井筒和幸(映画監督)
「憎たらしいほど愛しい≪映画≫」(1999.05.06)

講演要旨
井筒和幸は、“アジアの歌姫”赤城麗子(室井滋)でおなじみ『のど自慢』のヒットで、今もっとも注目を集める映画監督。 新作『ビッグショー』公開を目前にセイカに登場。<br>
人生のあらゆることを学び、ともに生きてきた、愛してやまない映画の魅力を語る。 『のど自慢』に『ビッグショー』、極上のエンターテイメント映画はこうして生まれた。
プロフィール
井筒和幸(いづつ かずゆき)
1952年、奈良県生まれ。高校在学中から8ミリ映画を製作。
75年『行く行くマイトガイ・性春の悶々』でデビュー。
81年にATG作品『ガキ帝国』で一躍脚光を浴び、同作で監督協会新人奨励賞を受賞。
以降、東宝、東映、角川、松竹などでプログラムピクチャーを監督し、『岸和田少年愚連隊』(96)でブルーリボン賞最優秀作品賞を受賞する。
今年正月に公開された『のど自慢』が大きな話題を呼んだ。
5月15日から続編『ビッグショー』が東宝邦画系にてロードショー公開される。 著書に『アメリカの活動写真が先生だった』。
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講演レポート
井筒和幸氏は、「がき帝国」、「岸和田少年愚連隊」、「のど自慢」などの作品を手がけた映画監督で、今回の講演は「ビッグショー」の作品公開の前に行われた。
当日は春うららかな日で、井筒作品のファン達が本学の黎明館201教室に集まった。当日、井筒氏は風邪気味で、喉の調子がよくなかったようであったが、井筒氏が目の前にいるという緊張感の中で、井筒氏が西川きよしと某番組で人生相談のコーナーをしていたことについての爆弾発言から始まった。




◎映画の学校◎
日本の学校というのは映画に関する学科や学部というものが非常に少ないと言える。映画を作ることを学ぶ学校というのは何も芸術大学だけでなく、世間一般でいう普通の大学であってもいいんじゃないだろうか。
アメリカなどでは特に、教育機関としての映画コースを持っていて、それがきちんと成立している。それをみても、精華大学に映画コースというものが出来たら素晴らしいことだと思う。映画コースというのは就職のためにはあまり役に立たないかもしれないけど、人間的にはとても役立つだろう。それはアクターズスクールといわれる、俳優の育成機関が日本に少ないことも関係しているのではないだろうか。
日本はアメリカに比べ、そのような機関が非常に少なく、そのため何十年と俳優をしている人でも結局のところ自己流の、大げさになりがちな演技をする傾向にある、と僕は思う。

◎「志」◎
「出来るなら一生遊んで暮らしたい」と20歳のとき真剣に思っていた。それは「志」としてだけど。ある日、その事を親に言ったら散々意見された。まぁ当たり前なんやけど。でもその時僕は真剣に思ってたわけで、理解してもらえないんやったらしゃあないな、って事で後ろ髪たらたらで家を出た。だって、別に親が嫌いな訳じゃないし「一生遊んで暮らしたい」わけやから親と暮らしてた方がいいに決まってるし。だから後ろ髪たらたらで。オデッセイに乗って気がついたら下鴨神社だった(笑)。下鴨神社は雪が降っていて、いくら降っても降っても積もらなかった。お金はなかったし、ほとんど何も食べずに3日ほど過ごしたけど、雪を見ていたら「あぁ、なにかすべきやなぁ」って思って結局家に帰った。人間霞だけじゃ生きられんからね。で、「ただいま。戻ったで。」って言ったら、親も笑ってたな。もちろん「志」はあったけど。それから親は何も言わなくなったなぁ。

