
「手技に学ぶ-京都の伝統産業の現場から-」展 開催報告
The Exhibition "Learning from Handicrafts:The Sites of Traditional Industries in Kyoto"
会 期:2008年3月23日〜30日(8日間)10:00〜19:00 ※24日(月)休館
会 場:京都府京都文化博物館6階展示室
入場料:無料
主 催:京都精華大学 学外実習委員会
実施概要
本校では1980年より、京都の伝統産業の現場で体験学習を行う「学外学習」を実施してきた。2005年にその25年に及ぶ実績が認められ、文部科学省から平成17年度「特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)」として採択を受けた。
これを機に、京都を中心とした伝統産業の各ジャンルの作品、ならびにその制作工程や材料・道具に至るまで歴史・文化的背景を含めて展覧する当展を企画した。「学外学習」の実習先である工房・企業と「京都の伝統美術工芸講座」の講師の方々に出品を協力いただき、開催のはこびとなった。
この展覧会においては伝統産業のすぐれた技術・文化・造形美・ものづくりの姿勢を発信するとともに、人材育成の一助としての学外実習の成果も発表している。伝統産業からいかに学び、次世代に何を引き継いでいくべきか。本展覧会開催は伝統産業の可能性、方向性を見出す機会を創出し、「京都国際デザイン会議 クムルス2008」と開催時期を合わせることにより、海外の美術系大学関係者にもその内容を広く紹介した。
出品協力一覧
学外実習先 24社
| 業種 | 工房・企業名 |
| 織物 | (株)川島織物セルコン |
| 綴織 | 細見綴織工房 |
| 京友禅 | (株)千總 |
| 型染(紅型) | (株)栗山工房 |
| 組紐 | (有)藤三郎紐 |
| 染色 | 染司よしおか |
| 和紙 | (株)岩野平三郎製紙所 |
| 和紙 | (有)山喜製紙所 |
| 京からかみ(唐紙) | (株)唐長 |
| 京版画 | (株)雅堂 |
| 京版画 | 佐藤木版画工房 |
| 京陶人形 | 清水人形・高橋毅孖 |
| 陶磁器(京焼・清水焼) | 澤村陶哉工房 |
| 陶磁器(京焼・清水焼) | 竹中浩工房 |
| 漆工芸(京漆器) | 伊藤裕司漆芸アトリエ |
| 漆工芸(京漆器) | 好謙漆工房 |
| 竹工芸(編組) | 竹美斎・石田正一 |
| 京指物 | 宮崎木材工業(株)・(株)宮崎 |
| 京象嵌 | (株)川人象嵌 |
| 京都の金属工芸 | (株)森本錺金具製作所 |
| 文化財修復 | (株)さわの道玄 |
| 京表具・文化財修理 | (株)岡墨光堂 |
| 京造園 | 造園 植治 |
| お香 | (株)松榮堂 |
伝統美術工芸講座講師
| 茶の湯釜 | 大西清右衛門(※所蔵:俵屋吉富) |
| 京菓子 | 山口富藏 |
| 京友禅 | 田畑喜八 |
| 京人形 | 面屋庄甫 |
| 仏像彫刻 | 江里康慧 |
| 截金 | 江里佐代子 |
その他協力
| 竹工芸編見本制作 | 小川 進 |
展示の内容
展覧会場は京都市中京区にある京都府文化博物館の6階にある和室展示室。約70畳の展示室4部屋からなり、入り口で靴を脱いで畳に上がって観覧する形となる。まず、第1室には「学外実習」の準備授業である「京都の伝統美術工芸講座」の講師であり、京友禅、京人形、茶釜、京菓子、截金、仏像彫刻等の各界で活躍する作家、工房の作品をゆったりと展示、京都の伝統工芸の粋をじっくり鑑賞していただいた。続いて、学外実習先毎に、代表的な作品・製品とともにその材料・道具、仕事の内容や制作工程を記した解説写真パネル等を展示した。またあわせて実習先で指導をいただき制作した学生の作品の展示と作品制作のコンセプトや実習を終えての所感を各自の専攻分野の作品写真とともに紹介した。展示室を一巡りした後には、DVDで、制作工程や工房代表者のインタビュー(次世代に向けてのメッセージ)などをまとめた映像資料も自由に視聴できるコーナーを設け、学生が実習中に経験し、学んだことを文章やイラスト、写真を使い日誌形式で詳細にまとめた「学外実習記録ノート」も自由に閲覧できるように展示した。その他、漆盆の制作工程の順を追った制作見本や、竹工芸の編み見本なども、展示した。
来場者の声
来場者は一日平均200名程で、会場の広さもあり比較的自分のペースでじっくり観覧されていたようである。京都市内や近郊、関西各県からの来場者が多かったものの、関東、中部地方や富山、福井など、北は北海道から南は九州まで、さらにクムルス(国際デザイン会議)の関係者も含めて外国人の来場者もあった。任意でご協力いただいたアンケートには以下のような感想が寄せられた。(一部抜粋)
- 京都の伝統的な職人さんの手技を改めて見直し感動しました。特に手技を支える「道具」の展示などプロセスを解説することにより、その奥深さを感じさせ、とても充実した内容の企画展でした。(一般・男性)
- 学生さんは伝統の技術を使いながらも、新しい感覚が入った作品を作りあげていて面白かったです。(一般・女性)
- 京都に住んでいながら一度にこのような形で見せていただいたのは初めてでした。大人だけでなく小・中学生にも見てもらいたい。(一般・女性)
