村上隆(現代美術家/コンテンポラリー・アーティスト)
「PO+KU ART レボルーション」(1999.09.30)

講演要旨
POPはOTAKUによって侵犯された。それが日本のTOKYOのリアルカルチャーNOWなのだ。
日本画からマンガ、フィギュアへと疾走し、ARTの意味を最先端で問い続ける村上隆。 海外でも高い評価を得る、日本を代表する現代美術家が、新しい概念「PO+KU ART ポック・アート(POP+OTAKU=PO+KU)」を語る。
プロフィール
村上隆(むらかみ たかし)
1993年、東京芸術大学美術学部日本画科博士課程修了。博士論文「意味の無意味の意味」。
「DOB」「HIROPON」といったPOPキャラクターを創造し、 日本におけるリアルアートの現状について、実作を通して検証を行なう。 また、展覧会のキュレーション、広告制作、評論活動なども展開する。
1998年、UCLAアートデパートメントニュージャンル科客員教授。サンフランシスコMOMAに「HIROPONちゃん」が常設展示。 本年、アメリカ全土で個展開催、また東京・渋谷パルコパート1全館で「MR.DOB World展」を開催。
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講演レポート
9月30日(木)、本学黎明館L-101教室で、現代美術作家の村上隆さんを講師にお招きしてアセンブリーアワー講演会が行われた。
聴講者は、若い人が多く、会場は満員で立ち見もできるほど。そんな中で、講演会は始まった。



●村上さんが現代美術作家になった理由
 村上さんは、東京芸術大学で日本画を11年続けていたという。そんな村上さんが、どうして現代美術家となったのか。そのきっかけとして、学生時代に指導を受けていた平山郁夫に「美術とは何か?」という質問をしたところ、「自分で勉強しなさい」と答えられたという。そんな答えから、日本の美術教育に対して疑問を持ったという。それが、そもそもの始まりだったという。

●美術教育とは?
 村上さんは、日本の美術教育に疑問を持っている。若い学生の才能をひきだしていないのではないか、というのだ。  
 そこで、村上さんは若い作家のデビューを手伝っているという。最近も、4人の若手作家をプロデュースした展覧会を開いた。そこでは、160点もの作品が並び、そのうち70点ぐらい売れたという。村上さんのなかで、売れなければ成功したとはいえない、という考えがあることがわかる。  
 村上さんの考えとして、若手作家が作ってきたモノ(作品)の中に、何があるのかを探し出し、見つけ、見つけたモノを刺激して、教育していき、右上がりの成長にするのが、美術教育に必要だという。

●ノンコンセプトの人生観
 アニメーター(ここでの意味はアニメの原画部分を描く人)に「兼森 義則(銀河鉄道999などの作画、作画監督をつとめる)」という人がいた、という話が始まる。その人を紹介するのに「銀河鉄道999(劇場版)」の映像が流れた。そこで、村上さんは「すごい、すごい!」と大声で語る。  
 ここで言いたかったのは、独特のにょろにょろとした、不思議な形態を持つキャラクターの描き方についてらしい。  
 日本の美術は2D(平面)にあるというのだ。西洋の美術は、一点透視図法に代表されるように、3D(立体)の世界であるという。そしてまた、それは自然現象を西洋美術では、できるだけ正確に描こうとするが、日本では自分なりに解釈した自然を描くのが好きだという。また、解釈された自然の中に作者が表れているという。
 この自分なりの解釈の例としてあがったのが、「タイムボカンシリーズ(竜の子プロ)」でのドクロ型のキノコ雲である。これをやってしまうのは、日本だからできるのではないか?と。  
 この他に、西洋美術と日本美術との違いとしてあがったのが、「ノンコンセプトな人生観」である。以前、加勢大周の芸名問題が起きた。そのなかで、「加勢大周宇プロジェクト(加勢大周の芸名騒動を皮肉っている)」というなんとも人を小馬鹿にしたようなコトをプロデュースした。これをフジテレビや、日本テレビの番組に売り込んだ。その売り込んだ結果、番組で紹介された様子を見せてもらったが、そのこと自体が、「ああ、あったなあそんなことも」と思い出した。  
 だが、どういう意味で「ノンコンセプトな人生観」なのかがよくわからなかった。

●日本のアートについて
 日本のアートが、海外にでることが可能な分野は、日本で「劣等な文化」とされている「おたく文化」にある。「おたく」が海外にはない、オリジナリティーがあるからだという。  
 村上さんは、「おたく」を「ネガティブで、コミュニケーション不全」だと思うが、村上さんにとって、非常にリアルなことなのだという。自分にとって、リアルであるということを掘り下げていかないといけない、という。  
 同時に、自分は「おたく」の人から見ると、「おたく」ではないという。甘っちょろいという。「Project KOKO」も海洋堂(フィギュアの制作、販売を行う企業。フィギュアの世界では大手)の人や、グラフィック雑誌の人に言わせると売れないと言われたという。実際に、今年行われたWonder Festival(フィギュアなどの即売、見本市)でも売れ行きはひどかったらしい。  
 雑誌社の言い分としては、「Project KOKO」があまりにも「おたく」という人に向けられた、ということを意識しすぎている点(アンナミラーズの制服に似せた衣装、顔つき、体つきなど)が、不評であるという。「おたく」の人から見れば、一つの単なるフィギュアにすぎず、決して美術作品を買う、という意識にはなっていないのではないだろうか。

●ビジネスの側面
 ファインアートと呼ばれるモノ(世界や、作品)であっても、キュレイター(学芸員、美術館展示の企画者)に気に入られる、売れる絵を描くという戦略がなければ、成功しないと語る。  
 このことは、戦略として「おたくの文化」を海外で売ることを意味する。日本の「おたく文化」が海外で迎え入れられやすいことを知ったことから、海外で展覧会をすることを考えたらしい。  
 また、売れ出したら、作品数の増加、生産をいかにするのか?ということも考えなければいけない、という。今でも、ある程度の下描きをした原稿を、若手の作家に自分と同じようなタッチで色を塗らせて売っているという。それは、ビジネスとしての側面が強いが、その側面が全くないのでは、どうにもならないと強く言っている。

●Project KOKOについて
 美少女フィギュアであるProject KOKOは、日本などの独自の文化ではないか、という。それは、2D(平面)のものを3D(立体)にするという技術は、信仰の対象である「仏」を立体物にする仏像と似ているという。  
 この事をプレゼンテーションして回り、Project KOKOにこぎ着けたという。この点も、面白い。プレゼンテーションをして回ったのは海外ばかりで、日本ではお金が出ないだろう、ということを考えて行動している。先程のビジネスの側面がしっかりと出ている面である。  
 日本円で約5000万円かかるこのプロジェクトも最終段階を迎えている。9月22日に撮影された1/1フィギュア制作様子を見せていた。このProject KOKOだが、アンナミラーズの制服のような物を着ていること、顔立ちなども「おたく」のひとが見て喜ぶだろう、というコトを意識しているという。

●クリエイション
  クリエイションにおいて、「自分がこだわっているモノ、人と違うモノ」というのが日の目を見る可能性があるという。それは、明治時代の前からある「遊びの精神」が、日本人になくなっていないからなのだという。  アセンブリーアワーは、1時間30分ほどなのだが、村上さんは時間ぎりぎりまで話していた。そのため、質疑応答の時間がなくなってしまったのは残念だった。

 

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