◎面子(めんこ)◎
21歳のとき、ある女性に惚れてね、連れ合い気取りになってたんですよ。大阪にアパート借りて、といっても女性に食わしてもろてたんですけどね。いわゆる「ヒモ」やね(笑)。
ある日、女性に喫茶店に呼び出されたんですよ。「あぁ、別れ話かな」って思ってたんですよ。そんな顔やったしね。で、「いよいよか・・・」って思ってたら、説教が始まってね。生活に対しての。で、働けって言われて、その喫茶店から見えるところの現場に今から行くぞって言われましたよ。いやいやながら連れて行かれたら、弥生時代の遺跡の発掘現場で、明日から働くように、その彼女が話をつけとってくれたんですわ。あっという間に就職を見つけてきてくれたすごい人やったね。しかも、いきなり体を使う仕事をさせても無理やろう、っていってその現場を紹介してくれたんですよ。
発掘現場なんて注意深く土を払ったり見たりしてるだけでいいからね。もちろん、その頃も「志」を捨ててなかったからほとんど働かなかったんですよ。ボーッと土や空や周りのものを見てただけで。
ある日、土を軽くいじってたら石みたいなもんが出てきて、それが変に重かったから、「何やろー」って思ってよく洗ったんですわ。そしたら人の顔が出てきてね。ペットボトルのキャップくらいの石やったけど、妙に面白くてね。現場の教育機関の人に聞いたら、「面子」やって言われた。弥生時代なんか遊ぶもんがないからこういうのをつくって遊んでたらしい。で、見てるうちにそれが欲しくなって、ポケットにすっと入れて持って帰ってきて、次の日その仕事やめたんですよ。彼女には怒られましたよ。でも、その面子の表情を見ててね、泣いてるとも笑ってるともつかない表情がなんとも言えなくて。彼女には「映画を作りたい」って事を言いました。「こんなことしてる場合じゃない」って思ったんですよ。
結局彼女とは半年後に別れちゃったんですけど、これがきっかけで出来たのが「がき帝国」でしたね。ぼくは「人のため」とか西川きよしみたいなことを言いたいんじゃなくて、「人と共に」笑ったり怒ったりすることが仕事だと思ったから、今、自分の「面子」としての映画を作っているんです。

★☆業界のバカ話・暴露話(質問タイム)☆★

Q.某テレビ番組で島田紳介が、「がき帝国」を作ってた時にある大物俳優に対し、「おっさん芝居くっさいねん」と、とんでもない言葉を言ったらしいですが、それは誰だったんですか?

A.‘82年に「二代目はクリスチャン」という映画を作ったんですが、その時に山村聰さんに対して言った言葉です。(苦笑)
日本人は大体皆さん演技がくさいですよ。「おっさん」も一緒で、基礎教育を受けないまま長いことされてきたんで、僕に指摘されたんですね。

Q.では誰か「いい!」と思う人はいませんか?

A.―――あまり興味がないんでねぇ・・うーん・・。僕は芝居の訓練を受けた人よりもその周辺の人の方が好きなんですよ。「岸和田少年愚連隊」なんてそうですね。ナイナイもそうです。初めてだったんですよ。演技するの。だから面白いんです。

Q.近年「踊る大捜査線」とか、「タイタニック」のように当たっている映画がありますが、その「コツ」って何だと思いますか?

A.これまた難しい質問ですね。「タイタニック」については制作費もあると思いますよ。それだけ宣伝費がかかってるわけやし。「踊る大捜査線」はテレビの影響が大きいと思います。テレビスポットで映画が受けるというのは、「二代目はクリスチャン」でも思いました。
ちなみに「踊る大捜査線」はおもしろないですよ。あんなワンマンショーどこにあるんですか。そんなもんより、山科署にいる熊とマングースの実在の刑事さんのコンビの方がよっぽどオモロいですよ。映画って結構中身は関係なく売れたりするんですよ。宣伝とかでも。

Q.「のど自慢」はすごくよかったですけど、「ビッグショー」はどうですか?

A.ありがとうございます。今度の映画は「のど自慢」よりも3倍泣けて2倍笑えます。ぜひ見てください。(笑)

 

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