- 手技の見事さ、それを学ぶ若者達の真摯な姿、京都の奥深さを実感しました。伝えることの大切さを実感します。(一般・女性)
- 学生が実習に行くのはとてもいい事だと思う。京都に居るのに経験をしないては無いでしょう。先人の苦労を知るよい展覧会であったと思う。(学生保護者)
- 職人さんの手仕事の美しさに感動しました。(学生)
- 制作過程を見ていると、どれも丁寧な作業が多く、自分もやってみたいと思った。学生の実習ノートも興味深かったです。(学生)
- あらためて京都で学ぶ大切さがわかりました。(学生)
- 最近このように手を動かすことが少なくなってきているので考えなおさせられました。(学生)
- 色々な仕事場の、普段は見ることの出来ない制作工程や実際に使われている道具を見ることが出来、あまりなじみのない分野のものも、同じものづくりをしている立場として、身近に感じ共感しました。(実習先)
- どのジャンルの現場からも、作りあげるものへのこだわりを感じた。刺激を受けさらに自分の技を磨いていこうと思った。(実習先)
- 実習生の熱心に取り組んだ作品を見て気が引き締まる思いがした。(実習先)
- 学外実習に取り組まれる学生さんの熱心な学習がこの展覧会によって大変良く理解出来、我々も一層その情熱ぶりをお手伝いさせて頂きたく思いました。(実習先)
- このような展覧会を続けていくことで後継者が育つことを期待する。(実習先)
- 異分野の学生さんが作ると意外な発想で面白い。伝統産業により新しい発想が生まれるように、いい勉強をさせていただきました。(伝統産業関係者)
- 伝統文化を今後どのように深め、広めていくかについての一つの取組み方法として参考になりました。(伝統産業関係者)
- 我々の大学でも地元の職人の方々とともにものづくりを行う取組をしています。貴学の取組のように、様々な技術・技法・知識・経験を見える形で可視化し、さらなる教育につなげていくために、たいへん勉強になりました。(教育関係者)
- 大学のコンセプトがよく理解できる。例えば現代美術をやっていく上でも、この実習が大きな「裏打ち」になると感じました。(教育関係者)
- 自分が実習を経験した時のことを思い出し、懐かしいと同時に、すべての工芸の職人さんの言葉に、現在の仕事にも通じる、心の持ちようを改めて考えさせられました。(卒業生)
- 京都にいながら、興味を持っているつもりの世界でしたが、まだまだもっと奥深くすばらしい世界だと改めて思いました。伝統をつないでいくことは大変なことですが、自分も何か力になれないものか、と思います。(卒業生)
- この他、展覧会に対するご意見としては、会場内で実演が見られたら良かったという声も多かった。また、展示の仕方そのものについての細かいご指摘として、キャプションの中には文字が小さいものもあったことや、伝統工芸の各業種独特の言葉(漢字)のルビへの配慮、英語の解説の充実、ビデオの音に関する問題等があった。またさまざまな伝統工芸を一堂に会し、簡潔な展示で解りやすかったという声に対し、特定の分野やさらに突っ込んだ内容も見たかったという声も見られた。さらに、DVDを教材として使いたいので配布を希望する教育関係者の声や、精華大学の学生でなくとも伝統産業に興味のある人が参加できる学ぶイベント等の開催を望む声なども見られた。
展覧会を終えて
以上、アンケートに見られたように、来場者には京都の伝統工芸を新たな切り口で見せることで、展覧会の意図するところはそれぞれの観点での理解をもって伝わり、また様々に感じ取って糧としていただくことが出来たと思うが、またこれにもまして、伝統が新に継承されていくように、このような取組を継続することや、今回の展覧会を契機とした今後の新たな取組について期待する声も大きかった。
また今年度の実習に取組み、展覧会に出品した学生自身には、例年にもまして、実習での学びが、展覧会への出品を通して別の角度から照射される部分もあったと思う。自分が行った実習先だけでなく他の伝統工芸の分野も見ることでそれぞれへの理解を深めると同時に他の実習生の作品に刺激を受けたこと。展覧会で多くの来場者に向けて作品を発表することや、実習後半年を経て、それぞれの専攻分野での制作に実習での経験や感覚が生かされていることを振り返り、手技に対する意欲にもまして、ものつくりの基盤となる精神性についても深く感じることができたのではないかと思う。
今後、これらのことを踏まえて、さらに充実した取組を展開していけるよう努力したい。
尚、展覧会にあわせて発行した小冊子「手技に学ぶ-京都の伝統産業の現場から」(カラー140頁、A4変形版)は、会場で一般希望者に配布を行ったところ、500部あまりの希望があった。
また、今後、この小冊子は学外実習の事前授業の教材としてや、情報館内の「伝統工芸資料室」の資料として活用するとともに、実習先はもとより、関係機関にも資料として役立てていただければ幸いである。
出展数
325点
出展内容
- 京都の伝統美術工芸講座講師 6名/作品8点
- 学外実習先工房・企業 24社/作品91点、材料・道具・資料99点
- 実習生 52名(2008年度「学外実習1」履修者全員)/作品57点、資料・実習ノート57点
- その他見本資料13点
来場者数
1354人





























