村針畑の生活記録4(16mm color 55分)

「ハルとのの」朽木村針畑の生活記録4(英語字幕版 VHS color 55分)



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