【客員教授・鳥海修先生インタビュー『文字を作る仕事』】

デザイン学部客員教授であり、普段は書体設計士として活躍されている鳥海修先生が、今年の7月に本を出版されました。

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本のタイトルは『文字を作る仕事』。
本の中では、「理想の文字とは何か?」という観点で、鳥海先生が文字作りに込めた思想について語られています。

今回は『文字を作る仕事』の内容や、鳥海先生の学生時代について、お聞きしました!

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ーまず、『文字を作る仕事』はどんな内容の本なのか、簡単にお聞きしてもよろしいですか?

本の帯にも書いてあるけど、ずばり「理想の文字とは何か?」ということなんだよね。
大学卒業してから会社に入って、37年間ずっと文字を作る仕事をやっているんだけど、その中で自分に課した「こういう文字を作りたい」というのが、「水のような空気のような文字」ということなんです。
「それってどういうものなんだろう?」ということを折に触れて考えてみたことを、この本に書いています。

「水のような空気のような文字」っていうのは、小説や新聞を読むときに見ている、あの小さな文字のことなんだよね。
文字を読むというよりも、言葉が先に頭に入ってきて文章の内容が分かるような文字を、私は作りたいんです。

ー水とか空気みたいに、生活の中で身近にあるものということですね。

そう。みんなが小説を読むときに、「なんとなくこの小説読み難いなぁ」とか思うのは、レイアウトとかの問題が考えられるけど、私はそれを文字だけに絞って考えています。

例えば「あ」の形って色々あるけど、大勢の人が自然に読める「あ」みたいに、読みやすい文字の共通認識というのが実はあるんじゃないかって、俺は思ってる。
「それってどこからきているんだろうか?」ということを考察しているんですね。

ー先ほど「卒業してから37年間、文字を作り続けてきた」と仰いましたが、先生の学生時代はどんなものだったんですか?

なんで俺が文字に興味を持ったかっていう話になるんだけど…俺は3年生まで将来なにがしたいとか、そういうものはなかったんだよね。
そういう学生って学校を休みがちになったりするけど、俺は学校も嫌いじゃなかったし、友達もたくさんいたから、毎日休まずに学校に来ていたんだ。

本当はプロダクトのデザインをやりたかったんだけど2浪してたから、受かったグラフィックデザインコースに入ることになったんだよ。でも、グラフィックデザインに全く興味がなかったの。

ー本の中でも「めざすはカーデザイナー」とありますね。

そうそう。3年生になると、ゼミに分かれて専門的な授業になっていくじゃない。そうすると、取りたい授業がなかったんだよね。
そのときに、「文字デザインって何の足しになるんだろう?」と思いながらも、文字を書くことは苦ではなかったから、文字デザインのゼミに入ったの。

で、その文字デザインの先生が、活字のデザインをするだけでなく、本当にいろんな現場に連れて行ってくれて。
その中でも毎日新聞社に行ったことが、今の仕事を選ぶ一番のきっかけになったんですよ。

毎日新聞社に行ったとき、文字をデザインしている人の中に、一文字をレタリングしている人がいて、「なにしてるんですか?」って聞いたら「これが活字の元だよ。」って言われたんだ。

そこで「活字の元ってなんだ…!?」って思って。
それまでは活字があるのがあたりまえで、活字はまさか人が作っているなんて全然思っていなくて、「こんなデザインあるんだ!」ってすっごく驚いたのよ。

それで、「俺、この仕事やりたい!」って思ったんだ。

ー文字デザインとの出会いだったんですね。

そのとき毎日新聞社にいた小塚昌彦さん(小塚明朝・小塚ゴシックの制作者)が、学生に「文字は日本人にとって、水であり米である」って、要するになくてはならないものだと言ったんだよ。

それで、俺が生まれ育った場所っていうのが、山形県の庄内平野というところなんだけど、そこは一面が田んぼで米と水が溢れているところなんだよ。
俺はそこの景色が大好きで、その言葉を聞いて「これ、俺のことじゃねえか!」ってピンときたんだ。

その時に文字をやりたいって思って、文字が作れる会社に就職して、10年後に独立して「字遊工房」っていう会社を作るんだけどね。
最初の会社にいた時に、師匠から「鳥海くんね、書体の理想っていうのは、水のような空気のようなものって言われているよ」って教えられたんです。

その言葉に対して本の中で出した結論は、「自分で書く文字は、自分自身以外のものではない」ってことなんだ。
毎日の生活全てが、自分の文字になる。
自分の文字が水や空気になるには、どう生きていればいいのか?っていうことなんだよ。

ーなんだか改めて、自分の文字が書きたくなってきました…!
それでは最後に、デザインを学んでいる学生にメッセージをお願いします!

学校に来なくなってしまう学生がたまにいると思うんだけど、そういうことはしてほしくないんだよ。
俺は、たまたま行った毎日新聞社で将来のキーになる情報を得たわけじゃないですか。
だから、どこにチャンスとかが転がってるか分からないんだよ。

大学にはいろんな先生がいて、いろんな勉強をしていく中で、どこに何が転がっているか分からないから。なるべく学校にきて、いろんな人と話し合って、いろんなことを考えながら、チャンスを潰すようなことをしてほしくない!勿体無い!

チャンスとかキーが必ず見つかるわけではないんだけど、4年間通って何も見つからなくっても、それで無駄っていうことは絶対にありえない。
努力したことっていうのは絶対に身になるので、投げやりにならないでほしい。

生きていく中で、無駄はないって思っているよ。

ー本当ですね。今日は貴重なお話、ありがとうございました!

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今回のインタビューを読んで、「文字についてもっと知りたい!」と思った人もいるのではないでしょうか?
『文字を作る仕事』では鳥海先生のルーツや、文字を作ることへの考えなどが、さらに深く書かれています。
是非、ご一読あれ!

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グッドラック!

(おわり)

教員

Posted on 2016.11.09 by seika design course