
2009年度4月より、人文学部総合人文学科がスタートしました。 詳しくは、こちらをご覧下さい。
- 井上 竜馬
- 京都精華大学の山林利用復活プロジェクト 〜学生・市民団体の視点から〜
2009年度調査演習
講評:山中 速人(関西学院大学総合政策学部教授)
環境問題についての知識とそれを具体的な実践の場として展開するターゲットを戦略的に選び、計画され、調整され、実現可能性をつねに意識しながら実行されたプロジェクトであり、社会実践としてのフィールドワークという新しいフィールドワークの方向性をよく体現している。
環境問題に取り組むに際して、Think globally act locally. という行動原則が知られている。地球規模で問題を把握する必要があるが、しかし、その実践の場は、自分が生活している地域であるという原則である。すでに、使い古されたような原則であるが、しかし、一人の人間として、この言葉を正面から受け止めることが、実は、きわめて困難であることは、CO2の削減割り当てを巡って国家間で沸騰している議論をみていても容易に分かるだろう。本調査演習報告は、この原則を忠実に実践しようと試みたというその一点を捉えたことにおいて、すでに十分に強いインパクトを、それを読む者に与えずにはおかない。
自らが学ぶ場としての大学の山林に注目し、それを里山として捉え直すという視点の転換こそ、ここでは重要である。たしかに、その実践の方法とプロセスにおいて、専門的な視点から評価すれば、不十分な点や改善すべきところがあるかもしれない。たとえば、既存の学生活動団体を実践の過程に取り込むという方法などには、異論もあるだろう。しかし、国際的な援助機関や環境保護団体の活動も、歴史的にみれば、そのような試行錯誤を繰り返すことによって、今日の実践と理論を蓄積してきたのであり、無謬な計画をはじめから企図できたわけではないからだ。
自分の生活空間に視点を移動させることで、一人の学生にどれだけの実践の可能性が開かれるかを、あらためて教えてくれた本報告の価値はきわめて大きいと思われる。